「大腸ポリープ」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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大腸ポリープは粘膜層にできるイボのような突起をいいます。ポリープの大きさはさまざまで種類も多く、種類によってはがん化のおそれもある腫瘤です。

大腸ポリープの多くは無症状で、早期発見のためにはがん検診などで大腸内視鏡検査を受けることが必要です。

検査によって大腸ポリープのがん化リスクや大腸がんでの死亡率の低下が期待できます。

そこで今回は大腸ポリープについて解説します。治療・手術方法・大腸ポリープを放置することのリスクについても紹介しているので参考にしてください。

大腸ポリープ とはどんな病気?

大腸ポリープはどのような症状がみられる病気ですか?

大腸ポリープにはほとんど自覚症状がありません。特に小さなポリープの場合は症状がないためポリープ自体の発見が遅れることが多いです。
大腸ポリープは直腸やS状結腸にできやすいため、肛門の近くにポリープができるとまれに血便や粘液の混ざった便が出ます。ときにはポリープが肛門を塞いだり肛門から飛び出したりします。

大腸ポリープにも種類があると聞いたのですが…

大腸ポリープは組織により腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられ、さらに腫瘍性ポリープは悪性腫瘍・良性腫瘍に分けられます。そして非腫瘍性ポリープは炎症性ポリープ・過形成ポリープ・過誤腫性ポリープ・その他のポリープに分類されます。
このうち悪性腫瘍化(がん化)するのは腫瘍性ポリープのうちの良性腫瘍(腺腫)です。非腫瘍性ポリープは、ほぼがん化する心配のないポリープといえるでしょう。
炎症性ポリープは腸に炎症を起こす病気が原因で発症し、過形成ポリープは加齢が原因、過誤腫性ポリープは粘膜の過剰発育が原因になり発症します。

大腸ポリープを発症した場合にみられる兆候があれば教えて下さい。

大腸ポリープは自覚症状がないことが多く、これといった兆候もないケースが多いです。ただ肛門近くにポリープができると、便に血液が混ざったり粘液が混ざったりする場合もあります。
家族や血縁者に大腸ポリープや大腸がんに罹った方がいる場合には、早めに検査する方がよいでしょう。

大腸ポリープは何が原因で発症することが多いですか?

大腸ポリープのうち、腫瘍性ポリープは主に次のようなことが原因となって発症することが多いです。

遺伝

生活習慣

年齢

大腸ポリープや大腸がんは遺伝的な要素が大きな原因としてあげられるため、家族や血縁者に発症者がいる場合は注意が必要です。特に遺伝性大腸がん・家族性大腸腺腫症・リンチ症候群などは遺伝が大きく関わってくるので、早期の検査が重要です。
また高カロリー食などの食生活・過度な飲酒・喫煙など生活習慣も大きく関わります。肥満なども原因の1つとなりがちなので、日頃から気をつける必要があるでしょう。
大腸ポリープの発症は40歳過ぎから多くなり高齢になるほど発症しやすくなります。定期的な検査(大腸がん検査など)を受けるようにしてください。また非腫瘍性ポリープでは潰瘍性大腸炎・クローン病などが原因で発症する炎症性ポリープ、加齢が原因の過形成ポリープなどがあります。
子どもや若年層がかかりやすい過誤腫性ポリープは組織の異常からできるポリープで、大腸がんに変化することはまずありません。

大腸ポリープのリスクや検査方法

大腸ポリープに気づかず放置してしまうとどうなるのでしょうか?

大腸ポリープのうち非腫瘍性ポリープはがん化することのないポリープのため、放置してもほとんど問題ありません。ただしがん化の心配がある腫瘍性ポリープは早期の検査によって発見し、処置する必要があります。
腫瘍性ポリープの約80%は良性腫瘍で腺腫と呼ばれていますが、この腺腫を放置してしまうとがんに変化してしまうリスクが高いです。無症状のことが多い大腸ポリープなので、定期的に検査をして早期発見を目指すことが必要です。

大腸ポリープは大体何歳くらいの方が発症することが多いですか?

