本格的な夏が、すぐそこまできています。冷房が欠かせないシーズンの到来ですが、「試運転をしてみたら調子が悪い」「ボーナスでエアコンを買い替えたい」「電気代が気になるから省エネ性能の高いエアコンを購入したい」という人もいるでしょう。
2022年には、家庭用エアコンの省エネ性能の目標基準が15年ぶりに改正されました。今後はより省エネ性能の高いエアコンが出てくると思われますが、エアコンはどのような基準で選べばよいのでしょうか。そもそも、エアコンの買い替えにより節電効果はあるのでしょうか。

エアコンを購入するなら最初にチェックしたいポイントは?

「使用する場所と目的に合わせたエアコンを選び、快適に過ごしてほしい」と由井さん

エアコンを購入する際には何をチェックすればよいのでしょうか。購入時のポイントを、空調機器メーカー・ダイキン工業株式会社の由井明日香さんに教えてもらいました。

―エアコンを購入する際、まずは何をチェックすればよいですか?

まず、エアコンを選ぶ際の大前提として、部屋の広さに合うサイズを選ぶことが大切です。エアコンのカタログには「対応畳数」が表示されていて、そのエアコンで快適にできる部屋の広さが分かります。対応畳数を基準に選ぶことで、過不足のない冷暖房効果を期待できます。

次に、電圧(ボルト数)を確認してください。エアコンには、電圧が100Vの製品と200Vの製品があります。電圧が大きいほど大きなパワーを出すことができるため、広い部屋に対応したエアコンは一般的に200Vです。ただし、200Vのエアコンを使用するには、対応するコンセントでないと電源プラグが入りません。設置したい場所のコンセントが100V用か200V用か、事前に確認をしましょう。

―エアコンは製品により、さまざまな機能があります。冷暖房や除湿以外の主な機能を教えてください

除湿機能があるエアコンは多いですが、ダイキンには「加湿機能」があるエアコンもあります。屋外の空気から水分を取り込むことにより給水なしで加湿もできる仕組み。加湿器を置くスペースがいらず、給水作業も手間もなく加湿が可能です。

「換気機能」は隙間や通気口からよどんだ空気を押し出し、外からの新鮮な空気を冷たくしたり温かくしたりして部屋に戻すことで快適な状態を保ちます。冷暖房も行なわず、換気機能だけで運転する事も可能。コロナ禍には換気機能付きのエアコンが人気を集めました。

―最近のトレンド機能を教えてください

最近では一般的な標準装備となっていますが「自動掃除機能」が付いていれば、フィルターの汚れを自動で掃除してくれます。
エアコンは、2週間に1回でフィルターを掃除しないと目詰まりを起こす原因となります。汚れたフィルターを使用していると運転効率が下がり、電気代が多くかかってしまいます。

「センサー機能」も従来よりも進化しています。メーカーによりその方法が異なりますが、ダイキンではセンシングにより、人や床、壁の温度をチェック。例えば人の位置や動きを捉え、無駄のない気流の吹き分けに役立てます。広めの部屋に設置するエアコンにあると、特に便利な機能です。

また、電気代が高くなっている最近では「スマホ連動機能」も人気です。
この機能があれば、専用アプリをスマートフォンにダウンロードすることで、手元のスマートフォンを使ってエアコンを操作できます。操作の際にリモコンを取りに行くのが面倒な際に便利なのはもちろん、アプリで一週間のスケジューリングをしたり、電気代の目安をグラフ表示で確認したりできることも魅力。ちなみに、ダイキンでは最新機種であれば、上位機種だけでなくスタンダードモデルにも搭載されている機能です。(機種によって操作・設定できる運転モードは異なります。また、機種により別売の無線LAN接続アダプターが必要となります。)

電気代重視なら省エネ性能もチェック

―最近は電気代の値上がりが話題となっていますが、エアコンの電気代を抑えたいときにはどのような製品を選べばよいですか?

