マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作として2023年6月21日からDisney+で配信されているドラマシリーズが「シークレット・インベージョン」です。サミュエル・L・ジャクソン演じるニック・フューリーが主人公となる本作では、オープニング映像で使用されているビジュアルをAIが作成していることが話題を呼んでいます。

Secret Invasion’s opening credits are made by AI. Here’s why - Polygon

https://www.polygon.com/23767640/ai-mcu-secret-invasion-opening-credits



Marvel criticized for AI use in 'Secret Invasion' opening credits | VentureBeat

https://venturebeat.com/ai/marvel-criticized-for-using-ai-to-make-secret-invasion-opening-credits/

Artists are upset that ‘Secret Invasion’ used AI art for opening credits | TechCrunch

https://techcrunch.com/2023/06/21/marvel-secret-invasion-ai-art-opening-credits/

Secret Invasion's Opening Sequence Is AI Art, and That Sucks

https://gizmodo.com/secret-invasion-ai-art-opening-credits-marvel-vfx-1850560454

Disney+で2023年6月21日から配信されている「シークレット・インベージョン」は、MCUに登場するニック・フューリーに焦点を当てた作品。予告編は以下から視聴できます。

マーベル・スタジオ『シークレット・インベージョン』|吹替版 予告編|Disney+ (ディズニープラス) - YouTube

シークレット・インベージョンは、MCUでこれまでにも登場してきた緑色の肌の異星人「スクラル」による地球への侵略を、ニック・フューリーが暴こうとするという作品。スクラルはDNAレベルでの擬態(変身)能力を持っているため、「シェイプシフター」とも呼ばれます。

そんなスクラルが登場するため、シークレット・インベージョンのオープニング映像は、主要な登場人物を水彩画で描いたような不思議な雰囲気の映像になっています。スクラルがさまざまなキャラクターに擬態するかのように、オープニング映像ではさまざまなビジュアルがゆがむように変化していきます。



シークレット・インベージョンで監督兼エグゼクティブプロデューサーを務めたアリ・セリム氏によると、このオープニング映像はアメリカのVFX制作会社であるMethod StudiosがAIを使って作成したものだそうです。

海外メディアのPolygonがセリム氏にインタビューしたところ、同氏は「それはまさにシェイプシフター、スクラルの世界のアイデンティティから生まれたんです。誰がやったんだ?これは誰だ?といった風にね」と語っています。

セリム氏はAIについて「実際にどのように機能するかについては理解してない」と語っていますが、スクラルの世界をAIがどのように表現できるのかについてとても興味を抱いていたとコメント。また、「アイデアやテーマ、言葉について入力すると、AIが何かを実行します。そして、言葉を変えて微調整を行えば、見た目は大きく変化します」とも語っています。

PolygonはMethod StudiosにどのようにAIを使用してオープニング映像を作成したかについてコメントを求めたそうですが、返答は得られなかったそうです。ただし、オープニング映像のクレジットにはMethod Studiosのプロデューサー、デザイナー、AI技師の名前が含まれているとPolygonは指摘しています。

また、Method Studiosはこれまでにゲーム・オブ・スローンズの「The Battle of the Bastards」や、マーベル作品の「ミズ・マーベル」「ロキ」「ムーンナイト」などの制作にも携わっています。



シークレット・インベージョンが配信され、オープニング映像の作成にAIが利用されていることが明らかになってから、AI反対派からの辛辣な意見も寄せられています。

「マーベル・スタジオがシークレット・インベージョンのオープニング映像にAIを使用したことは非常に残念だ」





「今振り返ってみると、VFXアーティストに対するひどい扱いとその後の映画の興行の悪い結果に対するマーベルの解決策は、可能な限りそれらをまとめて切り取り、恥ずべきことにこの醜いAIの作成物に置き換えるということでした。なんて恐ろしくも予測可能な結果なんだ」





「マーベルがAIに『サミュエル・L・ジャクソン、緑のエイリアン、犬のふん』と入力し、アーティストの仕事をAIに置き換えたことに私は少しも驚きませんでした。これがどれだけ恐ろしく忌まわしいものなのかに、ただただ唖然とするばかりです」





「これはシークレット・インベージョンのオープニング映像です。大手スタジオが作品に『搾取的で道徳的に非常に疑わしいAIツール』を使用することは、アーティストとAIの問題に対して明確な立場をとってきたようなものです。なんてことだ」





さらに、同作でコンセプトアートを担当したというジェフ・シンプソンさんも、「シークレット・インベージョンのオープニング映像はAIが作成しました。この事実に私は打ちのめされました。AIは非倫理的で危険でアーティストのキャリアを台無しにするために設計されたものだと信じています。約半年をこの作品の制作に費やし、これまで出会った中で最も素晴らしい人々と仕事を共にすることができたというのに…」とツイート。





一方、マーベル映画の制作に携わる主要なクリエイターの中には「AIが映画制作ビジネスを破壊するのは避けられない」と考えている人もいます。「アベンジャーズ/エンドゲーム」を担当したジョー・ルッソ監督は、海外メディアのColliderに対して「AIは2年以内に長編映画を制作できるようになる」と語りました。

実際、ルッソ監督はいくつかのAI企業の取締役に就任しており、AIの可能性について「AIの価値は、ストーリーテリングの民主化にあります」「つまり、この部屋にいる誰もが、フォトリアルエンジン、またはエンジンとAIツールの助けを借りて、ストーリーを伝えたり、大規模なゲームを作成したりできるということです」と語っています。