(画像:ハッピーセット すずめといす「大人もハッピーセット」篇 30秒 マクドナルド公式YouTubeチャンネルより)

2022年11月前期のCM好感度ランキングは日本マクドナルドのCMが席巻した。総合1位に輝いたのは10月後期に続き日本マクドナルド『三角チョコパイ』。RIP SLYMEの『太陽とビキニ』の替え歌である「♪三角チョコパイの季節〜」というBGMに合わせ、紅葉に染まった公園で伊藤沙莉と志尊淳が三角形をモチーフとしたダンスをする姿を映した。

総合2位には歴代のFIFAワールドカップをイメージした3種のバーガー『時をかけるバーガー』が続いた。オフィスで岡田准一がバーガーを食べようとすると、仲間とともに日韓大会をテレビ観戦していた2002年にタイムスリップ。そしてブラジル大会の2014年、現在へと時空を超えていく岡田が思いを寄せていた女性と再会する様子を描くラブストーリーだ。また岡田がカウボーイに扮した『マックTHEチキン ガーリックペッパーの一撃』も21位に入った。

マクドナルドCMがトップ10に4作品

『ハッピーセット』のCMは新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』とコラボレーション。同作に声優として参加する神木隆之介が店頭でハッピーセットを注文し、手に入れた映画のスピンオフ絵本『すずめといす』を読むストーリーだ。30歳以上の女性を中心に得票し、6位につけた。

本CMは新海監督の『君の名は。』が放送された10月28日の日本テレビ『金曜ロードショー』内でオンエアをスタート。このほか番組内では同社の『ビッグマック』、KDDI『au』、ミサワホームが映画本編とオリジナルストーリーで構成されたコラボCMを展開した。

また11月6日の「青いマックの日」を伝えるCMも好評で、10位に入った。娘と街を歩く父親役の堺雅人が青いマックの袋や青く装飾された店舗を見て、重い病気と闘う子どもとその家族のための滞在施設『ドナルド・マクドナルド・ハウス』を支援するチャリティー・デーだと気付く内容。店長役の井ノ原快彦が店舗を青く装飾する姿を描くCMもオンエアした。

続けて、上位の顔ぶれより3位となったアサヒビール『スーパードライ』の新CMを紹介する。CMは大容量の新商品『生ジョッキ缶 大生』(缶485ml)を訴求するもので、発売日である10月25日からオンエアされた。飲食店を訪れた中島健人と菊池風磨が黒板に書かれたメニューを見て「大生で!」と声をそろえてオーダーするシーンから始まる。

大ジョッキに注がれたビールがテーブルに置かれると「この大生のうまさを、家でも」という語りがかかる。すると舞台は自宅のリビングに変わり、「待ってましたー!」と叫ぶふたりが「でか!」「重!」と商品のボリューム感に驚いたり、商品のフタを開けて勢いよく泡立つ商品で乾杯したりする姿が映される。ラストは彼らが豪快にビールを飲んで笑い合う様子に「めっちゃ、大生!」のコピーとナレーションを重ね、従来の340ml缶に比べ泡立つ速度が2倍以上になったことなどを伝えた。

30代の男女を中心に好スコア獲得

彼らの和気あいあいとした掛け合いやシズル感のあるクリエイティブが支持を集め、30代の男女を中心に好スコアを獲得。CM好感要因の「商品にひかれた」ではナンバーワンに輝くなど、商品の魅力を伝えることに成功したようだ。

商品の発売に先駆けて展開された作品は、CMの撮影現場の打ち合わせをモチーフに展開した。初めて商品を手にした彼らが驚きの声を上げる様子や、撮影まで待ちきれない様子の中島が「今飲んじゃだめ?」と担当者に尋ねる姿などを描き、商品の発売を印象づける内容で、若年女性から得票した。

最後に、意外性のあるキャスティングが光ったヒット作を紹介したい。Uber Japan『Uber Eats』は「今夜、私が頂くのは…」をキーワードとしたCMシリーズの最新作に、バイオリニストの葉加瀬太郎と人気キャラクターのムックを起用した。

22位にランクインしたCMは、葉加瀬が「さて、今夜、私が頂くのは、具だくさん八宝菜です」とカメラ目線で語るシーンからスタート。葉加瀬が商品をデリバリースタッフから受け取ると、ムックは上機嫌でピアノを弾きながら「カモン、太郎!バイブス来てますぞ!」と呼びかけ、葉加瀬もバイオリンを奏ではじめる。ラストは見事なセッションを披露するふたりに続けて八宝菜が映され、「そろそろ食べない?」「まだまだです〜!」という葉加瀬とムックの掛け合いを重ねた。

意外な組み合わせのふたりを起用してきたUber Eats

50歳以上の女性や男子小学生から多く得票し、「意外な人と、急な演奏がインパクト大で印象的」「面白いコラボで見入ってしまった」などの声が寄せられた。ムックは子ども番組のキャラクターとして親しまれるだけでなく、ピアノやサックスといったさまざまな楽器を演奏する動画がSNSで注目されるなど“音楽家”としての一面もあり、世界的なバイオリニストである葉加瀬との共演が注目されたようだ。

このほか葉加瀬が注文したケーキを見て「Happy Birthday “モック”」というプレートにふたりがあぜんとする作品、リモートディナー中に葉加瀬の娘がタブレットに映るムックの後ろ姿を見て「パパ、髪赤く染めた?」と尋ねる作品も展開。「95%のオーダーを時間内に配達」のコピーとともに、サービスの利便性を親しみやすく訴求した。

2019年に開始したUber EatsのCMにはこれまで阿部寛と山田孝之、えなりかずきとゆりやんレトリィバァ、松嶋菜々子とMatt、安達祐実と芦田愛菜といった多彩な顔ぶれが出演。いずれも意外な組み合わせのふたりが自然体で掛け合う様子やユーモラスなストーリーが好評を博している。展開4年目の現在もクリエイティブの鮮度を保ち続けている人気シリーズといえるだろう。

(関根 心太郎 : CM総合研究所 代表)