ランニング初心者必見!走るのに適した呼吸法とは!!初心者が挫折しないためのアドバイスも
「健康」や「ダイエット」を意識したときに気軽に始められるランニング。有酸素運動の代表だけに、ポイントは酸素を効果的に取り入れる「呼吸法」にあります。
日常の生活で呼吸は無意識に行っていますが、ランニングでは「呼吸法」が間違っていれば走るのがつらく、せっかく始めても長続きしません。
「正しい呼吸法」を行うことで徐々に長い距離を、そして速く走ることができるので、ランニングが楽しくなり継続することができるのです。
今回はランニングの「正しい呼吸法」と、呼吸以外に初心者が挫折しやすいポイントをコーチングのプロに伺いました。
ランニングの初心者、これからランニングを始めようと思っている方、また、ランニングを始めたけど挫折してしまった経験のある方は必見です!
下嶽(しもたけ)進一郎さん
日本体育大学院修了後、同大のスポーツトレーニングセンター助手、中京大学スポーツ科学部助教を経て現在はトレーニング科学、コーチング科学、体育科指導法を専門とする株式会社Future Logistics代表。実業団陸上部で専属コーチとして選手を指導するとともに順天堂大学後期博士課程に通い研究職として企業内でリサーチャーを行う。子どもの運動能力を中心にプログラムとの関係を追跡する研究プロジェクトに参加中。
ランニングで呼吸をするときは「鼻」と「口」どちらが良いのか
日常の生活を送るなかで、「呼吸」についてあまり意識することはないでしょう。しかし、ランニングでの「呼吸」はパフォーマンスの向上に大きく影響します。
ランニングにおける「呼吸」の一番のポイントは鼻から息を吸うということ。口呼吸に比べて喉が乾燥しにくく、コロナ禍の今、ウイルスが体内に入りづらいというメリットもあります。
「鼻から息を吸って、口から吐く。慣れないと苦しいと思いますが、それは誰もが通る道です。そのため日常の生活においてトレーニングすることをおすすめします。誰もが呼吸は自然に行っていますが、呼吸をするときに胸郭の拡大、収縮を行う呼吸筋(横隔膜および肋間筋)という筋肉があります。
呼吸筋は意識してコントロールできる随意筋(ずいいきん)で、少しずつ自分でコントロールできるようになります。この呼吸筋が収縮し、ポンプの役割を担って酸素を体内に取り込み、毛細血管を通じて指先の末端まで供給することで全身の機能性が高まるのです。
最近、トレーニング界では『ドローイン』といって、お腹をへこませて呼吸することで、横隔膜と肋間筋を収縮させる方法が、体幹づくりとしても良いフォームになるということで流行っています。」(下嶽さん)
ランニングで適した呼吸法とは?
「鼻から息を吸い、口から吐く」という呼吸は、走り始めのゆっくりとしたペースでは問題ありませんが、距離を伸ばし、ペースを上げるにつれ慣れないうちは苦しくなってきます。
呼吸法をマスターすれば、今までより遥かに楽に走れるようになります。ここでは初心者ランナーにおすすめの呼吸法を2つ紹介します。
■呼吸を2回に分ける方法
普通の呼吸は「スッ、ハッ」と1回ずつ行いますが、この呼吸法は「スッ、スッ、ハッ、ハッ」というリズムで行います。
2回連続で息を吸うということに、最初は違和感を覚えるかもしれませんが、慣れるとかなり呼吸しやすくなってきます。
■深く吸って深く吐く
2回連続で吸うのが難しいという方は、「深く吸って深く吐く」という方法を試してみてください。単純に思えるかもしれませんが、この呼吸法で走っているランナーも少なくありません。
「スッ、ハッ」と早いリズムで呼吸するのではなく、「スーッ、ハーッ」とゆっくり呼吸するのがポイントです。
「慣れるまでは呼吸がものすごく乱れます。乱れている間は、これまで運動不足で収縮していた毛細血管の拡張期なわけでもあり、それはランニングエコノミーといって、無駄なエネルギーを使わず、効率的に走るために体が慣れるまでの時間でもあるのです。
運動をすると時間と比例して心拍数が上がります。それに対して、呼吸は3拍から4拍打つというのが人間の持っている本能的な反応です。その心拍数に合わせて、前述した「スッ、スッ、ハー」や「スッ、スッ、ハッ、ハッ」と短めに2回に分けて呼吸します。「スッ」で息を吸って、「ハッ」「ハー」で吐く。足を出すタイミングに合わせると、さらに良いでしょう。」(下嶽さん)
呼吸で初心者に意識して欲しいこと
【意識してほしいこと1】走っていて苦しくなったときは立ち止まって深く深呼吸
