知って納得、ケータイ業界の″なぜ″ 第133回 2024年1月末に迫るソフトバンクの3Gサービス終了、再び業界に混乱が起きる懸念も
2024年1月31日にソフトバンクの3Gサービス終了が控えることで、2023年は再び3Gからの巻き取りを巡る各社の競争施策が盛り上がる可能性が高い。だがこれまでの動向を見ていると、3Gの終了を巡るショップや行政での対応が混乱を巻き起こす可能性が少なからずあり、大いに懸念される所だ。
○誤解を招きかねない「ガラケー終了」の再来
かつて主流だった通信規格「3G」は、2つ先の世代「5G」の普及が進みつつあることから終了に向けた動きが着実に進められている。実際、2022年3月31日をもってKDDIの3G携帯電話サービスが終了したことは記憶に新しいことだろう。
一方、元々3Gによるサービスを提供していない楽天モバイルを除けば、他の2社は現在も3Gによるサービスを継続しているのだが、それらの終了時期も間近に迫っている。中でも終了が近づいているのがソフトバンクで、同社は2024年1月31日をもって3Gのサービスを終了させることを明らかにしている。
そうしたことから2023年は、ソフトバンクの3Gユーザーを4Gや5Gなどに移行させる、いわゆる「巻き取り」が従来以上に加速することが考えられる。ソフトバンクが既存の3Gユーザーを巻き取るというのは当然だが、他の3社がソフトバンクの3Gユーザーを狙って自社に乗り換えさせる取り組みも増えることが予想される。
実際KDDIが3Gサービスを終了させる際には、競合各社のショップ店頭で「auのガラケーが終了します」と強調したポスターを貼り、KDDIの3Gユーザーを自社サービスに乗り換えさせようという施策が多く見られた。ただその手法が少なからず消費者に混乱を生み出してしまったことも忘れてはならない。
KDDIの3Gサービス終了直前には、競合他社がKDDIの3Gユーザー獲得のため、auの「ガラケー終了」ということを強調したポスターを多数貼り出していた
3Gが終了すれば従来型の携帯電話(いわゆる“ガラケー”)だけでなく、「iPhone 3G」など初期のスマートフォンなども利用できなくなってしまう一方、4Gに対応しており3Gが終了しても利用できる従来型の携帯電話も存在する。それゆえ「3Gの終了」が「ガラケーの終了」とイコールではないのだが、そのような表現が市場に蔓延したことで、「従来型の携帯電話が全て使えなくなってしまうのでは?」と消費者に誤解や混乱を与えた側面も大きかった。
4G対応の従来型携帯電話は現在も継続的に機種が投入されており、NTTドコモの京セラ製「DIGNOケータイ KY-42C」は2023年3月以降の発売予定だ
現在も3Gサービスを利用している人は長年機種変更をしていない高齢者が多く、従来型携帯電話の利用が多い傾向にあることからこのようなアピールがなされたものと考えられる。だが先にも触れた通り、3Gと従来型携帯電話は必ずしも一致するものではない。混乱を起こさないためにも適切な表現が求められる所だろう。
○3G終了後の値引きは不可、総務省の指導も混乱の元に
そしてもう1つ、3Gからの巻き取り動向を見据える上で懸念される出来事が、2022年末に起きている。それは総務省が2022年12月16日、KDDIに対して不適切な端末代金の値引きの適正化に関する行政指導を実施したことだ。
これは電気通信事業法で設けられている、3Gなど古い通信サービスの利用者に対する端末値引きの例外措置を巡るもの。電気通信事業法では通常、通信の契約に紐づいた端末の値引きは税抜きで2万円までと規制されているが、古い通信方式のサービス契約者が新しい通信方式に移行するため端末を買い替える際は、例外として0円未満とならない形で2万円を超える割引が認められている。
そしてなぜKDDIが行政指導を受けたのかというと、3Gのサービスが終了した2022年4月1日から5月12日までの間、終了まで3Gサービスを契約していた7473件に対して、例外措置と同様に2万円を超える端末の値引きを実施していたため。3Gのサービスが終了した後は全てのユーザーが4Gや5Gに移行していることから、端末値引きの例外の対象にはならないのでKDDIの対応には問題があるとし、行政指導を実施するに至ったようだ。
電気通信事業法では、新規受付が終了した古い通信方式から新しい通信方式へ移行する際の端末購入には端末値引きの例外が適用されるが、それは古い通信方式のサービス終了までに限られている
だが料金プラン自体は4Gが利用できるものに移行していたとしても、端末は3Gから買い替えておらず、3Gサービス終了後使えなくなったことに気付いて端末を買い替ようとするケースも考えられるだろう。そうしたユーザーに対して、既に3Gが終了したから端末値引きはできないと突っぱねるのは酷な話であり、KDDIの対応は妥当であるように思える。
一方で、総務省は端末の大幅値引きを撲滅したい思いがあまりに強く、値引きを巡る対応が硬直化しているのが現状だ。2021年半ば頃から急増した「1円スマホ」の問題もありその傾向は一層強まっているように感じるが、柔軟性に欠いた値引き規制が5Gの普及遅れを招くなど、さまざまな問題をもたらしていることも忘れてはならない。
