チェコ戦に先発した日本代表・佐々木朗希【写真:Getty Images】

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WBC世界の投手たちをピッチングストラテジスト・内田聖人氏が分析

 連日熱戦が繰り広げられる野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。「THE ANSWER」では、多くのプロ野球選手を含め400人以上が参加するパフォーマンスアップオンラインサロン「NEOREBASE」を主宰し、最速155キロを投げる自身を実験台にしてピッチング理論やトレーニング理論を発信するピッチングストラテジスト・内田聖人氏が、独自の目線で世界の投手を分析する。今回は日本代表・佐々木朗希投手。11日のチェコ戦で最速164キロを記録するなど8三振を奪い、3回2/3を2安打1失点(自責0)と圧巻のWBCデビューに。内田氏は異次元の投球を支える右腕の投球メカニクス(構造)に着目した。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 佐々木投手は真っすぐもフォークも投げている球はとてつもない。凄いのは、誰が見ても分かります。

 だからこそ、今回は佐々木投手の投球フォームのメカニクスに着目したいと思います。最大の特徴は「大きく、長く、速く」。長いもの(リーチ)を持っていて、それを大きく、長く、速く、使える能力がとてつもなく高いということ。

 佐々木投手の場合、腕を肩から振るのではなく、もっと胸や腹から強く振って、勝手に腕が返ってくる。その(支点から指先までの)半径が“大きく、長く”取れている。背が大きいと末端を扱うのは難しいのですが、佐々木投手は192センチの上背があってうまく自分の身体を操れています。

“速く”動かそうとすると、大切になるのは予備動作です。例えば、垂直跳び・立ち幅跳びは素速くしゃがんでジャンプする。地面の反発をもらうことに加えて筋肉が速く伸ばされることで速く縮まる作用を利用するわけですが、佐々木投手は投球フォームの中で、それが上手くできるから身体を速く使えることに繋がります。

 これは後天的に鍛えることができる技術。だから、佐々木投手は全身の力を球に伝える能力が高い。正直、ぱっと見は全力で投げていないんじゃないかと思うくらいの力感なのに160キロを出す。持って生まれた才能だけではなく、“投げるのが上手い”ということです。

 実は小中学生を指導していると、背が大きい投手の課題がよく見受けられます。

 周りに気を遣ってしまうのか、合わせてしまうのか、身体を小さく使ってしまう子が多い。例えば、肘を抜いてリリースの位置を体に近づけてしまったり、下半身が沈み込んでしまったり。これは背の大きい子に本当にありがちなことです。

 背が高いと猫背になりやすく、肩が前に来るので腕を上げようにも上げられず、小さくなってしまう。だから、まずは姿勢を大切にすること。せっかく大きいのだから、周りに合わせることなく、大きく使って投げることが大切です。

 佐々木投手はそれがとてつもなく上手にできるので「大きく、長く、速く」の究極系です。

171センチで150キロを投げる宮城大弥からも学べること

 最後に。佐々木投手の後を受けて登板した宮城大弥投手について、中高生世代に向けて触れておきます。

 佐々木投手とは対照的に、宮城投手は171センチながら150キロを超える球を投げることができます。オリックスの選手に聞くと、「本気でやったらウエイトもスプリントもジャンプも中距離も全部凄い」と言うほど、自身の筋肉が持つ力を最大限に発揮する能力が高い。

 ジャンプやスプリントの能力は先天的な部分はあるかもしれませんが、まだ中高生の成長期、特に中学生までは神経系が発達する時期。だから、宮城投手がその能力が高いことから学んで、その年代までに遊びの中でもたくさん走り回ったり跳んだり、スプリント系、ジャンプ系を取り入れていって損はないと思います。

 成長期によるオスグッドの膝痛には気をつけながらも、ダッシュやジャンプを試みるなど、宮城投手からフィジカルの大切さを考えることができます。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)