中村敬斗がオーストリアでゴール量産中! 「初A代表」「現地での生活」「目標」について大いに語った
新進気鋭のFWが、3月24日、ウルグアイとの親善試合で日本代表(A代表)デビューを果たした。彼の名は中村敬斗。現在、オーストリア1部LASKリンツで得点を量産中で、海外生活は既に4シーズン目となった。そんな22歳の若きサムライに、初招集だった日本代表、所属クラブ、そしてオーストリアでの生活など、多岐に渡り語ってもらった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
日本代表デビューを果たした中村敬斗
──3月の代表戦で帰国されましたが、日本はいつ以来でしたか?
冬のW杯期間中に帰っていたので、3カ月とか、3カ月半ぶりくらいですかね。
──A代表は初招集でした。森保一監督や他の選手との接点はこれまでありましたか?
ある程度年齢が近い選手は、世代別(の日本代表)の時に会ったり、一緒にプレーしています。伊東純也さんは今回初めて会って、という感じでしたけど。(その他の選手も)Jリーグで対戦したこともありましたし、本当に「はじめまして」っていう方はほとんどいなかったです。
同年代の選手とはふだんからも交流があります。久保(建英)選手とは連絡を取ったりもしていて。あと菅原(由勢)選手や谷(晃生)選手、瀬古(歩夢)選手らも同い年ですし(交流があります)。
──今回の初招集にあたって、森保監督とどんなことを話しましたか?
戦術的な話がほとんどでした。あと、今回の活動が終わる最後の時に、個人的に「チームでのプレーだったり、何を学んだかっていうのをしっかり見ていくから、よいプレーをできるように。またこの代表に戻ってこられるように、自分のチームで頑張ってくれ」と言われました。
──森保監督の印象についてはいかがですか?
W杯で三笘(薫)選手や堂安(律)選手を後半投入して試合の流れを一気に変えた監督という印象です。サイドハーフの縦への突破はすごい武器になっているんじゃないかなと思います。
森保監督とは世代別(の日本代表)で会っていたとはいえ、なかなか長い期間会っていなかったので、(今回の代表戦で)会うまでは「日本代表の監督」という印象が強かったですね。
──W杯での日本代表で、ご自身とポジションが重なる選手のことを、どう見ていましたか?
「僕が代表に入ったら誰と(ポジションを)争う」なんてことは、まったく気にしていなかったです。普通に、一ファン、一視聴者として日本代表を応援して見ていただけですね。日本代表に勝ってほしいという気持ちでずっと見ていたので、(W杯での日本代表の活躍は)すごいなと思いました。
──今回の代表戦(3/24)では、残念ながら短い出場時間(4分間)に終わってしまいましたが、日本代表で自分の強みを生かすとしたら、どのようなポイントになると考えていますか?
今回初めて(A代表に)入ったんですが、おっしゃるように出場時間が短かったので、自分がピッチに立った時にどういうふうに自分を出していくかというのは、まだいまいち掴めてないというのが正直なところです。練習もそんなに多かったわけではないので。
──あの時間(後半44分)からの出場だと難しい面は多々あると思いますが、そのなかでどんなことを考えながらピッチに入ったのでしょうか?
アディショナルタイムを合わせても4〜5分あるかないかの時間だったので、やれることは限られていると思っていました。1対1のところで負けないとか、球際で負けないということをベースに、もしチームとしてチャンスがあれば前に行くと。そのうえで相手ゴール付近での切れ味だったりアイディア(を出す)というところだったんですけど、なかなかそういうこともなかったですね。ただ、短い時間のなかでもボールに関わる回数は多かったので、前向きに捉えています。
──世代別代表の経験はこれまでにもありますが、A代表のユニフォームを着てピッチに立ったのは、今回が初めてでした。気分はいかがでしたか?
