究極のクロスオーバー! ランボルギーニ「ウラカン・ステラート」はキャンプにも行けちゃうスーパースポーツカー
キャンプにも行けちゃうスーパースポーツカー。ランボルギーニが2023年5月中旬に北米で乗せてくれた「ウラカン・ステラート」は究極のクロスオーバーともいえるモデルでした。
キャンプに云々は、5.2リッターV10エンジンに全輪駆動システムを組み合わせたこのクルマの開発指揮をしたロウベン・モアCTO(チーフテクニカルオフィサー)の言葉。
■新しいスーパースポーツカー像を打ち立てた
▲ラリーマシンの大ファンというロウベン・モアCTO
▲5.2リッターV10は高性能でかつ静粛性が高く完成度の頂点に達している印象
発想の原点は「新しいスーパースポーツカー像を打ち立てたかった」ところにあるそうで、往年のラリーカーのようなクルマを目指した、とモア氏は試乗会で教えてくれました。
たしかに、クラディングという合成樹脂パーツをはじめ、ドライビンランプやルーフラックや、ルーフのエアスクープなど、特別な外観が目をひきます。
▲合成樹脂パーツ、ノーズの補助灯、ルーフラックなどラリーマシンの雰囲気を盛り込んだエクステリア
▲ステラートはグラベル(砂利)の意味、とモアCTO
モア氏を中心とするチームが考えた新しいスーパースポーツは、ただし外観だけではないのです。いってみれば「どんな道でも楽しめる」クルマ。
英語でグラベル(砂利)を意味するステラートをサブネームにしているだけあって、最低地上高を、ウラカンEVOより44mm持ち上げて悪路走破性を高めています。
加えて、駆動力制御システムと、ブレーキで車体の向きを調整するトルクベクタリング・バイ・ブレーキ。
■マイルドながら最高出力は449kW、最大トルクは560Nm
▲ダートに囲まれたサーキットというウラカン・ステラートにぴったりなチャクワラバリーレースウェイ
試乗場所としてランボルギーニが選んだのは、カリフォルニア州パームスプリングス郊外の「チャクワラバリーレースウェイ」。土埃の舞う砂漠のような土地に作られたサーキットです。
そこを選んだのは、実はかなり考え抜かれた結果なんだなあと私が得心したのは、実際にウラカン・ステラートを走らせたときです。
設定されたコースは、サーキットと、そこにオフロードが接続されたもの。ストップすることなく、なんと、交互にまったく異なった路面を「思いっきり走って」(モア氏)と言われました。
▲サーキットでのコーナリングは至福の瞬間
最高出力は449kW、最大トルクは560Nmと、ほかのウラカンモデルよりはほんの少し数値ではマイルドなステラート。それでも、速い速い。サーキットのスタートラインを飛び出していきます。
加速もぐんぐんと上がり、コーナリングもさすがウラカン、と思わせるもの。確かにほかのウラカンより、加速もハンドリングもややマイルドに感じますが、充分満足のいくレベルです。
驚いたのは、サーキットのコースを外れて、周囲のオフロードを使ったコースを走ったとき。土と細かい砂利で表面がうねっている屈曲路を走りました。
当初は“大きくコースアウトしたら(車体に傷つけちゃうかもしれないし)まずいよな”と思って慎重だった私です。しかし、「思いきって」というモアCTOの言葉を思い出しました。
試しにアクセルペダルを強めに踏み込んでみると、後輪のグリップが一瞬トルクに負けて、リアがざっと流れます。しかし、次の瞬間には、カウンターステアなんてあてなくても直進に復帰。
▲ナチュラルなハンドリングのために後輪操舵システムはあえて採用しなかったという
▲オフロードで挙動が乱れても、すぐに姿勢が修正される
同様に、90度ターンのコーナーでもあえてアクセル踏みっぱなしでつっこんでみると、きれいにドリフトが決まります。
前輪のグリップは期待以上によくて、車体をぐっと引っ張っていってくれます。これらは、今回新設された「ラリー」モードのおかげといえます。
サーキットとオフロードをいちども停止することなく、行ったり来たり、高めの速度で走りきれるなんて、これは驚きでした。
■オンもオフも「常にやる気をださなくてもいいクルマ」
▲ジョシュアツリー国立公園はワインディングロードがえんえんと続く楽しいコース
SUVブームにのっかった、ちょっとあざといコンセプトかな、なんてウラカン・ステラートのことを色眼鏡でみていた私ですが、自分の思い込みを恥じました。
「ウラカンのオーナーに乗ってもらったところ、90%が(ウラカン・ステラートが)ベスト、と言いました」
モア氏は笑顔でそう語っていました。一般道でも舗装状態が悪いような場所は多くあります。そこもなんの問題もなく走れるし、速いだけではなく安心して走れるクルマだと強調していました。
オンもオフもこなしてしまう性能の背景には、ブリヂストンがこのクルマのために専用開発した「デュエラー」が果たす役割も大きいようです。
▲BSがこのクルマのために開発したオンもオフもいける「デュエラー」は前235/40、後ろ285/40でホイール径は19インチ
フリーウェイも走りました。パームスプリングス一帯は意外なほど平均速度が高いんですが、できるだけ時速65マイルの制限速度を守りました。そういうときは乗り心地がよく快適。
「常にやる気を出さなくてもいいクルマ」というモアCTOの言葉に納得です。低い回転域だとエンジン音も低く、音楽を楽しんでいればオーケイ。
▲8500rpmからレッドゾーンというのが、まさに往年のラリーで活躍したスーパーマシンを彷彿させる
▲外板色同様、内装も数多くの仕様から選べるようになっている
▲ステラートのために「アニマ」(ドライブモードセレクタ−)に「ラリー」モードを用意
そういえば、インフォテイメントシステムにも凝っています。フロントのカメラを利用したドライブレコーダーを使えば、走行中の画像を取り込めます。操作はじつに簡単。
データはクラウドにあがるので、それを自分のスマートデバイスにダウンロードすれば、きれいな景色だろうとサーキットの走行風景だろうと、あとでみなで観ることも可能。
2024年には全モデルの電動化(ハイブリッド化)を計画しているランボルギーニですが、いまこのときになって、こんないいエンジン車を作るなんてずるい、という声も聞こえてきそうです。
【Specifications】
Lamborghini Huracan Sterrato
全長×全幅×全高:4525x1956x1248mm
ホイールベース:2629mm
車重:1476kg
エンジン:5204cc V型10気筒
駆動:フルタイム4輪駆動
最高出力:449kW@8000rpm
最大トルク:560Nm@6000rpm
変速機:7段ツインクラッチ
価格:3116万5367円
<文/小川フミオ、写真/Automobili Lamborghini SpA>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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