外国人からマンション借りたら「税金100万払え」SNSで拡散した無慈悲な税制、本当なのか
ここ数日、SNSで驚きとともに拡散されている動画がある。投稿主によれば、中国人オーナーのマンションを5年借りて退去したところ、税務署から「約100万円の滞納があります」と、無慈悲な通知が来たというのだ。
税務署からの通知を受け、男性が調べたところ、法律上、海外在住の人間がオーナーの不動産(事務所、店舗など)を借りた場合、源泉徴収で20.42%をオーナーが支払う必要があり、オーナーが支払わなければ借り主が代理で支払う必要があるのだという。
契約時、オーナーが中国人であることは知らされていたが、源泉に関する告知はなかったという。契約時の不動産会社は潰れ、途中で別の管理会社に変わったが、結果としてオーナーも借り主である男性も知らないまま税金が滞納された。
TikTokに投稿されていた元動画は、現在は削除されている。投稿主に連絡を取ったところ、「現在進行中で話し合いが続いているため、詳細等はお話しできません。少し事実誤認されそうな表現もあったため現在は動画を削除しております。ただ一つ言えることは、日本の物件を持つ海外居住のオーナーに対して、源泉徴収を借主がしなければならないことは、現状周知されておりません。仲介業者の説明義務が明記されていないことは問題だと思います」とコメントした。
はたして、こうした事態は起こりうるのか。ファイナンシャルプランナーの坂井武さんが、こう解説する。
「税金は、税金の負担者と納税義務者が異なるケースがあります。
身近なところでは、銀行の利子や株式の配当です。銀行が利息を払うとき、利息から税金を源泉徴収(天引き)し、預金者には税引後の金額を支払います。源泉徴収した税金ぶんは、銀行が納税します。ここでは、税金の負担者は預金者ですが、納税するのは銀行ということになります。
手間を避ける意味合いや、納税しない預金者も想定されるので、金融機関が税金ぶんを源泉徴収して納めるわけです。
今回、動画を投稿した男性は、中国在住の中国人オーナーが日本国内に持っている不動産を借りたという話です。日本に住む男性が支払った家賃に関して、中国在住のオーナーは不動産所得が発生したとして日本で納税義務が生じます。
ただし、オーナーが中国在住だと日本での納税が難しいことや納税しない場合もあるので、日本在住の借り主側がオーナーに代わって納税することになっています。
納税の仕方としては、オーナーの負担する税金20.42%を、借り主側が、支払う家賃から源泉徴収してそれを納税するというもので、法律で決められています。つまり、税金の負担者は中国人オーナーですが、納税義務者は借り主側になります。
当然、借り主側が中国人オーナーに支払う家賃は税引後の金額です。仮に契約上の家賃が100万円だとしても、実際に支払う家賃は、税率20.42%の20万4200円を差し引いた79万5800円となります。
しかし、今回の動画の男性のように源泉徴収義務を知らず、家賃100万円全額をオーナーに支払った場合はどうなるのか。日本の税務署からは、借り主側に納税請求がくるので、借り主側は税金の二重払いになってしまいます。この場合、中国人オーナーに、払いすぎた家賃の返還請求をする流れになります。
なお、外国人がオーナーの不動産でも、用途が居住用の場合は、借り主側に源泉徴収義務はありません。店舗併用住宅の場合は、家賃を店舗部分と居住用部分とに分けて、店舗部分の家賃に関しては源泉徴収する義務が発生します」
似たような話として、日本人がアメリカに土地や不動産を保有し、それを売却する場合があるという。このケースでは、代金を受け取る側になるが、その際の受取額も売却金額ではなく、売却価格から税金を差し引いた金額になる。
「今回の動画投稿もそうですが、問題になるのが、借りるときに仲介業者から源泉徴収の説明を受けているかどうかと、仲介業者にその説明義務があるかどうかです。
今回のような特殊な納税義務については、重要事項として詳しく明記されていないようです。だとすると、道義的には説明が必要であっても、最終的には自己責任となることも考えられるでしょう」(坂井さん)
近年、日本各地の不動産を、海外の人が購入するケースが増えている。似たような混乱が、今後、頻発するのではないか。