この記事をまとめると

■高速道路の一部で最高速度が引き上げられて時速120kmとなった

■高速道路の最低速度は時速50kmだから速度差が最大で時速70kmあることになる

■高速道路では速度の如何にかかわらず速度差があることを前提に安全運転を心がけることが重要だ

最高速度120km/h時代の運転の仕方

 新東名高速道路や東北自動車道の一部で、最高速度が時速120kmの区間がある。速度規制は一般道を含めそのように最高速度の制限が意識されるが、高速道路や自動車専用道路では、最低速度の規定もある。高速道路では道路交通法で時速50kmと定められている。

 これまで、最高速度が時速100kmであったり80kmであったりしたとき、その速度差は時速50kmや時速30kmだったが、時速120kmの区間では時速70kmに広がる。このため、速度差の大きさがかえって危険ではないかとの考えもあるようだ。

 しかし、交通とは、高速道路に限らず一般道でも速度差が起こり得るため、そこを認識して運転することが重要だ。

 時速120kmで走行できる高速道路区間でも、そこを走るクルマ(乗用車)すべてが最新の性能だというわけではない。また、法定点検は義務として定められ、走り出す前の始業点検も求められているが、走行しはじめてから調子が落ちてしまうということもないとはいえず、最高速度規制が高くなったから最低速度も高め、速度差を縮めたほうがいいと短絡的に考える訳にはいかない。

 もし、それをいうのなら、ドイツのアウトバーンはあり得ないことになる。速度無制限区間では、たとえ時速100kmで走っていても、時速200km以上で追い越していくクルマが当然のようにある。

 また、長距離トラックは、日本と同じように時速80kmで走っている。さまざまな運転技量、さまざまなクルマが走る道路では、速度差があることを前提に安全運転を心がけることが求められる。

まばたきしてる間に車間は20mも縮まる

 その速度差を、ではどう意識すればいいのか。

 たとえば、目のまばたきは、0.1秒前後だといわれている。瞬きをしている間は、短時間とはいえ目をつぶっているのだ。時速120kmで走っているとき、1回の瞬きで約3.3m先へ進むことになる。時速50kmでは、約1.3mだ。一瞬の出来事の間に、これだけ移動距離が違う。

 より高速で走っているときの瞬きひとつで、前を走るクルマの速度が遅ければ、追突してしまいかねない懸念がある。したがって、時速50kmのクルマの進み具合は3分の1ほどゆっくりで、逆にこちらは3倍近く先へ進んで行ってしまうことを常に意識し、運転する必要がある。

 ちなみに、アウトバーンをもし時速200kmで走っていたら、瞬きする間に5.5mも先へ行ってしまうことになるから、それくらい遠くの先読みをして運転しなければ安全を保障できないということだ。

 新車はどんどん高性能になり、アクセルペダルひと踏みで簡単に速度が上がり、同時にその速度をあまり意識させないほど操縦安定性が向上している。その一方で、少し前の年式というだけでなく、旧車のようなクルマも高速道路を走っている。クルマの性能という点においても、安全に安定して走れる速度が異なる交通環境に我々はいるのだ。それを一方的に、制限速度の最高速度が高くなったら最低速度も上げるべきとする考えは、短絡的だと思う。

 安全は、単に速度の高低だけでなく、運転者の自覚こそが大切だ。