「ダウン症」の赤ちゃんを産む人の特徴・寿命・確率はご存知ですか?

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ダウン症は染色体の異常で生じる病気で、日本でも珍しい病気ではありません。ダウン症は特有の顔立ちをしており、街中で見かけたことがある人も多いでしょう。

ダウン症には母親の年齢が上がるほど発症率が高いなどの特徴があります。発育の遅れなどもあり、子育てに不安を感じる人もいるでしょう。

しかし、ダウン症の子供もゆっくりではありますが、成長するので安心してください。ダウン症の原因や症状について解説しますので、参考にしてみてください。

ダウン症の症状や原因

ダウン症の特徴を教えてください。

ダウン症は特徴的な顔や筋緊張の低下など特徴があります。丸く平坦な顔、アーモンド形の目や小さく低い鼻などになり、ダウン症の人は皆似ている顔立ちです。

他にも乳児期や幼児期は筋緊張低下などの特徴がみられ、ハイハイや歩行の獲得が他の子供より遅いことがあります。

知的障害などもみられることがありIQの平均は約50ですが、ダウン症であれば必ず起こるものではありません。ダウン症でも大学を卒業している人もいます。

一部のダウン症の人に自閉的行動や注意欠如・多動症がみられるでしょう。子供、成人あわせてうつ病の発症リスクが高い特徴もあります。

どのような症状がありますか?

ダウン症は特徴的な顔貌以外にも発育の遅れ・合併症が生じやすいことなど以下の通りたくさんの症状があります。

筋緊張低下

関節弛緩

小頭傾向

後頭部扁平

大泉門開大

丸く平坦な顔

内眼角贅皮

眼瞼裂斜上

短い鼻

下向きの口角

舌挺出

小さい耳

後頚部皮膚のたるみ

単一掌屈曲線

5指短小および内弯

発育の遅れ

脛側弓状紋

難聴

心疾患などの合併症

ダウン症は筋緊張が低下し関節も弛緩しているため、他の子供よりハイハイや歩行などの運動面での発達の遅れがみられます。また、難聴などから言葉の遅れもみられることがあります。

知的障害がある人もいますがダウン症の人は必ず知的障害があるわけではありません。大学を卒業したり、運転免許を取得し日常生活を自立したりしている人もいます。

心疾患だけでなく循環器や消化器などたくさんの合併症を発症する可能性があるので、症状がみられたら病院の受診がおすすめです。

他にもうつ病や、40歳以降からアルツハイマー病を発症しやすいなどの症状もあります。

原因について教えてください。

ダウン症は21トリソミー症候群といい、遺伝子の異常です。

21番目の染色体は正常では2本ですが、両親の染色体の分離が上手くいかずに21番目の染色体が3本になることが原因です。

この21番染色体の数が増えてしまう場合は、ダウン症の約95%で標準型といわれます。約3%が21番目の染色体が他の染色体にくっついてしまう転座型です。これらの染色体の異常によってダウン症が発症します。

染色体の異常による病気はダウン症以外にもありますが、一番多いのがダウン症で知名度も高いでしょう。

発症する確率が知りたいです。

ダウン症は約700人に1人と言われており、母親の年齢によっても発症率は変わります。

母親が20代の場合より、母親が40代の場合のほうが子供が発症する確率が高く、約100人に1人の発症率といわれています。

しかし、母親が20代だからといって、子供がダウン症を発症しないわけではありません

病気になりやすいのですか?

ダウン症は多くの合併症を発症する可能性があります。よくみられる合併症は以下の通りです。

心内膜床欠損症や心室中隔欠損症などの先天性心疾患

十二指腸閉鎖や鎖肛などの消化器疾患

環軸椎亜脱臼

白血病

けいれん発作など神経系疾患

白内障や斜視などの眼疾患

中耳炎や難聴などの耳鼻科系疾患

甲状腺機能障害

排尿機能障害

閉塞性睡眠時無呼吸

ダウン症の約50%は先天性心疾患があるといわれ、重症化してしまうことも多かったです。

しかし、胎児のうちから正確なエコー検査で早期発見できるようになり、心臓手術なども行われるようになったことで重症化する前に対処できるようになりました。

白血病の発症率も高く、10倍から20倍といわれています。しかし、固形腫瘍の発症率は低いこともが明らかになっています。

ダウン症の赤ちゃんを産む人の特徴について教えてください。

ダウン症の赤ちゃんを産む人は比較的高齢の女性が多いです。20代と40代では40代の女性のほうが赤ちゃんがダウン症を発症する確率が上昇します。

しかし、若い女性でもダウン症の子供を出産することがあるので、若いから安心というわけではありません。ダウン症の女性がダウン症の子供を出産する可能性は約50%と高く、また自然流産も多いです。

ダウン症の男性はモザイク型の人以外不妊のためダウン症の子供が生まれることはほぼありません。

ダウン症の検査方法と治療方法

ダウン症の診断基準について教えてください

ギムザ染色法によって21番染色体が3本になっていることがダウン症と確定される診断基準です。

他にも染色体が転座している場合なども転座型のダウン症と診断されます。

ダウン症はいつわかりますか?

