コロナ禍の影響で在宅勤務が増え、郊外や地方に移住する人が増えていることを背景に、新幹線通勤定期代を補助する自治体が増えています。都心から多少遠くなっても、新幹線なら通勤時間はさほど変わらず、ゆったり座って通勤できるケースも。そして何より住宅価格が安くなるため、家計にゆとりが出てくるといううれしいメリットがあります。

新潟県湯沢町は月額最大5万円の補助

人口減少に悩む郊外や地方では、都心やその周辺から移住を促進するさまざまな支援策を実施する自治体が増えています。特にコロナ禍以降、新幹線通勤の定期代を補助する自治体が増加傾向です。

たとえば新潟県の湯沢町では、月額最大5万円の補助を行っています。「過去に湯沢町に15年以上居住したことのある、又は現在15年以上居住していること」など対象となる要件は厳しいのですが、月額5万円の補助があれば、家計の助けになるはずです。

一方、埼玉県熊谷市では月額補助金の上限が2万円となっていますが、条件は湯沢町ほど厳しくありません。熊谷市に住民票があること、5年以上居住する意思があること、申請日に40歳未満であること、などの条件を満たせばOK。新幹線通勤を前提に移住し、住民票を移せばクリアできそうな条件です。

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ほかにも、図表1にあるような自治体が新幹線通勤定期代の補助を行っています。

※対象となる要件、予算枠など最新の情報は各自治体のホームページで確認を

新幹線通勤を認める企業も登場

もちろん、新幹線の通勤定期代は決して安くありません。図表2にあるように、熊谷市に住んで、上越新幹線で熊谷駅から東京駅まで通うとすれば、新幹線定期代は1ヶ月7万1,260円、3ヶ月20万3,100円です。

会社から通勤手当がどれくらい出るのかによって自己負担額は変わりますが、最近は通勤手当を増額する企業も登場しています。

たとえば、ヤフー株式会社では交通費の上限を片道6,500円/日、15万円/月としていましたが、2022年4月より片道上限を撤廃。特急や新幹線、飛行機、高速バスでの通勤が可能になっています。これによって、東京オフィス勤務の社員のうち400人が首都圏以外に転居したと言われています。

月額15万円というのは、社員に支給する通勤手当の非課税限度額が1ヶ月15万円であるため。ほかにも株式会社メルカリや、note株式会社など、15万円まで支給する企業が増えつつあります。
限度額の15万円までいかなくても、通勤手当が比較的充実している企業であれば、自治体からの補助金が加わればかなり負担が軽くなるはずです。

出典:JR東海ホームページ、JR東日本ホームぺージ(2023年6月時点)

今後も新幹線通勤が増える可能性はある?

2023年5月には新型コロナウイルス感染症の分類が2類から5類に引き下げられました。在宅勤務から出勤に切り替える企業も出てきていますが、その一方では、若い世代を中心に郊外や地方での生活を希望する人が増えています。そうした人たちの中から優秀な社員を確保するためにも、遠距離通勤や新幹線通勤を認める企業が増えてくるかもしれません。

新幹線通勤定期代を負担してくれる企業が増加すれば、地方への移住がさらに促進される可能性もありそうです。

新幹線通勤定期代の全額支給はなくても一定額が支給され、それに自治体の補助を合わせれば、さほど重くない負担で新幹線通勤が可能になるケースが増えるのではないかと期待されます。

新幹線なら在来線の半分程度の時間に短縮

とはいえ、新幹線通勤はお金の問題だけではなく、時間がかかって大変なのではないかと思う人が多いかもしれません。実際に新幹線通勤をしている人の声を聞くと、必ずしもそうとは限らないようです。

むしろ、新幹線ならゆったりと座って通勤できて、移動中に仕事や読書などに打ち込むことができ、首都圏の満員電車で通勤地獄に苦しむのに比べて、はるかに楽、という声が少なくありません。乗り心地もいいので、寝不足の人には貴重な睡眠時間になるという側面もあるでしょう。

そこで、新幹線と在来線の主要駅から東京駅までの乗車時間を比較してみました。東海道新幹線の場合、小田原駅からは在来線では1時間25分ほどかかりますが、新幹線なら30分強で東京駅に到着します。三島駅でも在来線だと2時間以上かかりますが、新幹線なら55分です。時間帯などにもよりますが、新幹線ならおおむね在来線の半分かそれ以下の時間で済みます。

上越新幹線の熊谷駅の場合は、在来線では1時間10分以上かかるところ、新幹線なら40分近くに短縮。高崎駅の場合、在来線で2時間近くかかりますが、新幹線なら1時間弱で済みます。
現在、首都圏の郊外から都心に通っている人なら、通勤時間1時間以上の人が少なくないでしょう。新幹線通勤ならそれより短い時間で快適に通勤できる可能性もあるのです。

※在来線は平日の7時台の有料の特急などを利用しない平均的な所要時間(2023年6月時点)

住宅価格が格段に安くなるメリットも

新幹線通勤できるエリアであれば、都心やその周辺に比べて生活費が安くなるのも魅力です。物価高騰の折、食品や生活雑貨などが安く購入できるのは大きなメリットです。

何より、住宅費が安く済みます。アットホームのデータから、埼玉県の主要都市の中古マンション価格を見ると、図表4のようになっています。

出典:アットホーム株式会社(2023年6月時点) ※毎月返済額は金利1%、35年元利均等・ボーナス返済なしで全額ローンを組んだ場合(筆者試算)

都心に近い川口市の中古マンション平均価格は3,445万円、埼玉県でも人気の高いさいたま市浦和区は4,795万円、大宮区は4,893万円に対して、熊谷市は1,859万円です。熊谷市なら、浦和区、大宮区に比べると3,000万円ほど安く中古マンションが手に入りそうです。

便宜上、全額ローンを組むと仮定すれば、浦和区や大宮区では月額13万円以上の負担ですが、熊谷市なら5万円台です。新幹線でゆったりと通勤でき、住居費負担が軽くなるうえ、都心と比べて物価も安いのですから、ゆとりある生活を送れるはずです。

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住まい探しの際には、新幹線通勤定期代の補助がある自治体にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

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