【パパ活ならぬジジ活か】90代男性の背中を流し、ハグをして1日20万円。高齢パパ活シングルマザー(55)の告白「彼らにとってパパ活も終活のひとつなんです」高齢男性が人生の最後に女性を求める理由とは?
年齢を重ねても性愛のパートナーを求める気持ちが消えてなくなることはない。90代の富裕層男性と金銭でつながる女性の話から、高齢者のパパ活の実態に迫る。
エロ本の処分だって立派な終活
先日、知人に誘われてとある食事会に赴いた。参加者はみな80代のご老体。主催者であり脳梗塞経験者である筆者の知人が「あとどれくらい生きられるかわからないから、お世話になった人に少しずつ会っていきたい」という裏テーマのもと開催されたプチ同窓会だ。
参加者の中で筆者はひとり40代だったが、ライター業に従事しており、性をテーマに取材をすることも多い。その物珍しさから会合に話題を提供することを期待されて、声をかけられたようだった。そして、知人の思惑通りか、お酒が進むとトークのテーマは「シモ」のほうに向かっていく。
ある参加者がこんな話をしていた。その方はすでに妻を亡くし、10年ほど経っているのだが、愛読しているエロ本問題に頭を悩ませているというのだ。
「実は若い頃から裏本を収集するのが趣味で……私が死んだ後に遺品整理で家族にバレたら嫌じゃないですか。特に娘にはバレたくない。かといって、100冊以上あるので処分にも困ってるんです」
そのコレクションの中には「金閣寺」(1980年代に誕生した日本初の裏本)もあるということで、筆者がそれらすべてを引き取ることを提案すると、その参加者はたいそう喜んでいた。筆者はこの酒宴に参加して、なるほど、そういう終活もあるんだなと思わされた。
性に関する終活は収集したエロ本の処分にとどまらない。元気で体が動くうちに男としてもう一度、奮い立つ機会をつくりたいと考える高齢男性は少なくないようだ。
筆者は過去に上梓した『高齢者風俗嬢』(洋泉社)という本の取材で高齢風俗嬢だけでなく、高齢男性の風俗利用についても話を聞いた。なかには、男やもめとなって手料理が恋しくなったことから週に1度デリヘルを利用し、卵焼きを作ってもらったり背中を流してもらったりした後にプレイにのぞむ男性もいた。
このような取材から、ただ単純に性欲を満たしたいのではなく、いくつになっても異性の温もりを感じるためにプロのサービスを求める男性が少なからずいることを知った。
そして先日、人生の夕暮れ時を迎えている90代の男性とパパ活、いや、男性の年齢を考えると“ジジ活”と呼ぶほうが適切だろう、その関係にあった50代の女性の話を聞く機会に恵まれた。
90代の男性と2回目の食事でホテルにチェックイン
「もう90歳も過ぎました。長くて5~6年、短かければ2~3年……いえ、明日があるかどうかもわからない。ですからね、できるだけいい思い出を作っていきたいんです」
と老年男性のSさんからパパ活の誘いを受けたのは、AV出演やデートクラブ在籍の過去を持つ、2人の子持ちでバツ2のシングルマザー、K子さん。55歳だ。
「知人が開いた3対3の合コンのような食事会でその方とは知り合いました。男性陣はみな高齢でしたが、フレンチのコースを楽しみながら、いろいろなお話をしましたよ。遊郭で童貞を捨てたお友達の話とか、クラブのホステスさんと仲良くなった話とか」
インタビューに応じるK子さん
男性陣のうち、2人はすでに妻に先立たれ、もう1人の男性Sさんの妻は長く要介護状態で意思の疎通もほぼ不可能状態。さらに、現役を退くと酒席も減り、女性と色っぽい話もできなくなる。その反動なのか、久しぶりの機会に男性たちは大いに盛り上がっていたそうだ。
「数か月に1回、こんな感じでみんなで集まって食事をしながらお話をする機会を持ちたいね」という話になってその日の会はお開きとなったが、その後、男性陣のひとりから「Sさんとお風呂に入って背中を流すような時間を作ってくれないか」との提案があった。
Sさんは現役時代にいくつかの事業を展開する経営者で、会長とまで呼ばれるような人物だった。いわゆる富豪である。
「社会的地位のせいか、プライベートで自由に女性と楽しむことが難しかったようです。20代半ばで奥さんと結婚した後は、銀座のクラブや出張時に遊ぶようなことはあっても、愛人をもったり、不倫をすることもなかったそうなんです。だから、少なくとも30~40年くらいは女性とイチャイチャしたり、恋人トークしたりすることはなかったんじゃないかな?」