産まれると特徴的な顔立ちや発育の遅れなどからダウン症だと判断可能です。また、現在は妊娠中に診断することも可能です。

ダウン症かどうかに合わせて心疾患があるかどうかなどもエコー検査でより正確に判断できるようになってきています。

検査方法が知りたいです。

ダウン症の検査方法は母親の血液から検査するクワトロテスト羊水から調べる方法の2種類あります。

クワトロテストとは母親の血液内のβ‐hCG・インヒビン・非抱合型エストリオール・αフェトプロテインという4種類のマーカーを測定する方法です。

このテストの正確性は約80%と確実にダウン症であると判断することは難しいでしょう。また、ダウン症と診断されたにも関わらず実際にはダウン症でない場合も約5%あります。

羊水から判断する検査は、お腹に注射器を刺して子宮羊水を採取します。正確性が高く約99%の確率で判断できるのですが、リスクもあるので注意が必要です。

子宮に針を刺すので赤ちゃんに負担が大きく、胎児を傷つけたり流産したりする可能性もあります。妊娠15週からでないと検査ができないので、検査を行いたい場合は時期も考慮しましょう。

治療方法はありますか?

ダウン症は染色体の異常によって起こる病気のため、完全に完治することはありません

低緊張に対しては幼少期からリハビリをおこなったり、合併症に対してそれぞれ治療をおこなったり、状況に合わせて治療を行っていきます。

ダウン症の寿命や周りの家族の接し方

ダウン症の寿命について教えてください。

ダウン症は合併症が多く平均寿命が短いとされてきていました。

しかし、医療の進歩とともにさまざまな合併症が治療できるようになったことで平均寿命が伸び、約60歳という報告もあります。

ダウン症の人の最高年齢は83歳で、日本でも過半数の人が成人できるようになりました。

周りの家族はどのように接すれば良いですか?

ダウン症の子供は、運動面でも発語などの面でも発育が遅いとされています。筋肉の緊張が低いことでハイハイなどの獲得が遅れ、他の同年代の子供より歩き始めも遅い子が多いです。

また、難聴などの合併症により言葉の取得が遅れてしまうこともあります。しかし、全くできないわけではなく少し発育が遅いだけで言語や運動機能も徐々に発達してきます。焦らずに見守ってあげましょう

しかし、先天的に心疾患がある場合などはマラソンなどの運動ができない場合があります。合併症などの症状に合わせて医師に、できることやできないことを聞く必要があるのです。そして医師の診断のもと、運動などを行いましょう。

スポーツやダンスなど運動機能の向上だけでなく他の人との交流の良いきっかけになるでしょう。

予防方法はありますか?

産まれてくる子供が必ずダウン症にならないようにするなどの予防方法はありません

高齢出産を避けるなどの方法もダウン症の子供が生まれる確率は下がりますが、100%ダウン症の子供が生まれない保証にはなりません。

妊娠前から葉酸を摂取すると、ダウン症の予防につながる可能性があることが明らかになりました。妊娠前から葉酸を摂取していると、神経管閉鎖障害のある子供の妊娠を防ぐといわれています。

そして、神経管閉鎖障害のある子供を出産した経験のある母親は、ダウン症の子供を妊娠する確率が約5倍もあるといわれているのです。

そのため、神経管閉鎖障害の子供の妊娠を予防することで、ダウン症の子供を妊娠する確率も下げることができるとされています。

しかし確実に予防するものではないので注意しましょう。

最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

ダウン症は染色体の異常であるため、完全に完治したり予防したりすることは難しいです。発育の遅れなどもみられますが、焦らずゆっくり見守ってあげましょう。

しかし、合併症などを発症している場合は早期に対応が望ましく、病院を受診する必要があるので注意しましょう。

現在は治療法も確立され、心疾患があっても治療できるようになっています。

成長や合併症の症状に合わせて治療や支援を行っていきましょう。

編集部まとめ


ダウン症について特徴や原因について解説しました。ダウン症は治療法がないため一生付き合っていかなければいけません

かつては短命といわれたダウン症も合併症の治療ができるようになり、寿命も延びてきています。

発育の遅れや合併症など不安なこともあるかもしれませんが、日常生活も自立している人もいます。ゆっくり焦らずに見守ってあげましょう。

参考文献

ダウン症候群(21トリソミー)|MSDマニュアルプロフェッショナル版

ダウン(Down)症候群|小児慢性特定疾病情報センター

ダウン症(21トリソミー)とは?(※医師監修で執筆)|ヒロクリニック

ダウン症とは?ダウン症の原因から経過まで|Medical Note

21トリソミー(ダウン症)の特徴は?顔貌・原因・得られる支援を現役医師が解説|ミネルバクリニック

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