出典:経済産業省「エアコンを選ぶときには必ずチェック 統一省エネラベルを見てみよう!」

電気代を重視するなら、省エネ性能が大きなポイントになります。省エネ性能は、統一省エネラベルでチェックします。ラベル内の星の数はAPF(通年エネルギー消費効率)の値に基づく多段階評価で、星の数が多いほど省エネ性が高いことを意味します。
また、2027年度を目標年度とする新しい省エネ基準にどの程度達しているかを示す「省エネ基準達成率」も記載されています。100%を超えていれば、目標基準を達成しているということです。
合わせて、年間の電気料金の目安もチェック。これらに配慮した省エネ性能が高いエアコンを選ぶことで、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献できます。

―カタログの情報から、1年間にかかる電気代の概算を知るには?

ダイキンのルームエアコンカタログより。左がスタンダードモデルのEシリーズ、右が省エネタイプの上位機種RXシリーズのスペック一例。RXシリーズの省エネ基準達成率は107%と基準を達成しています

年間の消費電力量は、1年を通じてエアコンを使用した際に消費する電力量目安の「期間消費電力量(kWh)」に、「1kWhあたりの料金単価」を掛けることでおおよその金額を算出できます。期間消費電力量はエアコンのカタログなどに記載されており、料金単価は全国家庭電気製品公正取引協議会が、電気事業連合会が全国の電力料金を踏まえて目安単価を定めています。2022年7月22日に改定された、現在の料金単価は31円/kWh(税込)。です。

ダイキンのルームエアコンカタログより。上位機種RXシリーズ(うるさらX)はスタンダードモデルのEシリーズと比べて省エネ設計のため、電気代に大きな差が出ます

例えば、ダイキンの14畳用(200V)のエアコンで比較した場合、本体価格がリーズナブルなEシリーズは年間の期間消費電力量1,544kWh×31円=4万7,864円に、上位機種RXシリーズ(うるさらX)は1,066 kWh×31円=3万3,046円の概算となり、差額は1万4,818円です。エアコンの設計上の標準使用期間は10年、内閣府「消費動向調査(2023年3月実施調査結果)P9」によると、2人以上の世帯を対象としたエアコンの平均使用年数は13.6年です。仮に10年間使用した場合、電気代は15万円弱の差がつくことになります。
上位機種は初期費用(本体価格)がかかりますが、長い目で見れば却ってお得なこともありますし、上記機種を購入することでシーンに合わせた機能を利用でき、快適性が向上します。ランニングコストも考慮してエアコンを選びましょう。

参照:公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会「よくある質問 Q&A」

―その他にも、エアコンを選ぶ際のポイントはありますか?

薄さと色で理想の空間を彩るスタイリッシュエアコン「risora」

インテリアに合わせてセレクトするというのもひとつの手です。「エアコンがアクセントクロスの色とマッチしない」など、部屋にそぐわないものの、設置しない訳にもいかず悩んでいる人もいるでしょう。そうした場合には、デザイン性が高いエアコンがおすすめです。ダイキンの「risora」はインテリアになじむよう、パネルの色や質感を空間に合わせて選ぶことができます。正面のパネルはなんと、約600種類のオーダーカラーから選べるオプションも。厚みを極力抑えたデザインもポイントで、圧迫感がありません。デザイン重視の製品ということで機能面が気になるところですが、垂直気流や快適自動運転機能といったスペックも備えています。

―最後に、理想的なエアコンの設置場所を教えてください

エアコンを設置する際は、大きな本棚などエアコンの気流を遮る障害物がない場所に設置することをおすすめします。
また、エアコンから出てきた暖かい、もしくは冷たい空気が窓から外へ逃げてしまうと、室内の温度がなかなか設定温度に到達しません。窓開け換気をしても室内の温度を保ちやすいよう、窓から離れたところにエアコンのある環境がお勧めです。

まとめ

酷暑に「電気代がもったいないから」とエアコンの使用を控えれば、熱中症などで体調を崩す恐れがあります。「エアコンの使用を我慢するよりも、省エネ性能が高いエアコンを選び、ランニングコストを抑えながら快適に過ごしてほしい」と由井さん。これからエアコンの購入や買い替えを考えている人は、この記事のポイントを参考にエアコンを選んでみてはいかがでしょうか。

取材協力:ダイキン工業株式会社