大腸ポリープは40代になると約半数が発症し、50歳以上になるとより多く発症するといわれます。30代から定期的に大腸がんの検査をするとよいでしょう。
ただ若年層に大腸ポリープが認められることもあるので、特に家族に大腸ポリープやがんの診断を受けた方がいる場合には注意してください。

大腸がんとの違いが知りたいです。

大腸ポリープには種類があり、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分かれます。大腸がんもしくは大腸がん化する可能性があるのは腫瘍性ポリープです。腫瘍性ポリープはさらに悪性腫瘍(大腸がん)と良性腫瘍(腺腫)に分かれます。
腺腫は良性の腫瘍ですが、がん化する可能性の高いポリープといえます。一般的に大腸ポリープといわれるのは良性腫瘍(腺腫)や非腫瘍性ポリープの過形成ポリープが多いです。過形成ポリープはがん化することのない大腸ポリープです。
大腸がんは良性腫瘍(腺腫)が悪性化した場合と原発的に悪性腫瘍となる場合があり、腺腫のうちにポリープを切除することで大腸がんを防げます。悪性腫瘍はすでに大腸がんになっている状態ですが、ポリープ状の場合はまだ初期段階のことが多いです。

大腸ポリープではどのような検査をしますか?

大腸ポリープが疑われる場合には次のような検査を行います。

便潜血検査

大腸内視鏡検査

大腸CT検査

大腸カプセル内視鏡検査

便に血液が混ざっていないか検査するのが便潜血検査です。便潜血検査にて2回のうち1度でも陽性になった場合には大腸内視鏡などでさらに詳しく検査します。
陽性を認められなくても、遺伝的要素のある方や必要とみなされた方にはさらに精密な検査を行います。大腸CT検査や大腸カプセル内視鏡検査などの検査方法がありますが、組織の採取などを実施する為には大腸内視鏡での検査が必要です。

大腸ポリープの切除法や切除後の注意事項

大腸ポリープは治療で完治するのでしょうか?

良性腫瘍やがんが粘膜だけに留まっている場合は、リンパ節への転移はないと考えられるので完治が期待できます。ただ病変が粘膜下層に達しているときには、リンパ節への転移も考慮し、必要なら追加の手術を行う場合もあります。

大腸ポリープの切除法を教えて下さい。

大腸ポリープの切除法にはポリープの大きさや形状によっていくつかの方法があります。主な方法は次のようなものです。

ポリペクトミー

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

ポリペクトミーは茎のあるポリープに用いられ、茎の部分に金属性の輪をかけて高周波電流でポリープを切除します。内視鏡的粘膜切除術(EMR)は粘膜の下に薬を注入してポリープを持ち上げて、金属性の輪で切除する治療方法です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は薬を粘膜の下に注入し、メスで少しずつ病変を剥がして切除する方法です。それぞれのポリープの大きさや形で切除方法は決められます。

大腸ポリープでは内視鏡での手術が多いと聞いたのですが…

直径6mm以上の大きさの良性腫瘍・リンパ節への転移が認められないがんは、内視鏡での切除を行うことが多いです。
粘膜の深い層まで達しているがんには外科的に切除を行うこともあります。また内視鏡で一括切除ができない場合にも、外科手術で切除が行われることが多いです。

切除後の食事で気をつけるポイントを教えてください。

大腸ポリープの切除後は、当然ですが食事にも気をつけることが重要になります。切除後3日くらいは特に注意が必要です。消化のよいヨーグルトやゼリーなど、最初は重湯のようなものから徐々に形のあるものにしていくとよいでしょう。
1週間前後で通常の食生活に戻してよいですが、コーヒーやアルコールは控えるようにしてください。消化の悪い食べ物も控える方が無難です。カレーなどの刺激物も控えましょう。無理のないように徐々に通常の食生活に戻すことが大切です。
また高脂肪な食べ物や過度なアルコール摂取を控えることが、大腸ポリープの予防にもなります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

大腸ポリープは40代過ぎの方の約半数に発症するといわれています。非腫瘍性ポリープはがん化しないポリープですが、腫瘍性ポリープは放置するとがん化するポリープです。
自覚症状がほとんどない大腸ポリープなので、気になるときや家族に大腸がんの方がいるという場合には定期的に検査することをおすすめします。

編集部まとめ


大腸ポリープは自覚症状のない疾病のため、つい放置してしまい、がん化してしまうことも多い病気です。

特に家族や血縁者に大腸がんと診断された方がいる場合には、定期的に検診を行なうことでポリープのがん化が防げます。

日頃から生活習慣を見直し、バランスのよい食事を心掛けることで大腸ポリープの発症を防げる場合もあります。

大腸ポリープは早期に切除すればがん化することなく、きれいに取り除くことが可能です。

検診でポリープの疑いがあるなら、ぜひ早めに検査して大腸がんへのリスクを回避してください。

参考文献

大腸ポリープガイドQ&A(日本消化器病学会ガイドライン)