おならが多いのは病気のサイン? 原因や対策を医師が解説
「出物腫れ物所嫌わず」とは言うものの、やはり、恥ずかしい思いを伴うのが「おなら」ですよね。その量や回数が多いようなら、何かしらの対策を講じたいもの。そこで、なかなか聞く機会のないおならの話を、「しらはた胃腸肛門クリニック横浜」の白畑先生に解説していただきました。
監修医師:
白畑 敦(しらはた胃腸肛門クリニック横浜 院長)
昭和大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院や山王台病院、横浜旭中央総合病院などの勤務を経た2017年、横浜市内に「しらはた胃腸肛門クリニック横浜」を開院。消化器に関することならなんでも相談できる、話しやすいクリニックを心がけている。医学博士。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医、日本大腸肛門病学会専門医ほか資格多数。
おならが出る理由と注意したいこと
編集部
おならは通常、1日に何回くらいするものなのでしょうか?
白畑先生
食生活や体調によってもまちまちで、一概に決まっているものではありません。例えば、食物繊維の多い食事をしていると大便の量が増え、おならの回数も多くなります。この場合、体にとっては“いい”ことなので、気にする必要はないでしょう。
編集部
おならが多くても、それをもって“悪いこと”とは言えないと?
白畑先生
いえいえ、そうでもありません。おならの回数は、大腸内に便がたまっていると多くなります。もし、便秘によっておならが頻発しているようなら、改善すべきでしょう。便秘の原因として考えられるのは、肉類の多い食事、ストレス、特定疾患などです。
編集部
おならが増えるような特定疾患もあるのですか?
白畑先生
はい。症例として多いのは、自律神経の障害によって発症する「過敏性腸症候群(IBS)」です。便秘や便の形の異常が数カ月間続いたり、おなかがゴロゴロする症状を伴ったりします。
編集部
そうなると、おならの回数よりも、便秘に気をつけたほうが良さそうですね?
白畑先生
そうですね。ただし、注意したいのは、食物繊維の取りすぎが腸に悪影響を与えかねないことです。実際に、下痢や大腸がんのリスクを上げることが知られています。何ごとにも、ほどほどがいいようです。
編集部
えっ! 食物繊維の食べすぎは良くないのですか?
白畑先生
食物繊維は、ある種の「刺激物」といえます。腸の働きを活発にする一方、度がすぎると悪影響になりかねません。もし、便秘やおならでお悩みなら、もっと視野を広く持っていただきたいですね。食物繊維の含まれるサプリなどに頼りきるのではなく、ストレスの軽減や生活習慣の改善などもあわせて、全方向的に改善していきましょう。
おならの正体は?
編集部
そもそも、おならの正体は何ですか?
白畑先生
腸内細菌が出すガスです。小腸の下部や大腸の中には生きた腸内細菌がいて、食べ物の残りかすを分解し、ガスを発生させるのです。このうち、食物繊維が分解されて出るガスは主にメタンで、あまり臭いません。他方で、肉類などが分解されると、アンモニアや硫化水素といった臭いの強いガスを発生させます。
編集部
食べるときにのみこんだ空気はどうなのでしょう?
白畑先生
おならとは関係ないと思います。のみこんだ空気は軽いですから、食道や胃の上部へたまり、ゲップとして排出されます。こうした空気が小腸や大腸に回っていくとは、考えづらいです。
編集部
胃がゴロゴロしているときなど、空気のような感覚を覚えますが?
白畑先生
空気の音ではなく、腸や食べ物の音です。胃や腸のぜん動運動が正しくおこなわれないと、いわゆる「ゴロゴロ」した音を伴います。先ほど申し上げた「過敏性腸症候群(IBS)」の典型症状です。
おならの解決策・整腸の方法
編集部
自分でできる整腸の方法はありますか?
白畑先生
①お通じを我慢しない、②水分をしっかり補給する、③適度な運動を取り入れる、④食物繊維を適量に取るなどです。また、乳酸菌の含まれるヨーグルトを食べるのも効果的です。善玉菌を増やしてくれるので、腸が元気になります。
編集部
それぞれの「量の目安」があったら教えてください。
白畑先生
一概になんとも言えないですね。先ほども話した通り、「多ければいい」というものでもありません。運動だけをしていれば改善されるという話でもないでしょう。問われるのは「量より質」です。いくつもの努力を地道に積み重ねていってください。
編集部
「これだけやればOK」みたいな、単純な答えはないと?
白畑先生
おそらく、一般に言われている説のそれぞれは、効果が望めるのでしょう。たしかに、水分を多く取れば、硬い便が軟らかくなります。しかし、水を飲んでいれば便秘が解決するかというと、人それぞれですよね。安易な論調には注意が必要だと思います。
編集部
おならの悩みでも、医院を受診していいのですか?
白畑先生
もちろんです。ただし、繰り返しになりますが、「一つの要因を解決すれば治る」というものではありません。ある程度の時間と、全方向的なケアが求められます。このため、転院を繰り返される方がいらっしゃるんですね。そして、自分の気に入った答えを出してくれる医院に落ち着く傾向が見られます。
編集部
それは危険なことなのですか?
白畑先生
治ればいいですけど、高額な治療を強いられた結果、何の効果も出ないとしたら問題です。私個人としては、「治る」ということ自体に懐疑的です。腸の状態には波があり、それは食べ物や生活習慣、自律神経の状態などで左右されます。「不調」が全くないヒトなんて、はたしているのでしょうか。
編集部
おならで悩んでいる人は、どうすればいいのでしょう?
白畑先生
おならの量は人それぞれなので、あまり指標には向いていません。それより、「理想的な形の便」を指標にしてはいかがでしょうか。「理想的な形の便」とは、バナナのような大きさと柔らかさのことを指します。バナナ便になったということは、腸が元気になったということ。自然と、お悩みの多くが片付いているはずです。バナナ便が出せるよう、医師と一緒に、お薬の使い方や生活面の見直しなどを考えていきましょう。
編集部まとめ
どうやらおならは、大腸内にたまった食べ物の残りかすから発生するようです。したがって、便秘が最大の敵ということになります。ただし、便秘には、さまざまな要因や日々の生活が関わっています。ときには良く眠り、ときには運動するなど、日々ごとのアレンジが求められるでしょう。その日の状況に応じてバナナ便が出せるよう、医師の指導の下、整腸力をみがいてはいかがでしょうか。