ジープ「ラングラー・ルビコン」20周年記念エディションは、驚くほど高い悪路走破性を持つスペシャルな1台
自動車界の強力なアイコン、ジープ。そうそう類のないダイレクトな操縦感覚と、高いオフロードの走行性能は、一度体験してみてもいいかもしれません。
いまのジープはバリエーション豊富ですが、なかでも伝統的なスタイルを継承しているのがラングラー。
その高性能版として開発されたのがラングラー・ルビコンで、いまは「4xe(フォーバイイー)」というプラグインハイブリッドモデルもあって、日本でも高い評価を得ています。
2023年2月に、「ラングラー・ルビコンの20周年を記念」というモデルが発売されました。特別な外装とともに、少し車高をリフトアップ。悪路走破性をより高めたスペシャル。
4月初旬に米国での試乗がかないました。
■手弁当で集ったエンジニアが作り上げた“高性能なラングラー”
▲ラダーフレームに副変速機つきパートタイム4WDシステムと成り立ちは本格的なオフローダー
「20年前に、ジープ社内で“ルナティック・フリンジ”(狂信集団みたいな意)と呼ばれるエンジニアたちが手弁当で、高性能なラングラーを、と作りあげたのがルビコンでした」
ジープを統括するジム・モリソン氏の言葉が、プレスリリース内で紹介されています。
「彼らは顧客が何を求めているかよく理解していました。はたして、ルビコンはこれまでに70万台を記録する大ヒット。4xeももっとも性能の高いPHEVとして認知されています」
ネバダ州からカリフォルニア州タホ湖にいたる岩の悪路、ルビコン・トレイル(も走れる)ということから「ルビコン」なるサブネームをもったラングラーが初めて登場したのは80年代。
その名にふさわしく、より本格的なオフロード性能を、と上記のエンジニアたちが開発したラングラー・ルビコンが登場したのが、2003年なのです。
▲33インチ径の大径オールテレインタイヤ装着
ルビコンの特徴のひとつは、悪路で車輪が3輪浮いてしまう状況でも前に進めるよう前後のデフロックをそなえていることです。
加えて、「ロックトラックフルタイム4×4システム」も搭載。車内の操作で前輪のスタビライザーを切り離せます。
スタビライザーは、オンロードでは直進安定性を高めますが、悪路では、ホイールストロークを制限するネガ面も。ルビコンのこのシステムは、オンとオフともに高い性能を狙ったものです。
■歩いて登れない岩場を駆け抜ける走破性
▲ジープの中でもオフロード性能が優れたモデルのみに「トレイルレーテッド」のバッジがつく
今回のモデルは「20th Anniversary Edition(20周年記念エディション)」と名づけられたラングラー・ルビコン4xe(以下・ルビコン4xe)。
私がルビコン4xeに乗ったのは、ユタ州モアブのキャニオンランズ国立公園。別項で報告したイースター・ジープ・サファリの第57回大会が開催された場所です。
イベントに先立って、ジープはジャーナリストたちに、5時間ほどかけて岩場などの悪路を走り回るドライブを提供してくれました。
ジープの4xeモデルといえば、私はこれまで日本でも「レネゲード4xe」と「グランドチェロキー4xe」に乗ったことがあります。でもラングラー4xeはタイミングを逸していました。
ひと言で感想を言ってしまうと、驚くほど高い走破性を持つクルマでした。歩いて登れないような岩場でも駈け抜けるし、一方、舗装路でも快適な乗り心地。
パワートレインは、1995cc4気筒エンジンが200kWの最高出力と400Nmの最大トルクを発生。
スタータージェネレーターとして働く「P1」モーターは発進時に54Nmのトルクを積み増す。マイルドハイブリッド的な働きをします。
さらに「P2」モーターを搭載。こちらは255Nmのトルクを発生します。ただし、常にモーターが回るよう、エンジンがバッテリーに充電、という仕組みは採用されていません。
バッテリー残量が規定値を上回っている場合、「エレクトリック」か「ハイブリッド」というドライブモードで、上記P2モーターは作動。
▲センターコンソールには変速機のシフターと、副変速機の切り替えレバーがそなわる
