今さら聞けないヨガの効果。カラダ以上にココロを整えてくれる
ヨガスタジオはもちろん、自宅でも気軽に楽しめることから女性に人気のヨガ。健康に良い、ダイエット効果がある、またストレス解消に役立つと言われていますが、その効果について詳しく知っている人は少ないのでは?
今回は数多くのメディアに出演しているヨガインストラクターの漆原真理さんに、今さら聞けないヨガの効果について教えていただきました。これからヨガを始めたいと思っている人は必見です。
ヨガインストラクター
漆原真理さん
商社勤務時代にヨガを始める。疲れが抜けない毎日から自分が楽になったことに魅了され、インドで生活全体を通したヨガを学ぶ。現在は都内スタジオやプライベートクラスのほか、インストラクター養成講座の講師も務める。ヨガのほか、基礎医学や解剖学にも精通し、パーソナルトレーナーとしてのアプローチも視野に、日々学び、自らの実践も大切にしている。穏やかで心地の良い声、丁寧なガイドでインナーから効かせるクラスが好評。
そもそも「ヨガ」って何?
「ヨガ」という言葉は、サンスクリット語の「つながり」を意味する「ユジュ」が語源です。「調和」「統一」「バランス」との意味もあり、体・心・呼吸・食べ物など、ヨガはあらゆるカテゴリーと関係しています。
現代ではエクササイズ的な要素がクローズアップされがちですが、もともとは瞑想や、幸せに生きるための哲学に起源を持ちます。ヨガの呼吸法やポーズ(アーサナ)は、瞑想を深める手段として発展してきました。健康的で充実した生活を送るためのツールとして、現在も新しいジャンルのヨガが次々と生まれています。
ヨガにおいては、心と体は切り離せないもの、つながっているものとして捉えられています。身心を調和させることで、体は健やかで、心は穏やかな状態となり、ヨガを続けることで心を鍛える効果も期待できます。
具体的には、ポーズで体の歪みが矯正され、やがて柔軟性など目に見える変化が現れます。そこにゆったりした呼吸や瞑想を組み合わせることで、リラックスした精神状態を作り出すことができます。
さらに、ヨガは続けることで蓄積した体の歪みが解消し、自分の骨格に合った美しいプロポーションを手に入れることも可能です。活力に満ちてポジティブな体になり、穏やかな気持ちを得られることがヨガの特徴と言えます。
ヨガにはどんな効果がある?
フィジカル面での効果としては、むくみや冷えの解消、免疫力アップ、血流改善でホルモンバランスが整うとされています。
また、柔軟性向上、体幹強化、姿勢改善、スタイルアップ効果も期待できます。このほか、緊張した筋肉を弛緩させることで肉体疲労回復効果があり、副次的にダイエットにも役立つと言われます。
一方のメンタル面での効果としては、ストレスが軽減され、大きなリラックス効果が得られます。これにより、感情をコントロールしやすくなるため、人間関係の改善などにつながります。
気持ちが穏やかになるので、日常的に小さな幸せを感じる機会も増えると思います。ヨガをする習慣があると、セロトニン(幸福ホルモン)の値が高くなることが証明されているんですよ。
ヨガを習慣として続けることで、慢性的な疲労や倦怠感、肩こり、頭痛、腰痛、不眠症、全身のだるさ、冷え性などの不調も整えられます。
なんとなくの不調や症状が一向に改善されず、悩んでいる方も多いと思います。病院に行っても「ストレスが原因」と診断され、処方された薬を飲んでも解消しないケースもあります。
そういったストレスが関係するさまざまな体の不調や症状は、自律神経と関係していて、ヨガはその自律神経に働きかけることで、それらの不調を改善する効果があります。
ヨガは痩せるって聞くけど本当?
これはYesともNoとも言えます。減量を指すダイエットであれば、基本的に基礎代謝を上げて消費カロリーを多くし、一方で食べる量も減らさなければ成功しません。ヨガの運動量は、ほかのエクササイズと比較すると、残念ながらそれほどは多いものではないので、ヨガだけでは痩せるのは難しいということです。
しかし、ヨガを長く実践している人を見ると、脂肪が少なく引き締まった体の男性や、スタイルの良い女性が多いといった印象がありませんか?
上述の通り、ヨガは消費カロリーの増大にはつながりませんが、摂取カロリーを減らす意識の変化に期待できます。
ヨガを日々実践していくと、自分の体に対して敏感になります。自分の体を心地良く保つために、食事に対しても何を食べるか、いつ食べるかなど、自然と食事に対するリテラシーが身に付くため、結果としてダイエット効果につながると言えます。私もヨガを始めてから、ストレスで過食するということは少なくなりました。
お腹が空いていないのに食べてしまう過食は、代替行為とみられており、本当は食べ物に執着しているのではなく、ほかの何らかの欲求やストレスを解消するために、無意識に食べることで解決策を求めてしまうというものです。
ヨガはストレス低減効果があると科学的に実証されていますので、リラックスした状態を自ら作り出せるとともに、ストレス低減により代替欲求の発生そのものを抑えることができるんです。
どれくらい続けると効果が実感できる?