Sさんの妻は認知症で10年以上もの間、介護を受けながら生活をしている。毎日、家事や介護をするヘルパーさんに来てもらっているため、日常生活でSさん自身が困ることはないが、やはり死ぬ前に女性と肉体関係を持ちたかったのか。しかし……。
90代と50代が密室でふたりきり
「十何年もセックスはしてなくてもう勃たないから、そういうことはできないし望んでない……と言うんです。セックスがしたいんじゃなくて、お風呂に入って背中を流してもらったり、ハグしたり、手を握りながらお話したり…そういうことがしたいそうで。たぶん、恋愛している感覚をもう一度味わいたいんでしょうね」
K子さんはSさんと都内の高級ホテルにランチへ行くことになり、食後にそのまま同じホテルへとチェックイン。まだ2回しか会ったことがなかったが、お互い年齢を重ねた男女だ。そこは早すぎるということもないのだろう。問題は別のところにあった。
Sさんとランチに行った際に出された料理
「場所選びはけっこう大変でした。ランチもお部屋も前もって予約ができて、なおかつデート気分を楽しめるところで、Sさんのご自宅からアクセスが悪くないところ……という条件で探しました。そういう意味では食事から部屋に向かう負担が少ないそのホテルはうってつけの場所だったと思います」
Sさんは過去に大病をしているため、手すりなどのバリアフリーの設備もある程度必要だ。年を重ねると、いろいろな部分で行動を制限される。もちろん、前情報どおり、真の意味で男女の関係になることもなかった。では、ふたりは密室でどんなことをしていたのか。
「最初はソファで向かい合って座っていたのですが、しばらくすると隣にやってきて、手を重ねてお話ししました。『こうやってあなたと2人きりで隣に座って、ゆっくり話したかった』なんて言われて。
『若い頃はスポーツをやっていたから、僕は結構筋肉があるんだよ』と言うので、太ももを触ってあげたりもしました。キャバクラみたいな感じですね」
※写真はイメージです
一緒にお風呂を入ることも提案したが、浴槽の縁が高く断念。彼女は介護の資格など持っていないので、万が一に備えてのふたりの判断だった。
体は衰えに抗えない現実がある一方で、男として頼られたい気持ちはまだ残っている。
ジジ活も終活のひとつ
「シングルマザーの私がどうやって生計を立てているのかを気にしていました。『この先、結婚するの?』と聞かれたので、『相手もいないし、しばらくないかな』と答えたら、ちょっと嬉しそうな顔をした後に『これは生活の足しにしてください。これからも困ったら僕を頼りなさいよ』と20万円をいただきました」
当初、Sさんの友人から聞かされていた金額は10~15万円だったので、それよりもだいぶ多い。女性にいいところを見せたい、頼られたいという気持ちは、いくつになっても変わらないのだろう。
Sさんは「また会ってね」という言葉とともにハグをしながらキスして、K子さんとその日は別れたそうだ。
それ以降、Sさんと直接会う機会には恵まれていないが、ほぼ毎日のようにLINEをしているという。当初はおぼつかなかった文面も、好きな人のためにと一生懸命勉強したのか、絵文字なども習得。
トーク履歴を見せてもらうとSさんから「あなたは理想の女性です」「また会いたいなあ。抱きしめたい」といった恋人同士のようなメッセージが絵文字で飾られていた。
※写真はイメージです
「しばらく既読がつかないと『もしかして?』と思っちゃう。本当に怖いし、心配になります。死んじゃったらヤダなあ……。今は寒いのでもう少し暖かくなったら会いましょうと言っています」
K子さんは後期高齢者とジジ活関係を始めたことで、あることに気づいたという。
「初めて会った時は元気にスタスタ歩けていて、お酒もかなり飲んでいました。今時のおじいちゃんってこんなに元気なんだなとビックリしたくらい。なのに、2回目は『あれ? こんなに老けてたっけ』と……。
高齢者は時間の流れが私たちと違うんです。いつ死ぬかわからないから、やり残したことをやっておきたいんだなとその姿を見て感じました。彼らにとってはこれも終活のひとつなんですよ」
人生の夕暮れにおいてのジジ活。認知症の妻は置いておいて、Sさんの子供や孫がこの事実を知ったら悲しむのではないか。この問いにK子さんは「それこそ子どもたちのエゴ」「本人が望むことをさせてあげればいいのでは?」と答えた。
人生の終わりに向けての準備だけが終活ではない。
もう一度、男らしく女性を愛して誇らしく人生の幕を下ろすのも、ひとつの大往生といえなくもないのか。
取材・文/中山美里
集英社オンライン編集部ニュース班