バチカン市国にあるカトリック教会の総本山にして、キリスト教の教会建築としても世界最大級の大きさを誇るサン・ピエトロ大聖堂(画像は『Le Figaro 2023年6月5日付「Vatican : un homme nu monte sur l'autel de la basilique Saint-Pierre」(TIZIANA FABI)』のスクリーンショット)

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カトリックの総本山にして、世界最大級の教会であるサン・ピエトロ大聖堂にて、男が裸で抗議を行うという異例の事件が起きた。男の背中には、戦争によりウクライナで子供たちが虐殺されたことを糾弾するメッセージが書かれていた。これを受けて教会は後日、祭壇を清めるための儀式を行ったという。イタリアの日刊紙『La Repubblica』などが報じた。

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バチカン市国にあるサン・ピエトロ大聖堂で抗議を行ったのはポーランド出身の男だ。事件は現地時間6月1日午後、大聖堂の閉館時刻(19時)直前に起こった。ある男が中央祭壇にそびえ立つ彫刻家ベルニーニが手掛けたブロンズ製の大天蓋に近づき、裸になったのだ。教皇がミサを行う中央祭壇には、ローマ教皇だけが座ることを許される椅子もあるなど、教会内で最も神聖な場所のひとつである。周囲の人々は男の行動に驚き、中にはその様子をスマートフォンで撮影した人もいたという。

『La Repubblica』によると、教会の警備員とバチカン市国憲兵隊はすぐに男を逮捕して衣服を着させた。この間、男は無抵抗だったという。その後、男は警察署に連行されて尋問を受けたが、男はウクライナでの戦争の終結を求めるためにこの行動を取ったと説明、ロシアの爆撃で命を失うウクライナの子供たちの運命を悲しんでいる―とも話したそうだ。これを裏付けるように男の背中には、マジックペンで「Save children of Ukraine(ウクライナの子供を救え)」と書かれていた。

一方でこの男は、重度のうつ病を患っているそうだ。身体には意図的に鞭打ちしたような痕もあったという。同市国憲兵隊に連行された男は、イタリアとローマ教皇庁の間の条約に基づき、イタリア警察に引き渡された。そして、追放令が言い渡され、イタリア領から出るように指示された。

翌々日の6月3日、今回の事件により祭壇が冒涜されたことから、サン・ピエトロ大聖堂の大司祭であるマウロ・ガンベッティ枢機卿(Mauro Gambetti)により懺悔の宗教儀式が行われた。枢機卿はその中で「人々の精神を左右するのは、罪の存在である。この存在は、戦争を助長するものであり、私たちの社会に宿っている。そしてこの存在が、男を不適切で嘆かわしい行動に駆り立てた」と唱えた。

今回のニュースを見た人々から「この愚か者はモスクワの正教会へ行くべきだ。なぜなら、(バチカン市国がある)ローマはキーウとモスクワでは影響力がないのだから」という男を非難するコメントや、「バチカン全体が浄化される必要がある! 世界最大の小児性愛者の組織だ!」といった、児童への性的虐待のニュースが絶えない教会を批判するコメントも出ている。

画像は『Le Figaro 2023年6月5日付「Vatican : un homme nu monte sur l'autel de la basilique Saint-Pierre」(TIZIANA FABI)』『CNA 2023年6月3日付「Penitential rite held after naked man stands on St. Peter’s Basilica’s main altar」』『Newsfeed 2023年6月2日付「Naked man protests war in Ukraine at St Peter’s Basilica at Vatican」(C)Silere non possum』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 H.R.)