【▲ ケネディ宇宙センター39B射点のSLS(スペースローンチシステム)初号機。2022年11月11日撮影(Credit: NASA/Joel Kowsky)】


アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間11月11日午後、ハリケーン「Nicole(ニコル)」の接近にともなって延期されていた「アルテミス1」ミッションの打ち上げについて、延期発表時の予定通り11月16日の実施を目指していることを明らかにしました。


NASAが主導する月面探査計画「アルテミス」最初のミッションとなるアルテミス1は、NASAが開発した新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」および新型有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」の無人飛行試験にあたります。SLS初号機で打ち上げられて月周辺を飛行した後のオリオンは、打ち上げから4〜6週間ほど後に地球へ帰還する予定です。なお、SLS初号機には日本の「OMOTENASHI」と「EQUULEUS」など10機の小型探査機も相乗りしています。


最新のスケジュールによれば、アルテミス1ミッションの打ち上げは米国東部標準時2022年11月16日1時4分(日本時間同日15時4分)から2時間のウィンドウ内に実施されます。オリオンは12月11日に地球へ帰還する予定です。


アルテミス1の打ち上げは2022年8月下旬から2回延期された後、米国東部夏時間2022年9月27日(日本時間9月28日)に実施される予定でしたが、ケネディ宇宙センターがある米国フロリダ州にハリケーン「Ian(イアン)」が接近しつつあったことからNASAは打ち上げを見送り、SLS初号機とオリオンを同センターの39B射点からロケット組立棟(VAB)へ退避させていました。


SLS初号機とオリオンは点検や整備を受けた後の11月4日に再び39B射点に設置され、NASAは米国東部標準時2022年11月14日(日本時間同日)の打ち上げを目指していましたが、ニコルの接近を受けて4回目の延期を決定。予報では風の強さがSLSの設計限界を上回らないと予測されていたことや、強まる風の下で射点から組立棟までの移動作業(約10時間を要する)を実施する際にもリスクがあることを考慮して、今回は対策を講じた上でSLSとオリオンを射点に留めておく判断が下されていました。


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ニコルは米国東部標準時2022年11月10日3時にフロリダ半島へ上陸。荒天の間、ケネディ宇宙センターではセンサーと高解像度カメラを使った安全な場所からのリモート監視が行われました。SLS、オリオン、移動式発射台の状況を10日夕方から徹底的に確認した結果、コーキングの緩みや天候から保護するためのカバーの破れといった比較的軽い損傷はあったものの、重大な影響は受けなかったことが確認されたとNASAは述べています。


NASAによると、射点のさまざまな高度で計測された風速はすべてSLSの設計限界に対して75パーセント未満であり、技術者による詳細な分析の結果、ニコルの強風はSLSの構造強度に悪影響を及ぼさなかったことが確認されたとしています。NASAの探査システム開発担当副長官を務めるジム・フリー氏によると、発射台の風速計は高度60フィート(約18m)で最大風速82mph(時速約132km、秒速約36.7m)の突風を記録しました。


NASAは通常の打ち上げ準備の一環として、SLSとオリオンに電力を供給した状態でのシステムの点検を11月12日まで行い、翌13日にはソフトウェアとハードウェアの最終的なテストを行う予定とのことです。


アルテミス1ミッションに関する新たな情報は、発表があり次第お伝えしていきます。


 


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Image Credit: NASA/Joel KowskyNASA - Artemis (NASA Blogs)

文/松村武宏(2022年11月12日11時11分)