やはり特別なものはありました。ピッチに入る時は特にそんなことも考えずにサッカーのことだけに集中していたんですけど、小さい頃の夢がひとつ叶ったという感じです。
【オーストリアのリーグや生活】──所属クラブのことについてうかがいます。まずは、オーストリアに移籍した経緯を教えてください。最初はLASKのトップチームではなく、セカンドチームへの加入でした。
LASKのセカンドチームでやる前は、ベルギーのシント=トロイデンVVでプレーをしていたんですけど、その半年間っていうのはまったく試合に絡めずに本当に苦しい時間を過ごしていました。選手としては、試合に出たいというのがあったので、代理人と話して、なんとか移籍先を......リーグのレベルは下がったとしても、まずは試合に出るということで探してもらって。実際はLASKのセカンドチームからしかオファーがこなかったので、選択肢としてはシント=トロイデンVVに残るか、新しいチームに挑戦しにいくかというところだったんです。でも迷いはなくて、まずはセカンドチームで結果を残してからという感じでした。
──選択肢のひとつとして、日本に帰るという考えはなかったのですか?
ガンバ大阪からのレンタルだったので、そのあたりは僕個人だけでの判断はできませんでした。ガンバ大阪とも何度もミーティングを重ねて、そのうえでまだヨーロッパで挑戦したいと僕が伝えて、それをしっかりと受け止めていただきました。
──加入前に、LASKに対するイメージ、またはオーストリアのリーグに対するイメージは何かありましたか?
オーストリアのリーグにはレッドブル・ザルツブルクがいて、正直なところ、他のチームがどれだけやれるのか、どれだけレベルが高いのかというのは、わからない状態でした。とにかく(LASKの)セカンドチームで結果を残さないと先はない、と考えていたので、そのリーグに対して何かを思うかとかは、まったくなかったです。目の前のことだけに集中していました。
──今季はここまで(2023年4月10日時点)リーグ戦13ゴール、公式戦16ゴールを決め、南野拓実選手が持っていたオーストリア・リーグでの日本人記録を更新中です。コンスタントに得点を重ねられている理由はどこにあるのでしょうか?
一番は、チームに馴染めていることですね。味方あってのゴールだと思うので。いい連携のなかでゴールが生まれていますし、あとは今のLASKの監督とすごくいい関係を築けているというのもあると思います。やはり僕のなかで、そこがすごく大事だと思うんです。のびのびプレーできるというか、自信を持ってプレーできるので。そのふたつですかね。
──そしてしっかりとゴールを決めたから、さらに周囲からの信頼が集まるようになった、ということでしょうか。
やはりゴールだったり、チームを助けるプレーがなければ、信頼は得られないと思います。(それがなければ)練習でいくらいいプレーを見せても試合じゃ使えないねとなってしまうので。公式戦で何を見せられるかというところで、今はいい形になっていますし、チームを少しでも助けられているのかなと思います。
──「この部分はオーストリアでは十分通用するな」という点はありますか?
ボールを持って前を向いた時だったりとか、ペナルティーエリア付近で自分の持ち味の、ゴールに向かうプレーというのは、オーストリアでも結果として出ているので、通用するというか、武器になっていると思います。
──オーストリア・リーグはザルツブルクの一強と見られることが多いですが、実際に戦ってみてどう感じられましたか?
前よりは差がなくなっているのかなとは感じますけど、僕ら(LASK)と、ラピード・ウィーン、シュトゥルム・グラーツの3チームが、ザルツブルクに食らいついていけるかという状況になってきていると思います。ただ、やっぱり強いですね。チャンピオンズリーグでもベスト16に行きますし、世界的に見てもザルツブルクは強いチームなので、勝つのはなかなか容易ではないです。(相手の)個人の能力が高いので、どうしてもこちらは引くサッカーになってしまいます。
──チームメイトが対ザルツブルクだと怖気づいてしまう、ということはないですか?
それはないですね。「相手がザルツブルクだ。よっしゃ、絶対勝つぞ」みたいな感じです。ビビってる選手がいたら使ってもらえないです。僕らのチームはもう、闘争心むきだしで、モチベーション高くいく、っていう。ふだんよりも球際が激しくなったりとか、ガツガツいくという感じです。
──いずれはこの国で、あるいはこのチームでやりたい、というのはありますか?