柔軟性などの身体的変化は3ヶ月~1年くらいで効果が出やすく、ストレス軽減などの精神面はもっと早く効果が現れると思います。心が落ち着くなど、1回のヨガで影響が出ることもあるんです。
ヨガのポーズは難しそうと思われる方もいらっしゃると思いますが、続けていれば必ずできるようになります。もともと柔軟性のある方は最初からきれいなポーズがとれますが、それは筋肉の使い方などを意識せず、ただポーズがとれているだけという場合も。
むしろ体が硬い方のほうが、体の変化が大きく、続けることでヨガの効果を実感できるのではないでしょうか。最初は大変かもしれませんが、きっとハマると思いますよ。
週に1回でも良いので、ヨガは続けることが大事。継続することで効果をしっかり得ることができます。そのうち体に変化が現れてくると、毎日ヨガをしたくなるはずです。
朝や寝る前にヨガをするイメージがあるのはなぜ?
ヨガの効果を得やすいのが朝と夜。ヨガは行う時間やタイミングによって体にさまざまな効果を与えてくれますが、朝と夜は特に効率的なのでおすすめです。
一日の始まりとお休み前では、自分の体をどのような状態に整えたいのか、明確にゴールが違いますよね。朝であれば、一日を元気に過ごせるように体を目覚めさせていくことが目的になり、逆に夜であれば自律神経を整え、質の高い睡眠に入れるように体を休めていくことが目的となります。
本来、自律神経の切り替えは自然に行われるものなのですが、常に刺激にさらされている私たちは、その切り替えスイッチがうまく働かないことが多いです。
そこで、朝のヨガでは、交感神経を優位にするような呼吸法やポーズを通して日中を活動的に過ごすことが可能となります。起き抜けは体温が低い状態にあり、朝から体を動かして体温を上げることで、スイッチが切り換えやすくなるんです。
夜のヨガは副交感神経への切り替えに効果的。起きている間は交感神経が優位に働いていて興奮状態が続いています。この状態のままでいると、なかなか寝付けなかったり睡眠の質が悪くなったりするため、疲れが抜けないと感じてしまいます。
夜のヨガではゆったりとした呼吸法とストレッチ効果の高いポーズを通してリラックスし、質の良い睡眠に導くことで、すっきりした翌朝が迎えられます。
ヨガが多くの女性に支持されている理由とは?
日本ではホットヨガや女性専用スタジオも多く、ダイエットや美容効果の魅力がクローズアップされがちなので、女性的なイメージがあります。しかし、本来ヨガは男性のための修行として生まれました。
実際にヨガを学びに渡印した先では、インドのヨガの先生はほぼ男性でした。現地で勉強するための学校ではさまざまな国から参加者が集まりましたが、男女比は半々くらい。アメリカやヨーロッパでヨガをしている人の男女比も半々くらいで、特にヨガは女性のものというイメージは少ないようです。
日本では女性に人気があるというイメージがまだまだ強いためか、足を運びにくい男性も多いかもしれませんが、実はハイプレッシャー下に置かれることの多い男性にこそヨガをおすすめしたいですね。
筋肉に負荷を与えるストレングストレーニングやエクササイズを行っている男性は多いですが、ヨガは筋肥大を目的とした筋トレとは異なり、ポーズを自重負荷でゆったり行うことで、効率的に体幹やインナーマッスルを鍛えることができます。
ヨガのポーズは脊柱を基本として、肩甲骨、骨盤など身体能力を決定付ける体の要素に対し、ストレッチがかかることでしなやかさが生まれます。筋肉の質や関節の機能性が改善されると、普段の体の調子が良く感じるだけでなく、何かスポーツに取り組まれている方であれば、よりパフォーマンスアップにつながることが期待できます。
また、ヨガのゆったりとした呼吸には、セロトニンを活性化させ自律神経のバランスを整える効果があり、呼吸の仕方をコントロールすることで、意識的にリラックス状態を作り出すこともできるようになります。
特に男性は、生活の中で勝負する機会が多いと思います。仕事や勝負に備えるために、意識的に自分を奮い立たせることも必要ですし、勝負が終わった後にリラックス状態に自分を持っていくことも大事です。こういった心のセルフマネジメントができるようになると仕事の効率もアップします。
深く考えないで気軽にヨガを始めてみよう!
漆原さんによるヨガの解説はいかがでしたか。ダイエットや健康促進といった効果以上に、気持ちが穏やかになる・ストレス解消など精神的なメリットが大きいことが分かったのではないでしょうか。
最後に、ヨガに興味が湧いてきた人、これから始めようと思っている人に、漆原さんから次のコメントをいただきました。
「まずはやってみたい、リラックスしたい、といった気軽な気持ちで一歩を踏み出してみることをおすすめします。直接的にもたらしてくれるリラクゼーション効果や身体的な変化の先に、食事に対する考え方や人との接し方など、ヨガをすると何かしら自分の変化に気付くはずです。この変化を楽しみに、ぜひトライしてみてください!」