賀谷明日光インタビュー 後編

(前編:父は鹿島などでプレーしたJリーガー 女子バレー賀谷明日光が明かす、Vリーグでの「仕事とプレーの両立」の大変さ>>)

 来シーズンからVリーグに参入するカノアラウレアーズ福岡でプレーする賀谷明日光は、チーム入団前にモデルに挑戦。端正な容姿から「美女アスリート」として取り上げられることもあり、それがファン獲得につながる一方で、試合などでのプレー以外を目的にした撮影をされていることに気づくことも多いという。

 そうした撮影は他のスポーツでも問題になっているが、選手目線でそれをどう感じているのか。対策なども併せて聞いた。


バレーのプレー以外の部分についても語った賀谷

――カノアラウレアーズ福岡への入団が発表される前に、ファッション雑誌でモデルに挑戦していましたね。そういった仕事にも興味があるんですか?

賀谷 ありますね。ちっちゃい時はモデルか歌手になりたいという夢もあったので。現役選手でいる間はわかりませんが、先のことも考えてそういったお仕事にも触れていきたいです。

 ちなみに、弟もファッションに興味があって、今はアパレル業界で働いています。

――弟さんもバレーをやっていたんですか?

賀谷 中学校まではサッカーをやっていましたが、高校からバレーを始めました。水戸啓明高校で春高バレーにも出て。身長は190cm以上あるので、アパレル業界では目立ちそうですね(笑)。

――賀谷さんは「美女アスリート」として取り上げられることも多いですが、ご自身はそれをどう考えていますか。

賀谷 あまりよく思わない選手もいると思いますが、そんなふうに注目してもらって、前に出ていけることによって世界が広がることもたくさんあるはず。私は、自分にとってプラスだと捉えています。

――TwitterやInstagramなどSNSでの発信も積極的に行なっていますが、その際にどういったことを意識していますか?

賀谷 SNSを始めたのは、自分のことやチーム、バレーのことを知ってもらいたいと思ったからです。私はできるだけ心の中を隠さないように、落ち込んでいるところや、嬉しいことがあった時もそのままの感情を投稿しています。それを見た方が、どこかで共感してもらえる部分があるかもしれないですし、それが元気になるきっかけになったり、助けになってくれたらうれしいです。私も、応援してくれる人がいるから頑張ろうと思えるので、少しでもそれを返せたらと思っています。

――Vリーグ、他のあらゆるスポーツもファンの応援は力になりますが、ごく一部で女性アスリートを性的な意図を持って撮影する行為もあり、社会問題になっています。賀谷さんもそういう視線を感じることがありますか?

賀谷 私はあまり気にならないタイプですが、プレーしている姿じゃなくて、体の一部を撮られているんじゃないかと考えると、やっぱり嫌ですよね。私の写真も、そういった形でインターネットに載っているのを見たことがあります。

――そういったことを気にしすぎると、プレーにも影響する?

賀谷 気になる選手は本当に気になっちゃうので、シャッター音でタイミングがズレる、といったこともあると思います。サーブなどで客席に近づいた際には、カメラのシャッター音も聞こえますからね。

純粋にプレーを撮っているのと見極めるのは難しい。決して諦めるというわけではなく、ユニフォームの中に着るものなど、自分が防げるところは防ぐようにしています。そういったことに慣れていないチームメイトなどには、できるだけ自分が経験を伝えるようにしてきました。

――行為がなくなることが一番ですが、賀谷さんはしっかり対策ができているんですね。

賀谷 現場で撮られることに対してはそうですが、他のところで悩ましい問題もあります。自分の写真が「かわいい」といった言葉と一緒に載っている時に、基本はうれしいんですが、「そんなことない」「否定しろよ」といったマイナスなコメントをしてくる人が必ずいるんです。

注目してもらえることをプラスに捉えている、という話もしましたが、私にも感情の波がある。落ち込んでいる時に攻撃的な言葉を見ると、すごくつらくなってしまうことがあります。そんな行為もだいぶ抑えられるようになってきたかのかな、とは思いますが......今後はプレーだけじゃなく、そういった部分も含めて自分の考えをより伝えていきたいと思います。

――今後は賀谷さんのプレー以外の部分にも注目ですね。今年1月、東京都実業団バレーボール連盟に所属する東京スリジエを退団し、2023-2024シーズンからVリーグに参入(2部)するカノアラウレアーズ福岡に入団しました。その経緯と意気込みを教えてください。

賀谷 Vリーグとは違うカテゴリーのスリジエでプレーしたことで多くのことを学び、「もう一度バレーに専念して、限界まで頑張ってみたい。後悔はしたくない」と思うようになりました。27歳という年齢を考えても、もう一度Vリーグに挑戦するならこのタイミングしかないと。

そんな私の気持ちを汲み取って入団させていただけることになり、監督やチーム関係者、選手のみなさんにも感謝の気持ちでいっぱいです。プレー面はもちろんですが、今の私にできることは惜しまずに貢献したいと思っています。

――すでにチームに合流していると思いますが、チームの雰囲気、練習の様子などはいかがですか?

賀谷 覚悟を決めて福岡にきましたが、自分の力不足を身に染みて感じる毎日です。選手たちは意識が高く、常にバレーに打ち込む準備が整っている。私も心技体の自己管理のレベルを高めて、1日も早く追いつき、追い越せるように努力していきます。

悔しさもありますが、チームメイトに刺激をもらうことで「頑張ろう」と思えます。自分次第で成長できる環境に感謝して、どんな時も自分にベクトルを向け行動していけるようにします。

これからいろんなことがあると思いますが、チームメイトと助け合っていきたいです。そしてバレーボールを広め、多くの方に元気や勇気を与えられるように頑張っていくので、応援よろしくお願いします!

【プロフィール】
賀谷明日光(がや あすみ)

1995年11月16日生まれ。茨城県ひたちなか市出身。土浦日大高校から東京女子体育大学に進学。卒業後はV2(Vリーグ2部)のGSS東京サンビームズに入団し、可憐な容姿とコート内での闘志溢れるプレーで人気を博す。2021-22シーズンをもって同チームを退団後、千代田区を拠点にする東京スリジエにて主将を務めた。2023年2月に同チームを退団し、同4月にカノアラウレアーズ福岡に入団した。身長174cm。ポジションはミドルブロッカー。父は元プロサッカー選手の賀谷英司氏。