最終的にはプレミアリーグに行きたいというのが小さい頃からの夢です。そこに向けて自分がどういうキャリアを歩んでいくかというのを考えて、どうステップアップしていくかはこれから考えていければいいと思います。ただ、どこからオファーがくるかにもよるので、一概にこれから「ドイツに行きたい」とか「イタリアに行きたい」というのはなかなか言えないです。
──先日の代表戦の時には、現在プレミアリーグでプレーしている三笘選手から何か情報収集をされたんですか?
はい、ポジションも同じなので、プレミアリーグでプレーするためにはどうするかということも話しました。あとは戦術的な部分だったり、どういうメンタリティなのかとか。世界一のリーグであれだけの過密日程であれだけ結果を残しているので、(三笘選手は)頭ひとつ(抜け出している)というか、すごいところまでいっているので、この間の代表の時は積極的に話しかけて質問して(笑)。気になることばかりなので、もっと時間がほしかったですね。三笘さんに限らず、上のリーグでやっているすごい選手たちばかりなので、いろんな話を聞いて。次の6月も(日本代表に)呼ばれたいですね、絶対。
──そういった話を周囲の選手から聞けるのも醍醐味ですね。
今回の代表活動が、僕のサッカー人生で間違いなくターニングポイントだったと言えます。
──ところで、海外生活での言葉の問題はいかがですか? オーストリアで話されている言語はドイツ語ですが......
ドイツ語は今勉強中です。チームが英語でドイツ語の授業をしてくれているので、それを受けています。
英語なら日常生活に支障がなく普通に話せるので、基本的には英語で生活しています。(欧州で最初に所属したオランダの)トゥエンテでも英語で。週に2〜3回、英語の授業がマンツーマンであったので。そのままの感じでベルギーに行って、オーストリアに来て。みんな英語を話せるので、基本的に僕と話すときは英語です。監督の指示も、(監督が話す)ドイツ語をチームスタッフが英語に訳してくれています。
──息抜きは、ふだんどうされていますか?
基本的に週に1回はオフなんですけど、ショッピングモールに行ったりとか、チームメイトと話したりして、あまり家には籠りません。誰かと話すのが息抜きになるので。日本の情報もチェックしていますよ。WBCも見ていましたし、スポーツに限らずいろんな話題やニュースは見ていますね。ゴシップも含め(笑)。
集英社作品のアニメも見ています。『ONE PIECE』『呪術廻戦』『ハイキュー!!』『鬼滅(の刃)』......結構見ていますね。サッカーアニメは『ホイッスル!』が一番好きです。幼稚園児の時に『ホイッスル!』を見て、柏レイソルのサッカースクールに行っていました。
──今季は残り8試合です(4月10日現在)。最終的にゴール数をどこまで伸ばしていきたいですか?
公式戦20ゴールはしたいなと思っています(現在16ゴール)。プレーオフであたる上位チーム相手に点をとるのはなかなか簡単ではないです。そこで25ゴールとは言えないですけど、あともう少しは(とりたい)。2試合に1点のペースなので、容易じゃないですけど、でも今のペースで考えたらいけるんじゃないかなと思っています。
中村 敬斗(なかむら・けいと)
2000年7月28日生まれ。千葉県我孫子市出身。U-17W杯のホンジュラス戦でハットトリックを記録。17歳で三菱養和SCユースからガンバ大阪とプロ契約に至り、19年夏に海外へ。オランダ・トゥエンテでは強豪PSVとの開幕戦で欧州初ゴールを挙げ、その後、シント=トロイデンVV(ベルギー)にも所属。2021年2月にオーストリア2部FCジュニオールに加入後、活躍が認められガンバ大阪から同1部LASKリンツへの完全移籍が決定。2022-23シーズンにオーストリア1部の日本人最多得点記録を更新。2023年3月のウルグアイ代表戦で日本代表デビュー。