阪神の本拠地・甲子園球場(イメージ)

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その実力は本物と言ってよいだろう。阪神・大竹耕太郎が2023年7月5日の広島戦(マツダ)でプロ初完封を飾り、7勝目をマーク。相手右腕の森下暢仁と緊張感あふれる投手戦を制した。

「制球力と緩急で直球を生かす術を知っている」

左腕から繰り出される直球は140キロ台前半と決して早くない。だが、内外角に抜群の制球力で出し入れして広島打線に連打を許さない。7回1死一、二塁のピンチもマット・デビッドソンをフルカウントからチェンジアップで遊飛に仕留めると、会沢翼は内角いっぱいの直球で空振り三振に切り抜けてマウンド上で吠えた。

今季広島戦は4試合登板で3勝0敗、防御率0.30。対策を講じられても勢いに乗る広島を抑える姿が頼もしい。規定投球回数に到達し、防御率1.13でリーグトップに立った。

エースの青柳晃洋、先発ローテーションで毎年稼働してきた西勇輝が不調の中、村上頌樹と共に首位快走を支えているのが大竹だ。ソフトバンク時代はファームで格の違いを見せていたが1軍では力を発揮できず、21、22年と2年連続未勝利に終わった。

昨オフに現役ドラフトで阪神に移籍した際は、先発ローテーションの一角を狙う立場だったが、今や不可欠な存在に。球宴にも監督選抜で選出され、プロ6年目で初出場が決まった。

スポーツ紙記者は

「大竹がいなかったら阪神は首位にいなかったでしょう。それほど存在感は大きい。150キロを超える直球を投げる投手がゴロゴロいるスピード全盛の時代ですが、大竹は制球力と緩急で直球を生かす術を知っている。1シーズンを通じて先発で投げ切った経験がないので後半戦は未知な部分はありますが、大崩れすることはないでしょう。防御率、最多勝と投手タイトルを十分に狙えると思います」

と期待を込める。

手応えをつかんでいるのだろう。マウンド上の表情にも風格が漂ってきた。2ケタ勝利は通過点。後半戦はいくつ白星を積み重ねられるか。(中町顕吾)