ネット保険のメリットとデメリットについて考えてみた!

先日カーディーラーへ愛車の点検に行った際、担当だった営業マンが今年定年を迎えて退社するとの話を聞きました。その営業マンとは17年もの付き合いで、かつては一緒にカラオケへ行くこともあるような友人関係でもありました。

現在の愛車もその方から購入し、点検以外に自動車保険などもお任せしていたのですが、保険だけは「流石にネット保険(通販型保険)と比べて高いなぁ」と前々から思っていたこともあり、この退社を期にネット保険へ切り替えさせてもらおうかと検討しているところです。

ネット保険がメジャーな存在となって久しい昨今だけに、未だに「付き合い契約」を続けているのも珍しいと我ながら笑ってしまいますが、筆者の両親はすでにネット契約型の自動車保険に切り替えており、両親からも「いい加減お金が勿体ないからネット保険にしたら?」と勧められていたところでもありました。

みなさんは自動車保険や生命保険などでネット保険を利用していますでしょうか。ネット保険は便利な一方で、十分な知識や理解がなくては契約しづらいものでもあります。どのような保険がネット契約に向いており、メリットだけではなくリスクやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はネット保険の利用状況の実態とメリットやデメリットについて考察します。


安さに定評のあるネット保険だが、リスクはないのか?


■数字で見るネット保険の契約率
はじめに、現在の保険契約の実態について見てみましょう。

MMD研究所が2023年1月に公開した「ネット保険に関する調査」によると、自身でお金を払って保険に加入している人の割合は平均で66.7%となっており、3人に2人は何かしらの保険を契約しているようです。

契約率は年代が上がるほどに高くなり、60代では8割を超えます。体力が衰え健康面でも不安が出てくる高齢者ほど医療保険や生命保険、傷害保険といったものに関心が出てくるのは理解できるところです。


体力的な不安が少なく多少無茶をしてもすぐに回復してしまう10代や20代の若者の保険加入率が低めなのも理解はできる


契約している保険の内訳を見れば、医療保険・入院保険が55.5%、自動車保険が51.6%、生命保険・死亡保険が48.9%、火災保険・地震保険・家財保険が40.8%となっており、これらの保険の加入率が高い点はとくに驚きはありません。

強いて言うなら、個人年金保険が20.8%と5人に1人が加入している点は政府の年金制度への不信感などを反映しているようにも思え、さらに自転車保険が15.3%と筆者が想像していたよりも高い点に興味を惹かれました。

2023年4月の道交法改正によって自転車に乗る際にはヘルメットを着用することが努力義務とされたこともあり、自転車運転時の安全への関心が非常に高まっています。自転車保険は保険料が比較的安いこともあり、今後さらに契約が伸びていくものと思われます。


自転車事故でも死亡事故ともなれば賠償金が1億円を超えることがある。保険への加入は行っておいたほうが安心だろう


■保険ごとに興味深い違いが見えるネット契約率
これらの保険のネット契約率を見てみると、なかなか興味深い数字が読み取れます。

人々の関心も高く契約率も高めな医療保険・入院保険、生命保険・死亡保険、そして火災保険・地震保険・家財保険などは、ネットでの契約率は20〜30%程度とかなり低めです。

その他の保険に関しても基本的には20〜30%前後と大差のない数値ですが、2つだけ明らかに有意差を感じる保険があります。それは自動車保険と自転車保険です。

自動車保険のネット契約率は42.8%と非常に高く、自転車保険に至っては51.4%と半数以上がネット契約です。この点に関しては、いくつかの理由が考察可能です。


自動車保険や自転車保険は、他の保険と何が違う?


1つはTVCMの効果です。ネット保険のTVCMと言えば大抵の人がソニー損保やチューリッヒといった大手損害保険会社のCMを思い出すはずです。

他の生命保険のCMと比較しても低価格やアフターサポートの充実ぶりを謳ったCMが多く、保険料の分かりやすさが特徴となっており、短い周期で何度も繰り返し視聴するCM効果と相まって認知度や理解度が非常に高いことが推察されます。

また、自動車保険や自転車保険は他の保険と比較して補償内容や約款が比較的シンプルで分かりやすいという点が挙げられます。

例えば医療保険やがん保険などは契約に必要な告知情報が多く、また医師の診断書や用意すべき書類も状況によって様々であるため、保険会社の専門スタッフや営業マンとの相談が欠かせないという一面があります。

