この記事をまとめると

■筆者はジープ・ラングラー RUBICON 4×eに試乗

■PHEVにもジープ車らしさを感じることができた

■インプレッションをお届けする

ジープ・ラングラーのPHEVモデルに試乗!

 先日、ステランティスグループのジープ・ラングラー RUBICON 4×eに試乗した。パワーユニットは2リッター直4ターボがベースのプラグインハイブリッドユニットとなり、これに8速ATが組み合わされていた。試乗車は左ハンドル仕様であり、より本国(アメリカ)に近いオーラを発していた。

 ちなみにPHEVではなく、一般的なICE(内燃機関)車については日本国内導入モデルでは2リッター直4ターボのみとなっている(北米市場では3.6リッターV6もあり)。実際にステアリングを握ってみると、ジープというか、アメリカ車らしいハンドルの遊びがなんともいえない好印象を醸し出していた。

 EV(電気自動車)モードで走らせてみると、確かにエンジン音は聞こえてこないのだが、タイヤから発せられるロードノイズは大きく、ほかにも風切り音など、いろいろな雑音が耳に入ってきて、BEV(バッテリー電気自動車)にありがちな無音にならないというのもまた、人馬一体といったイメージの強い「ジープ車(とくにラングラー?)らしいなぁ」と感じて運転した。

 実寸はかなり大きく、最小回転半径も中型トラック並みなのだが、実際に運転してみると、あまりそれを感じることはなかった。いかにもアメリカ車といったそのキャラクターだけでなく、走りの印象からも、心を広く持って運転できるのも「このクルマならではの持ち味だなぁ」と感じた。

 ただ、「PHEVを誰が買うのかな?」という素朴な疑問も浮かんできた。アメリカ国内はまだまだICE車が多いものの、カリフォルニア州あたりを中心にBEVは日本以上のレベルで普及している。カリフォルニア州では街なかを走っているクルマを見れば、テスラを中心にBEVをかなりの頻度で見かける。“シリコンバレーのIT系スタートアップ企業に勤める若手エンジニア”などという勝手なラングラーPHEVのユーザーイメージを持ちながら試乗を続けた。

 日本国内でも若年層を中心にラングラーは大人気で、日本はアメリカに次ぐ世界第2位の市場とも言われている。試乗車はメーカー希望小売価格で1030万円となり、さすがPHEVという価格設定だが、ICEモデルのUNLIMITED SAHARA(アンリミテッド サハラ)でも870万円となっている。ラングラーではさらにアクセサリーを多数装着するのもお約束なので、「そんなに高いクルマに若年層が本当に殺到しているのか?」という声もあるかもしれないが、日本も年齢や性別を問わず生活の多様化が進んでおり、裕福な若年層というものがもちろん存在する。

 ただお金持ちだけが買っているというわけでもない。ラングラーの日本国内における中古車での再販価値はかなり高い。残価設定ローンを組んで購入すると、若年層であっても意外なほど負担が少なく乗ることができるのである。

 また、若年層が注目するのは唯一無二のその存在感であろう。筆者のようなオジサンから見れば、ジープスタイルを踏襲しているという懐かしい印象だが、若年層から見れば、ほかの新車に比べて飛びぬけた個性的なスタイルに映るようだ。

静粛性もかなり向上していた

 ラングラーは1987年に初代がデビューしている。2代目(TJ)では日本仕様として右ハンドルが用意されたこともあり、俄然注目されるようになった。ただし、ボディサイズはそれほど大きくはないのだが、搭載エンジンが4リッター直6ということで度肝を抜かれたことを覚えている。

 登場後しばらくはMTのほか3速ATだったというのも当時のアメリカ車らしさを醸し出していた。実際運転してみると、とにかくロードノイズなどがダイレクトに入ってくるので、うるさかったという印象が残っている。

 そんな2代目の思い出しながら現行モデルに乗り込むと、「えっラングラーなの?」と思うほどゴージャスなインテリアになっている。しかもそれだけでなく、静粛性もはるかに向上していた。2代目ではマニュアルエアコン(ついているだけマシ?)だったのが、いまではオートエアコンとなり、インパネセンターには大きめなディスプレイがあり、カーナビはじめさまざまな情報を表示することができる。とにかくスイッチが多いことに驚かされた。

 車内はクライスラー系車種独特の、おもに接着剤のものと思われるが、新車の香りが漂っており、アメリカ車を愛してやまない(カローラ並み)筆者を歓迎してくれた。馴染みのある香りがしたので、アメリカ生産モデルであると確信して安心することもできた。ジープは一部を除きハンドルの位置に関係なくアメリカ生産となるのだが、ほかのクライスラーブランドモデルの右ハンドル車の多くはオーストリア生産となる。その違いは大きいので筆者も気をつけている。

 また、アメリカ生産モデルの試乗車では、“MADE IN USA”という表記を探すのも筆者の楽しみのひとつだ。ジープではフロントやリヤ、サイドなどガラスそれぞれに、これでもかと“MADE IN USA”とプリントされている。運転席側ドアの内側のコーションプレートにももちろん“MADE IN USA”と書かれている。今回試乗したモデルでは、リヤラゲッジドアの内側にプレートがあり、そこには星条旗の横に“MADE IN THE USA”と書かれているだけではなく、“DEVELOPED IN AUBURN HILLS,MI(開発したのはミシガン州オーバーンヒルズ)”や、“BUILT IN TOLEDO,OH(生産したのはオハイオ州トレド)などとも書かれていた。アメリカ車だけでなく、アメリカのすべてをこよなく愛する筆者には、このような表記を見つけたときの感動は表現できないほど大きいものとなる。

 このような表記はGM(ゼネラルモーターズ)車やフォード車でも見かけることができるが、ここまで“MADE IN USA”だらけなのはクライスラー系でもジープブランド車がとくに顕著なように見える。GMやフォードも含め、多くのアメリカンブランドはほぼ“北米限定”ブランドと言っていい存在となっている(中国でビュイックが目立っているぐらい)。そのため、使う人はほぼアメリカ人(ほかにカナダ人やメキシコ人)となるので、あえて愛国を強烈にアピールする必要はないともいえよう。ただし、そのなかでジープランドは、数少ないというかほぼ唯一、グローバルに売れているブランドともいえる。そのためもあって、“USA”を強調しているのかもしれない。

 クライスラーについては、FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)となったとき、保守色の強いアメリカ人を中心に、“クライスラーは海外のブランドとなった”という印象を持った人が多かったという話を聞いたことがある。それもあって「USA”を強調しているのかなぁ」などと筆者は密かに感じている。

 欧州系アライアンスメンバーとなったとしても、お馴染みのアメリカ生産を物語る新車の香りを堪能でき、そこかしこに“USA”と書いてあるので、筆者からすればアメリカ生産車には変わらず、その満足感はかなり高く、試乗している間は至福の時間を過ごすことができた。