鼻から吸う酸素量は、ランニングを始めたばかりではどうしても少なくなってしまい、鼻と口の短い間隔での呼吸となり、全身まで酸素が行きわたりません。そのため、すぐに息が上がってしまいます。
しかし、そんなときは立ち止まって深く深呼吸をして息を整えるのが良いとのこと。
【意識してほしいこと2】腹式呼吸
持久系のスポーツの場合、Goodとされている呼吸法に腹式呼吸があります。肺の奥まで空気を取り込むことができるため、効率良く酸素を摂取することができます。
腹式呼吸をマスターすれば楽に長い距離を走れるでしょう。しかし、腹式呼吸を意識して運動をするのは意外に難しく、それなりのトレーニングが必要です。
「重要なのは、しっかり呼吸をするために胸郭の動きを意識することで、走り出す前に肋間筋と横隔膜の呼吸筋を動きやすくします。これは日常生活のなかでも呼吸を意識することで、トレーニングができます。
ランニングを始めたばかりでは、毛細血管が塞がっていることが多いので、酸素を吸っても末梢まで届かず燃費が悪いんです。末梢まで酸素が回るようになれば、比較的ランニングが楽になってきます。
それは走っていたら確実に実感できます。呼吸に負荷をかけることで、心肺機能や筋力が向上するんですね。最初は苦しくても、2~3週間そういう期間を経て全身に酸素が届くようになると、走るのが楽しくなって病みつきになるはずです。私はそのような方をたくさん見てきました。」(下嶽さん)
■運動を始めて最初の5分で苦しくなったとき
また、ランニングに限らず、運動を始めて最初の5分程度は筋肉が温まっていないため、呼吸筋もうまく機能しません。
「学生時代の体育の時間で、最初にグラウンド1周などのウォーミングアップがあったと思います。また、ランニングの場合はジョギングをするのが一般的です。ですが、基本的に私のところのトップランナーたちには『別にジョギングしなくて良い』と言っています。ジョギングが無意味ではないのですが、その代わりに呼吸の動きを整えるためのエクササイズを20分ぐらいします。」(下嶽さん)
ランニング初心者が陥りやすい挫折ポイント
初心者にとって「呼吸法」を習得するのには我慢が必要ですが、ランニングを挫折してしまう方の理由はほかにもあるようで、初心者が陥りやすい挫折のポイントを教えてくれました。
「挫折しないためには小さな目標を立てることです。繰り返し達成できるように、距離やタイムをベースにミニマムな目標を立てていきます。さらに、もう少し気持ち良く走りたい方は大会を目標にしてみる。頻度や内容も無理をしないで、そういった小さな目標とちょっと先の目標を設定しましょう。
あとは楽しみを見つけること。1人でするランニングは自分だけの楽しみのためというのはありますが、仲間で集まって走るとコミュニケーションを楽しむこともできます。ですので、楽しみをしっかり設定することもランニングを長続きさせる、挫折しないためのポイントですね。」(下嶽さん)
中級者ランナーからの呼吸法
トップランナーになると、それぞれ独自の走り方、呼吸の仕方を取り入れています。いろいろな呼吸のリズムの取り方もあるそうですが、今回は、中級ランナーに向けてのアドバイスもいただきました。
といっても、中級者になってくると具体的な呼吸方法ではなく、意識の持ち方が重要になってくるようです。
「ある程度のスピード、100mを22秒切るくらいのペースになると、息を吸っている暇がなくなります。必然的に吐く、吐くとなってきますが、息を吐けば体が反応して無意識に吸っています。最終的には息を短く吐いて、「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」という感じでリズムを取るようになるでしょう。
そういう方は基本的な呼吸法から始めて、自分なりの呼吸のリズムを見つけたことになります。ランニングを続けて、楽しくなって、『最近、呼吸法が変わってきたな』と感じますが、それはそれで良いことだと思います。
例えば同じ1kmでも楽に、もしくは速く走れるようになったとき、自分に合った良い呼吸のリズムを身に付けたと思います。その感覚は大事にしたほうが良い。呼吸法に関しては、こうしなくちゃいけない、ああしなくちゃいけないというのはありません。
自分が成長したときに良いなと思った呼吸法を継続しながら、さらに探求していくことが大事なのです。」(下嶽さん)
撮影/中田悟
イラスト/奈良裕己
文/マイヒーロー
編集/GetNavi web