しかし自動車保険は事故歴や違反歴など告知情報が比較的少ない上に分かりやすく、必要な書類も運転免許証や車検証のみで良いという手軽さがあるため、ネット上での契約に比較的向いていると言えます。

通販型(当時はネット契約よりも電話契約が多かった)の自動車保険が日本で開始されたのが1997年であり、通販型の生命保険が日本で開始されたのが2008年であることもまた、ネット契約率の差に出ているのかもしれません。


日本初の通販型自動車保険として名を馳せたアメリカンホーム・ダイレクトの自動車保険は2017年に取り扱いを終了している


■安さに惑わされずしっかりと契約内容の確認を
ネット契約率の高い自動車保険や自転車保険ですが、メリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

メリットについては前述してきたように、「手続きの容易さ」や「安さ」が挙げられます。実際、アンケート調査でもこれらの2つをメリットとして挙げている人が非常に多く、その他の「好きな時間に申し込める」、「自分のペースで申し込める」、「どこからでも申し込める」といった、手軽に契約ができるメリットよりも高く評価されています。


やはり「安い、簡単」にかなうメリットはない


それでは、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。まず考えられるのは保険プランの選定や補償内容の理解で、より慎重になる必要がある点です。

決して対面販売による保険では内容確認を疎かにして良いという意味ではありませんが、専門のスタッフが終始横について丁寧に説明してくれるわけではなく(オンラインチャットでの会話などは可能だが)、対面販売よりも自己責任の下にしっかりと内容を把握し、補償内容や約款を自ら精査する必要があるのは事実です。

だからこそプラン選択などがシンプルな自動車保険や自転車保険のネット契約が多いとも言えますが、多少でも不安があるなら対面販売も同時に検討すべきでしょう。

また、保険料が安い理由も正しく把握する必要もあります。例えばネット契約型自動車保険の場合、単に営業の人件費を削減しているというだけではなく、見積もり時点で保障額が低めに設定されていたり、あまり利用されない特約が付帯しない状態での保険料が提示されていることが多々あります。

額面だけを見て「やっぱりネット保険は安い!」と安易に結論を出すのではなく、しっかりと補償内容や特約の付帯状況を確認し、例えば対面販売の保険と全く同じ条件にした場合で比較するなど、十分な精査が求められます。

もちろん、それまで契約してきた保険に不要な特約や必要以上の契約内容があった場合も十分に想定されます。ネット保険を検討する際は、自分自身に合った保険内容であるのかを必ず確認するようにしましょう。


ネット保険は、本来専門のスタッフが行うべき業務の一部をユーザーが負担しているから安い、と言い換えることもできる


■まずはスマホで検索。知ろうとする姿勢が大切
今や保険の契約ですら、スマートフォン(スマホ)1つで手軽にできる時代です。

例えば東京海上日動などは、年齢限定特約で契約した保険であっても1日単位で家族や友人まで保障を適用させる自動車保険のオプションプラン「ちょいのり保険」などを提供しており、スマホから簡単に契約が可能です。


ちょいのり保険はスマホから手続きができるだけではなく、保険料の支払いも通信料金との合算支払いに対応している


奇しくもモバイル通信の世界では万が一の通信障害に備えた副回線サービスがKDDIやソフトバンクから提供が開始され、災害や事故に対する備えへの関心が非常に高まっています。日々の生活への備えを万全にしておくという点で、通信契約の複回線化と保険契約には通じる点が多くあります。

また、通信キャリア(移動体通信事業者=MNO)自体も保険業をグループの重要な戦略に位置付けており、NTTドコモであれば「ドコモの保険」、KDDIは「auの生命ほけん」および「auの損害ほけん」、ソフトバンクは「ソフトバンクかんたん保険」、楽天モバイルは「楽天生命」および「楽天損保」と、いずれも自社グループ内に保険会社を用意しています。

これらの通信キャリアが用意する保険の認知度は調査データでいずれも10〜20%前後とまだまだ低い数値ですが、人々がいつでもどこでも保険に加入できる体制は整いつつあります。

単なる通信障害ですら、一度起これば多大な被害と損失を被ります。これが自身の事故や病気に直接かかわる問題であれば、なおのこと準備をしておく必要があります。

「保険なんて必要ない」、「保険料がもったいないからやめておく」、「ネット保険は興味あるけど難しそうで怖い」と検討段階から投げてしまう前に、その手元に持つスマホで一度ネット保険のことを調べてみてはいかがでしょうか。


後悔先に立たず。万が一への備えがあっての人生だ


記事執筆:秋吉 健


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