ルビコン4xeにも、レバーで駆動を選ぶ副変速機がそなわり(電子制御でないのが確実性を重んじるジープならでは)、「ハイブリッド」モードで4WDを選択するとP2モーターが動きます。
「エレクトリック」を選択し、副変速機で4WDを選べばモーターが前後輪を駆動、2輪駆動なら後輪をモーターで駆動します。バッテリー残量がフルにあれば、約33kmをモーターのみで走行可能です。
キャニオンランズのドライブでは、バッテリー残量を維持する「E-SAVE」という制御モードをボタンで選択するよう勧められました。これを選ぶと、基本的にエンジンによる4WDで走ります。
■キャニオンランズ国立公園での試走
▲レッドロックがそびえたつキャニオンランズ国立公園をいく
テストドライブに出かけた日は、荒れ模様の天気で、スタート地点に選ばれた国立公園の入口に到着する前から雪。どんどん積雪していくのにビビりました。
一方、途中から雲がなくなりピーカンに。いわゆるマイクロクライメートの、1366平方キロメートル(日比谷公園は0.16平方キロ)のオフロードは、試乗に最適だったかもしれません。
専用のタイヤを履き、空気圧は少し落として走ります。やはりタイヤへの気遣いが、クルマの走行性能に大きな影響を与えるのだと、納得です。
▲専用サスペンションシステムの恩恵で渡河性能も向上
▲キャニオンランズ国立公園の一部では雪に見舞われた
ルビコン4xeの副変速機をレバーを手動で操作します。比較的平坦な道では4H(オート)で走り、岩場の登り下りというコースを前に、ギアをニュートラルに入れたあと、4Lを選択。
本当の悪路を走るのは、頭脳ゲームです。コースの選択やギアの設定などの組合せが、走破性を左右するからです。
ルビコン4xeは、しかし、まったくフールプルーフ。副変速機でしっかりトルクが出るようにしておけば、岩場をやすやすとというかんじで、乗り越えてしまいます。
▲大きなホイールクリアランスがオフロードではありがたい
▲泥まみれになってもテールレンズの正面だけは汚れない
ルビコン4xeの専用装備としては下記のものがリストアップされています。
・2分の1インチ(約1.27センチ)サスペンションリフト
・約28cmの最低地上高(標準モデルより約1cm高)
・「トリプルフープ」(3つの輪の意匠)グリルガード
・スチールバンパー(フロントはウインチ対応)
・17×7.5インチ ビードロック(低空気圧時でも脱着防止機能)対応ホイール
・33インチ径BFグッドリッチ社製オールテレインT/A KO2タイヤ
・ヘビーデューティースチール製ロックスライダー(側面下部保護)
・フロントオフロードカメラ
・赤と黒のカラーコンビネーションのレザーシート
・全天候型フロアマット
ラングラー・ルビコン20周年記念モデルには、6.4リッターV8搭載のラングラー・ルビコン392が同時発売され、さらに37インチタイヤなど、よりヘビーデューティな「AEV」なる仕様があります。
20周年記念モデルで、日本では体験できない悪路を走ってみて、ラングラー・ルビコンの楽しさを再認識しました。
限定モデルなので日本導入はないかもしれませんが、通常のラングラー・ルビコン4xeでも充分楽しめるはずです。
実際、このとき30kmぐらい、このクルマで走る機会がありました。それで自信をもって、勧められるのです。
【Specifications】
Jeep Wrangler Unlimited Rubicon 4xe(日本仕様の参考データ)
全長×全幅×全高 4870x1930x1855mm
ホイールベース 3010mm
車重 2350kg
1995cc 直列4気筒ガソリン+電気モーター(PHEV)4輪駆動
最高出力 200kW@5250rpm+107kW(P2モーター)
最大トルク 400Nm@3000rpm+255Nm(P2モーター)
変速機 8段オートマチック
燃費 8.6km@l(WLTC)
電気モーターによる最大走行距離 42km
価格 1030万円
>>Jeep Japan Jeep Wrangler 4xe
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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