七夕賞は上位人気馬の先行争いが激化。後方待機の伏兵馬に出番あり!?
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――先週から始まった夏の福島開催は、初日から入場者数と売上が昨年より増加。開幕週は大変な賑わいとなりました。そして今週、同開催のメインイベントとも言えるGIII七夕賞(7月9日/福島・芝2000m)が行なわれます。さらなる盛り上がりが予想されますね。
大西直宏(以下、大西)そうですね。福島の競馬ファンは"競馬熱"が高いことで知られていますから、当日の天気次第ではかなりの熱気に包まれるでしょうね。
七夕賞は現役時代に何度も騎乗したレースであり、僕にとっても勝ちたかったレースのひとつでした。残念ながら勝利することはできませんでしたが、ハンデ戦という性質もあり、非常にスリリングなレースになりやすいと思います。
――夏の福島開催では1週目にGIIIラジオNIKKEI賞(芝1800m)、2週目に七夕賞が行なわれますが、これらのレースはどちらも芝の中距離のハンデ戦。天候を含めた馬場状態に大きな変化がなければ、1週目の結果が2週目の参考になったりしますか。
大西 僕が現役の頃は、七夕賞は最終週に行なわれていました。それが、2013年から2週目に移行。そうなると、馬場も比較的良好ですから、1週目のイメージを引き継ぎやすいと思います。
この2つのレースは距離が200m異なりますが、4つのコーナーをグルッと回ってくるという共通点があります。(勝ち負けを演じるうえで)重要なのは、「勝負どころで、距離のロスを最小限に抑えること」です。
先週のラジオNIKKEI賞は、まさにそれを証明する一戦でした。勝負どころとなる3〜4コーナーでは、できるだけ外に膨らむことなくインを通ることがポイントで、実際に1、2着馬、さらに3着に入った追い込み馬も、勝負どころではラチ沿いから3頭目以内のコースを通ってきていました。
――さて、今年の七夕賞ですが、上位人気が予想されるのは、フェーングロッテン(牡4歳)、セイウンハーデス(牡4歳)、バトルボーン(牡4歳)、テーオーソラネル(牡4歳)といったあたりで、先行馬が多い印象です。
大西 確かにそうですね。上位人気馬が同じような脚質となると、騎手の駆け引きがカギになります。
名前が挙がった4頭は、いずれも"絶対に逃げなきゃダメ"というタイプではなく、番手からでも競馬ができる馬たちです。したがって、隊列が決まったら、意外とペースが落ち着く可能性があります。このあたりは、枠順や馬場状態によっても左右されるでしょう。
ちなみに、この4頭のうち3頭がシルバーステート産駒というのは、とても興味深いですね。シルバーステート産駒は今年のGINHKマイルCでも、1番人気(カルロヴェローチェ)、2番人気(エエヤン)を送り出し、マイル前後での活躍馬が多いイメージがあります。それからすると、2000m戦の重賞で3頭も上位人気になるのは非常に珍しい感じがします。
――展開的には上位人気を集める先行馬の出方次第と言えそうですが、他にもショウナンマグマ(牡4歳)やシフルマン(牡7歳)らが前走で逃げています。これらも先行争いに加わってくるのでしょうか。
大西 上位人気馬たちをラクに逃がしたくないという意図から、それらの馬たちが先手争いに加わる場面は十分に考えられます。そうなると、序盤から激しい競り合いが生じて、予想以上のハイペースとなるかもしれません。その場合、後方待機の馬たちにもチャンスが巡ってくるでしょう。
人気馬たちが"前で"競馬を運ぶレースは、後方でじっくり構えて逆転を狙う伏兵馬たちにとっても乗りやすい展開です。そういう流れになった時、狙ってみたい馬が1頭います。
七夕賞連覇を狙うエヒト
――穴馬候補ですね。その馬とは?
大西 昨年の優勝馬であるエヒト(牡6歳)です。その昨年のレースは、前半1000mが58秒5という比較的速いペースで流れ、どの馬にもチャンスがある展開となりました。
そうした流れのなか、同馬は勝負どころの3〜4コーナーにかけて、持ったままの絶好の手応えで上がってきて、直線でもそのまま突き抜けて快勝しました。斤量54kgと軽ハンデだったことも大きな要因でしたが、非常に強い競馬を見せました。
また、昨年末にもGIIIチャレンジC(12月3日/阪神・芝2000m)で3着と好走。そのレースも前半57秒7というハイペースとなって、持久力を要する競馬となりましたが、エヒトはしぶとく伸びてきました。
コーナー4つの中距離戦でタフな流れになった時が、この馬の好走パターン。今年も昨年と同様、速いペースでレースが進む可能性があるため、再びエヒトの差し脚が炸裂すると見ています。ということで、今回の「ヒモ穴馬」には同馬を指名したいと思います。