【▲ パラナル天文台(チリ)のVISTA望遠鏡を使って赤外線で観測された星雲「NGC 3603」(左)と「NGC 3576」(右)(Credit: ESO/VVVX survey)】


こちらは「りゅうこつ座」の方向にある2つの星雲「NGC 3576」(右)と「NGC 3603」(左)です。画像では隣り合っているように見えるNGC 3576とNGC 3603ですが、画像を公開したヨーロッパ南天天文台(ESO)によれば地球からの距離はNGC 3576が約9000光年、NGC 3603が約2万2000光年とされており、実際には1万光年以上も離れています。


NGC 3576とNGC 3603は、活発に星が形成されている星形成領域として知られています。新たな星が誕生する現場であることから、星形成領域は「星のゆりかご」と呼ばれることもあります。


星形成領域では、ガスや塵が集まってできた分子雲のなかで星が形成されていきます。若い星はやがて強い光(電磁波)を放ち、恒星風を吹き出すようになって、星雲の形を変化させていきます。画像を拡大すると、複雑に刻まれた星雲に取り囲まれるようにして、星団の星々が美しく輝いている様子が見えてきます。


【▲ NGC 3603の中央部分を拡大した画像(Credit: ESO/VVVX survey)】


この画像は、ESOが運営するパラナル天文台(チリ)の「VISTA望遠鏡」を使って赤外線の波長で取得されました。人の目は赤外線を捉えることはできないため、色は画像の取得に使用されたフィルターに応じて着色されています(1.25μm:青、1.65μm:緑、2.15μm:赤で着色)。


赤外線は星雲に存在する塵に遮られにくいので、可視光線では見ることができない塵の向こう側の様子も観測することができます。星形成領域はさまざまな渦巻銀河や矮小銀河などで一般的にみられますが、天の川銀河にあるNGC 3576とNGC 3603は他の銀河の星形成領域と比べて地球に近いことから、激しい星形成過程を研究する機会が得られるとして、天文学者から注目されているとのことです。


冒頭の画像はESOの今週の一枚として、2022年11月7日付で公開されています。


【▲ 参考画像:ラ・シヤ天文台(チリ)のMPG/ESO 2.2m望遠鏡を使って可視光線で観測されたNGC 3603とNGC 3576(Credit: ESO/G. Beccari)】


 


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Image Credit: ESO/VVVX survey/G. BeccariESO - VISTA’s view on stellar births

文/松村武宏