2023年3月にサンフランシスコで開催されるゲーム開発者の国際会議「Game Developers Conference(GDC)」に先駆けて、年次調査の結果が発表されました。調査の質問内容はメタバース、VR・AR、ブロックチェーン技術、ハラスメントなど多岐にわたっています。

GDC 2023 State of the Game Industry: Devs Weigh in on the Metaverse, Player Toxicity, and More | News | GDC | Game Developers Conference

https://gdconf.com/news/gdc-2023-state-game-industry-devs-weigh-metaverse-player-toxicity-and-more



Can M&A be a positive force in the game industry? Devs aren't sold

https://www.gamedeveloper.com/business/can-m-a-be-a-positive-force-in-the-game-industry-devs-aren-t-convinced

調査に応じたのはゲーム開発者やゲーム専門家2300名以上で、回答者のゲーム開発従事期間は1年未満が4%、1〜2年が11%、3〜5年が19%、6〜10年が23%、11年〜15年が15%、16年〜20年が10%、21年〜25年が7%、26〜30年が3%、30年以上が3%。このほか、開発に携わったことがないという回答者が5%含まれています。

「どういった職種ですか?」という複数回答可能な質問に対しての回答は、最多がゲームデザイナーで37%、プログラマーやエンジニアが35%、プロデューサーやマネージャーが31%、経営・経理関係が21%、ビジュアル関係が21%、文筆関係が15%、広報・マーケティングが14%、オーディオ関係が12%、品質管理が10%、これらに該当しない職種が10%でした。

回答者の属する会社の規模は、インディースタジオが最多で39%、次いで大手・中堅スタジオが23%、個人事業主やフリーランスが13%となっています。

また、居住地は北米が62%、ヨーロッパが23%、アジアが8%、南米が3%、オセアニアが2%、アフリカが1%です。

現在開発中のプロジェクトのプラットフォームを複数回答可能で尋ねたところ、最多はPCで65%でした。続いてPS5が33%、Xbox series X/Sが30%、Androidが27%、iOSが26%、Xbox Oneが19%、Nintendo SwitchとPS4がそれぞれ18%でした。ほか、VRヘッドセット向けが12%、AR端末向けが4%、2023年1月18日をもってサービスを終了したGoogle Stadia向けという回答も1%ありました。



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次に開発する予定のプロジェクトのプラットフォームについての質問でも、最多回答はPCで57%。以下、PS5が33%、Xbox Series X/Sが28%、Androidが25%、iOSが24%と上位5つに変動はありませんでした。Nintendo Switchは19%でした。

開発者として関心があるプラットフォームも、上位はPC(64%)、PS5(46%)でしたが、3番手にはNintendo Switch(35%)が入りました。また、VRヘッドセットが23%、AR端末が12%と、実際に開発中の回答より数字を伸ばし、「開発者としては興味を持っている人が多い」という傾向を見せました。



ビジネスに関する質問では、利用しているビジネスモデル(複数回答可能)として、1位が有料ダウンロード(50%)、2位が無料ダウンロード(36%)で、以下、有料DLC・アップデート(25%)、有料アイテム(23%)、無料DLC・アップデート(21%)、有料ゲーム通貨(19%)と続きました。月額サブスクリプションモデルは9%で、ほかにブロックチェーン技術によるマネタイズという回答が4%みられました。

ゲーム業界関係者が興味を持っているVR・ARプラットフォームは、1位のMeta Quest(39%)と2位のPlayStation VR2(35%)が僅差。以下、Valve index(24%)、MetaのProject Cambria(19%)、HTC VIVE(19%)と続いています。

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最近のゲーム業界では「メタバース」が話題といえますが、調査で「メタバースを実現するために最も適している企業・プラットフォームはどこですか?」という質問に対しては、Epic Game・フォートナイト(14%)がMeta・Horizon Worlds(7%)やMicrosoft・マインクラフト(7%)の回答数を上回りましたが、最多は「メタバースのコンセプトは約束を果たすことができない」の45%でした。この回答数は同じ質問を2022年に行ったときの33%を上回るもので、ゲーム業界の関係者がメタバースに対してかなり懐疑的な目を向けていることがわかります。



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GDCは、6つの問題点を指摘する回答を「大多数の回答を代弁したもの」として、レポートに全文掲載しています。その内容は以下のようなものです。