そしてこうした状況が改善されない以上、3Gサービス終了後に端末を買い替えようとしたら高いお金を支払う必要に迫られる……というケースがKDDIだけでなくソフトバンク、そして2026年3月31日に3Gのサービスを終了させる予定のNTTドコモでも起き得る可能性があり、現場での混乱の元となりかねない。3Gサービス終了後の値引きに柔軟な対応ができるよう、総務省には制度そのものの見直しを求めたい所だ。
○誤解を招きかねない「ガラケー終了」の再来
かつて主流だった通信規格「3G」は、2つ先の世代「5G」の普及が進みつつあることから終了に向けた動きが着実に進められている。実際、2022年3月31日をもってKDDIの3G携帯電話サービスが終了したことは記憶に新しいことだろう。
そうしたことから2023年は、ソフトバンクの3Gユーザーを4Gや5Gなどに移行させる、いわゆる「巻き取り」が従来以上に加速することが考えられる。ソフトバンクが既存の3Gユーザーを巻き取るというのは当然だが、他の3社がソフトバンクの3Gユーザーを狙って自社に乗り換えさせる取り組みも増えることが予想される。
実際KDDIが3Gサービスを終了させる際には、競合各社のショップ店頭で「auのガラケーが終了します」と強調したポスターを貼り、KDDIの3Gユーザーを自社サービスに乗り換えさせようという施策が多く見られた。ただその手法が少なからず消費者に混乱を生み出してしまったことも忘れてはならない。
KDDIの3Gサービス終了直前には、競合他社がKDDIの3Gユーザー獲得のため、auの「ガラケー終了」ということを強調したポスターを多数貼り出していた
3Gが終了すれば従来型の携帯電話(いわゆる“ガラケー”)だけでなく、「iPhone 3G」など初期のスマートフォンなども利用できなくなってしまう一方、4Gに対応しており3Gが終了しても利用できる従来型の携帯電話も存在する。それゆえ「3Gの終了」が「ガラケーの終了」とイコールではないのだが、そのような表現が市場に蔓延したことで、「従来型の携帯電話が全て使えなくなってしまうのでは?」と消費者に誤解や混乱を与えた側面も大きかった。
4G対応の従来型携帯電話は現在も継続的に機種が投入されており、NTTドコモの京セラ製「DIGNOケータイ KY-42C」は2023年3月以降の発売予定だ
現在も3Gサービスを利用している人は長年機種変更をしていない高齢者が多く、従来型携帯電話の利用が多い傾向にあることからこのようなアピールがなされたものと考えられる。だが先にも触れた通り、3Gと従来型携帯電話は必ずしも一致するものではない。混乱を起こさないためにも適切な表現が求められる所だろう。
○3G終了後の値引きは不可、総務省の指導も混乱の元に
そしてもう1つ、3Gからの巻き取り動向を見据える上で懸念される出来事が、2022年末に起きている。それは総務省が2022年12月16日、KDDIに対して不適切な端末代金の値引きの適正化に関する行政指導を実施したことだ。
これは電気通信事業法で設けられている、3Gなど古い通信サービスの利用者に対する端末値引きの例外措置を巡るもの。電気通信事業法では通常、通信の契約に紐づいた端末の値引きは税抜きで2万円までと規制されているが、古い通信方式のサービス契約者が新しい通信方式に移行するため端末を買い替える際は、例外として0円未満とならない形で2万円を超える割引が認められている。
そしてなぜKDDIが行政指導を受けたのかというと、3Gのサービスが終了した2022年4月1日から5月12日までの間、終了まで3Gサービスを契約していた7473件に対して、例外措置と同様に2万円を超える端末の値引きを実施していたため。3Gのサービスが終了した後は全てのユーザーが4Gや5Gに移行していることから、端末値引きの例外の対象にはならないのでKDDIの対応には問題があるとし、行政指導を実施するに至ったようだ。
電気通信事業法では、新規受付が終了した古い通信方式から新しい通信方式へ移行する際の端末購入には端末値引きの例外が適用されるが、それは古い通信方式のサービス終了までに限られている
だが料金プラン自体は4Gが利用できるものに移行していたとしても、端末は3Gから買い替えておらず、3Gサービス終了後使えなくなったことに気付いて端末を買い替ようとするケースも考えられるだろう。そうしたユーザーに対して、既に3Gが終了したから端末値引きはできないと突っぱねるのは酷な話であり、KDDIの対応は妥当であるように思える。
一方で、総務省は端末の大幅値引きを撲滅したい思いがあまりに強く、値引きを巡る対応が硬直化しているのが現状だ。2021年半ば頃から急増した「1円スマホ」の問題もありその傾向は一層強まっているように感じるが、柔軟性に欠いた値引き規制が5Gの普及遅れを招くなど、さまざまな問題をもたらしていることも忘れてはならない。
そしてこうした状況が改善されない以上、3Gサービス終了後に端末を買い替えようとしたら高いお金を支払う必要に迫られる……というケースがKDDIだけでなくソフトバンク、そして2026年3月31日に3Gのサービスを終了させる予定のNTTドコモでも起き得る可能性があり、現場での混乱の元となりかねない。3Gサービス終了後の値引きに柔軟な対応ができるよう、総務省には制度そのものの見直しを求めたい所だ。