1987年のブラックマンデーがあった年は卯年だが、日経平均株価は1989年の巳年までの3年間で、ほぼ2倍になった(写真:ロイター/アフロ)

師走相場も、はや中盤に差しかかった。まずは終わった11月を振り返ると、11月末の日経平均株価は2万7968円99銭だった。10月末は2万7587円46銭で、1カ月の上げ幅は381円53銭、率にして1.39%だった。

この11月の日経平均の実績は、MSCIアジア太平洋指数(日本を除く)の+17.4%に比べると、ほぼマイナス16ポイントで大きく見劣る。

実は、ここまで差がついたのは1998年10月以来のことだ。日経平均の10月の騰落率が9月末比+6.37%(上げ幅1650円25銭)がよかったということもあるものの、11月のパフォーマンスは極めて残念な事実だった。

日本経済はほかの先進国と比べても決して悪くない

しかし、日経平均の利益を1つの企業に見立てると、EPS(予想1株当たり利益)は2203円と史上最高値に近い位置におり、決して他市場に比べて企業業績が劣っているわけではない。

実際、11月22日にOECD(経済協力開発機構)が発表した最新の予想も、それを裏付ける。同機構は2022年の世界経済成長率(実質GDPの伸び率)を3.1%、2023年を2.2%としているが、主要国の2022年から2023年の数字を見ると、アメリカが1.8%から0.5%と大幅に減速。欧州でも、ドイツが1.8%から−0.3%へ、フランスも2.6%から0.6%と、かなり厳しい予想になっている。

一方、日本はといえば、回復が出遅れていたせいもあるが、1.6%から1.8%へ上昇する。つまり、日本の2023年の成長率は米独仏を上回るとOECDは予測しているのだ。しかも、この2023年の数字は9月発表からの改定値でもあるが、日本は0.4ポイント上方修正されており、この上方修正値は世界で一番である。

また、最新のIMF(国際通貨基金)における世界経済の成長率見通しも似通っている。2022年から2023年で見ると、世界経済は3.2%から2.7%に減速予想。各国もアメリカが1.6%から1.0%、ドイツは1.5%から−0.3%、フランスも2.5%から0.7%だ。ここでも日本は1.7%から1.6%とわずかな低下にとどまっており、やはり2023年は胸を張るほどでないにせよ、4カ国中ではやはり一番だ。

お金(投資・投機資金)は相対的に有利なところに流れるものだ。すでに新興国の代表格であるインドのSENSEX30指数は12月1日に史上最高値をつけた。足元では中国のゼロコロナ政策の緩和などで香港市場などが大きく戻しているとはいうものの、不透明感がなお消えない中国よりも、世界の資金はインドに向かっており、こうした資金が日本にも来ても決しておかしくない。

「黄金の3年」を期待する兜町

さて、東京の日本橋・兜町では新年相場を語るときには、よく十二支を使う。2023年はうさぎ(卯)年だ。

十二支と相場の関係は、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる、辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、となる。

2020年からのここまでの約3年で見ると、子年に繁栄したのは新型コロナウイルスだったのかもしれない。だが、実は日経平均もコロナショックでつけた安値1万6552円からの上昇を考えると、繁栄したといえなくもない。

昨年の2021年の丑年は、3万円台からつまずきながらも、一時は再び3万円を回復した。しかし、2022年の寅は、ロシアのウクライナ侵攻もあり、暴走した年として記憶されようとしている。

兜町では、これからやってくる3年、卯年・辰年・巳年が、相場格言どおり、「卯跳ね、辰巳天井」の「黄金の3年」になると期待している。「天井」とは、言い換えると高値をつける(上昇する)ことを意味する。高い水準が辰・巳と2年間続くのだ。

彼らがなぜ「黄金の3年」として期待するのか。1つはその上昇力だ。1949(昭和24)年の東証再開以来の73年間で各6回まわってきたが、日経平均の平均上昇率はそれぞれ卯年が16.4%、辰年は28.0%、巳年は13.4%と上昇、まさに黄金の3年間になっている。

大逆風に耐えた苦労が実を結ぶ3年間となるか

もちろん「16%、28%、13%程度で黄金といえるのか」との反論もあろう。だが、代表的な3年間の例を見ると、まさに「黄金」なのだ。1987年の卯年、1988年の辰年、1989年の巳年は、いうまでもなくバブル相場最高潮の3年間だった。この間、ざっくり言って1万9000円から3万9000円まで2万円の上昇は、日本の株式市場の歴史における黄金の3年間だった。

また、そのひと回り前の3年間は1975年の卯年、1976年の辰年、1977年の巳年となる。ベテラン投資家は覚えていると思うが、その直前は1973年の第1次オイルショックや国際金融不安や急激な円高によって、1974年の寅年は「戦後の日本の高度成長は終わった」として、日経平均は安値3355円をつけたのである。だが、後から振り返ると、1975年からの3年間は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」へ走りだした3年間だったのだ。

ちなみに、「卯跳ねる」となっているが、ウサギには「飛躍」だけでなく「安全」という意味もある。2023年は60年に一度巡ってくる十干十二支(じっかんじゅうにし)で言うと「癸卯(みずのと・う)」となり、この意味は「今までの努力が実を結び、勢いよく成長し飛躍する年」となる。易学など無縁な投資家諸氏にとっても、何か楽しくなるではないか。

最後に2023年に期待するトピックを1つ挙げたい。中国では、来年3月に開催が予定されている全国人民代表大会に向けて、成長路線に回帰するためのさまざまな政策が検討されている。その一環として、来年1月にも新型コロナウイルスの感染症分類を引き下げる(中国では甲乙丙の3段階あり、新型コロナはペストなどが含まれる甲類並みの扱いが必要とされる乙類と規定)との見方がある。

行きすぎた規制の緩和期待で中国株が動意づいているが、政策の「修正」は事実上、政策の間違いを認めることになる。「ゼロコロナ政策は正しかったが、コロナの弱毒性が認められたので感染症分類を引き下げる」とするのが自然ではないか。それが実現すると、中国人訪日客は爆発的に増加する。黄金の3年の初年度として勢いづくことになるのではないか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)