「私の話なのに…」「また“自分語り”…」 自分の話にすり替える「会話泥棒」の心理とは?
「私の話をしていたのに、いつの間にか相手の話になってる…」「相手の“自分語り”にすり替わってる…」。このように、気付くと自分の話が相手の話にすり替わっている「会話泥棒」の人に出会った経験がある人は多いのではないでしょうか。「会話泥棒」の人は、どんな話をしていても「私は…」「俺は…」と自分の話にすり替えてしまう傾向があるため、「疲れるし、ストレスがたまる」「毎回うんざりです」「『また始まった』と思いながら相づちを打ってる」「正直、会話するのが面倒くさくなる」「本人は気付いてないのかな?」など、辛らつな声が聞かれます。
相手が話していたことを自分の話にすり替える「会話泥棒」の人の心理について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。
前提となる性格は「おしゃべり好き」
Q.相手の話を自分の話にすり替える「会話泥棒」の人の心理状態は、どのようなものだと思われますか。
小日向さん「人の話を聞いていると『それ、自分にも経験ある』『周りに似た人を知っている』など、話の内容を自分に関連付けて考えるのは多くの人が行う思考です。しかし、その思考が浮かんだときに『まず、この人の話を聞こう』と思えるか、それとも自分が話したい気持ちが先走り、話を始めてしまうのか、この一瞬の選択が『会話泥棒』か否かを分けることになります。
何気ない会話でも、言葉は常に選択や判断のもとに発せられています。しかし、それが日常会話になればなるほど『言葉を選択している』という意識は薄くなります。そういった意味では、日常でよくみられる『会話泥棒』は、それをする本人に自覚がないまま行われていることがほとんどです。よどみなく続く会話の場合には、特に顕著に表れます」
Q.「会話泥棒」をする(しがちな)人の特徴はありますか。
小日向さん「前提として、いわゆる『おしゃべり好き』という性格が男女問わずあると思います。この根本的な要因に加えて、『自己愛が強い』『せっかち』といった性格が加わると『会話泥棒』になりがちです。
自己愛が強い人は常に自分ファーストな思考ですから、それが会話の中でも出やすくなります。また、せっかちな人は会話に起承転結やオチを求める傾向があり、話に展開が見えないとイライラして話を奪ってしまいます。せっかちタイプの『会話泥棒』は、『私は』『俺は』といった自分語りというよりは、『それってつまり◯◯ってこと?』『それで結局どうなったの?』などと相手の話の収束を図り、自分の語り時間に持っていくスタイルになることが多いです」
Q.一方、「会話泥棒」されやすい人の特徴とは。
小日向さん「言葉を発するタイミングや話すペースは人それぞれですが、やはり相対的に見て、言葉を繰り出すまでの間が長い人、話し方がスローペースな人の方が、会話を奪われてしまうことが多いといえるでしょう」
Q.「会話泥棒」をする人が身近にいたり、実際に話したりすると、「疲れる」「うんざりする」と感じる人も少なくないようです。なぜ、こうしたネガティブな気持ちになることが多いのでしょうか。
小日向さん「話を始めるとき、人は『自分が伝えたいことを最後まで話したい』という欲求を持って話し始めます。それを途中で奪ってしまうのが『会話泥棒』です。会話だけでなく、何事も途中で強引にさえぎられると欲求不満になりますよね。この欲求不満という状態がストレスとなるため、疲労感や相手への嫌悪感につながるのです」
Q.「会話泥棒」をしてくる人に対して、どのような接し方をするとよいですか。
小日向さん「自分の人生において長期的に関わらなければならない、あるいは関わりたいという相手には、指摘してあげてください。『会話泥棒』は無意識に行っている人がほとんどです。そのため、誰も指摘してあげなければ、その人から次第に人が離れてしまいます。そうして孤立した人のそばにいることは結局、自分にも負荷がかかることになります。『会話泥棒』は、気付かせてあげれば修正できる人も多いです。
また、悩みや気になることがあると、そこに執拗(しつよう)にこだわり、どんな話からでも自分の悩み事に結び付けて話しだしてしまう人もいます。そういった人の場合は、それらを傾聴したり、解決したりできる専門家とつながるよう、アドバイスをすることも対処法となり得ます」
Q.「会話泥棒」をする性質への気付きや改善のために望まれる意識・行動とは。
小日向さん「『おしゃべり好き』『会話に起承転結やオチを求める傾向がある』『自分に注目が集まっていないと悔しい』『せっかち』―これらのパーソナリティーに該当する項目が複数ある人は注意してください。
相手がいったん話し終わるまでは、とにかく『話を奪わない』ことを強く意識して会話をしましょう。『会話泥棒』には頭の回転が速い人も多いので、認知さえできれば改善が期待できます。
また、仕事終わりなどに、同僚と長く立ち話をする傾向がある人も要注意です。『立ち話は10分以内』などマイルールを決めて、『会話泥棒』になる物理的な要素も取り除いていきましょう。