1:明確な定義の不足

「メタバースの約束」というものの、現状でメタバースはなにものでもなく、売ろうとしている人たちも消費者も「メタバースとはなにものか?」がわかっていません。「クラウドゲーミング」で10年前に何が起きたかを思い出してください。

2:高度なインタラクティブ性の不足

長年にわたり、ゲームは核になるゲームプレイとグラフィックの忠実性、ネットワーキングなどに力を入れてきました。しかし、高度なインタラクティブ性を構築することには焦点が当てられてきませんでした。VR業界にとって不幸なことに、VRでビッグタイトル並みの体験を提供するには、細かいインタラクティブ環境が密集した環境を実質的に求められます。

3:安価なハードウェアの不足

VRヘッドセットの価格は平均的な消費者にとっては高すぎます。

4:標準化の改善不足

ほとんどのVRゲームは特定の操作方法を念頭に置いての構築がなされていないため、ユーザーが似たようなゲームをプレイするときの障壁になっています。

5:専門家によるマネタイズ戦略の不足

VRは最も基本的なゲームですら、従来のゲームに比べて多くのエネルギーが求められます。これは、VRゲームがバトルパスやルートボックスといった高圧的なマネタイズ戦略による消耗の影響を受けやすいことを意味します。サーバーのコストやメタバースによる利益を得ようという考えは、従来のゲームに比べて非常に難しいものになるでしょう。

6:より優れたハードウェア(またはより優れた開発者)の不足

現在のハードウェアは20年前に比べて飛躍的に進化していますが、それでもなお多くの課題があります。長いロード時間、ぼやけるテキスト、ベタベタしたポリゴンなど、ハードウェアの改善か、開発者がプラットフォーム向けにゲームを最適化する能力を向上させる必要があります。VRは、文字通り「他の場所では得られない真にユニークな体験」を提供する必要があります。メタバースの可能性は、何らかの大規模なハードウェアの飛躍、つまりデジタルVRチャットルームとしてではなく、ニューラル・インターフェイスからしか生まれないでしょう。(メタバースは)利益を得ようとする企業によって新たなコンセプトで再販売されているだけで、すでに存在し、持続可能なものです。

メタバースと並んで話題になりやすいのが「ブロックチェーン技術」ですが、こちらもスタジオとしては興味を持っていないという回答が75%と多数で、開発者個人としても「ブロックチェーン技術には反対(56%)」「ブロックチェーン技術に賛成だったが反対に転じた(5%)」と否定的な回答が肯定的回答を上回りました。

なお、技術関連だけではなく、労働環境に関する質問も行われています。これによると、過去1年間の週あたりの労働時間は0〜20時間が15%、21〜25時間が6%、26〜30時間が7%、31〜35時間が7%、36〜40時間が29%、41〜45時間が18%、46〜50時間が10%、51〜55時間が4%、56〜60時間が2%、60時間以上が4%でした。週60時間以上は、5日勤務だと1日12時間以上、週7日勤務でも1日9時間強に相当します。



1日8時間勤務を5日間行うと40時間に達しますが、それ以上の勤務時間になった理由についての回答では「自分からの圧力(自分が必要だと思ったから)」が74%。ほか、「勤務時間が長すぎるとは思わない」が36%、「経営陣からの圧力(それだけの勤務時間が必要であることが明確だった)」が14%、「周囲からの圧力(他の全員がその時間に働いていた)」が11%、「わからない、ただやっただけ」が9%でした。

転職については「もう転職した」が16%、「転職を考えている」が36%、「考えていない・無回答」が48%。転職理由は「給与・報酬」が81%、「企業文化」が67%、「特定のプロジェクトまたは事業」と「ワークライフバランス」が56%、「リモートワークに関する方針」が55%、「福利厚生」が54%、「役職」が40%、「所在地」が39%、「労働時間・休日」が34%、「進路やキャリアパスの変化」が25%。

ハラスメントについても質問項目があり、「迷惑系プレイヤーやハラスメントはゲーム業界の大きな問題だと思いますか?」という質問に対しては、「とても深刻な問題だと思う(42%)」「深刻な問題だと思う(36%)」が合計で78%、問題視はしつつもささいな問題だという回答が13%、問題ではないという回答が4%でした。

プロジェクト参加中にプレイヤーコミュニティから嫌がらせを受けた経験は、「自分自身が直接受けた」が11%、「同僚やチームが受けた」が19%、「自分も同僚・チームも受けた」が10%、「ない」が54%でした。