数百万人の行列でドミノ倒しが発生し、下敷きになった2000人以上が犠牲に イスラム教の大巡礼中に発生した「2015年メナー群衆事故」を解説
今回紹介する動画は、ゆっくりするところさんが投稿した『【2015年サウジ】数百万人の行列が転倒 約2200人が下敷きになり絶命 「サウジアラビア大巡礼群衆雪崩」【ゆっくり解説】』。
年に一度のイスラム教の大巡礼「ハッジ」のイベント中に発生した「2015年メナー群衆事故」について解説しています。
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魔理沙:
今回は以前リクエストがあった、「メナー群衆事故」を紹介したいと思う。
霊夢:
メナー群衆事故? なんだか内容が想像しにくい名前ね。
魔理沙:
ちょっとわかりにくいかもな。これはある場所に、あまりにも大量の人が集まったせいで群衆雪崩を起こし、その重さで何千名もの人々が圧死してしまったという恐ろしい事故だ。
霊夢:
せ、1000人以上が圧死!?
魔理沙:
それじゃ早速本題に入ろうか。中東、西アジアに位置する、「サウジアラビア王国」。ここはアラビア半島の大部分を占める王国で、紅海とペルシャ湾に海岸線を有する砂漠の国。
イスラム教最大の聖地である「メッカ」があることから、国内外問わず、イスラム教徒の人々が多く訪れる場所だ。2015年9月。このメッカ近郊には、「メナー」という谷状の地域があり、この日は年に一度の大巡礼が行われていた。
霊夢:
大巡礼?
魔理沙:
ああ。これはイスラム教徒たちが、年に一度聖地メッカまでを旅し、メッカ近郊で行われる儀式に参加するという、大規模なイベントだった。
霊夢:
へぇ、そういうのもあるんだ。
魔理沙:
これは非常に伝統的な巡礼のひとつで、「ハッジ」と呼ばれ、この国では非常に一般的な行事だった。
イスラム教圏の航空会社などではハッジ参加者向けの特別チャーター便の運行がされていたり、普段は女性がメッカに行く際は親族の男性に同行することが推奨されているが、ハッジに参加する際は特別に単身での渡航を許可されているほど、イスラム教徒の人たちにとっては特別な意味を持つ行事だった。
霊夢:
年に一度の大イベントってわけね。
魔理沙:
彼らはメッカに滞在する際、特別な衣装に身を包み参列する。このハッジに参加するため、ここメナーには毎年数100万人単位の人が行脚していた。
霊夢:
規模が大きすぎて、全然イメージできないわね……。
魔理沙:
そして、この日の21時ごろ。メナーにかかる「ジャマラート橋」に続く道は、身動きが取れないほど、隙間なく人であふれかえっていた。この行列は数キロメートルにわたって続き、前方はより人の密度が高い状態に。
霊夢:
こ、こんなにたくさん!? うぅ……人酔いしそう……。
魔理沙:
そんな中、突然行列の一部の人が転倒し、そこからまるでドミノ倒しか将棋倒しのようになり、数千名の人々が前の人に覆いかぶさった。
霊夢:
ヒィィィ! あぶない!
魔理沙:
この時の転倒は、ほとんど雪崩のような状態で、何百人、何千人もの人が一度に覆いかぶさったせいで、前方で転倒した人々は、その下敷きになってしまった。
霊夢:
イヤアアアアアアア!!!!
魔理沙:
凄まじい重量によって、体を圧迫されたため、その多くが骨折や窒息などによって圧死。直ちに緊急車両が現場に到着し、救助活動などを行ったが、この転倒事故で少なくとも、約2200人が亡くなったと見られている。
霊夢:
にっ……2000人も!?
魔理沙:
ああ。政府発表では769名となっていたが、ほかの集計では最低でも2200人近くが亡くなっており、サウジアラビア史上、最悪の転倒事故となった。
霊夢:
倒れただけでそんなことに……。
魔理沙:
いや、「倒れただけ」とは言っても、それがここまでの人数となれば話は別だぜ。人間1人の重さが、軽くても約50キログラム前後あるとして、その重さがほとんどそのまま後ろから襲ってくるんだ。
しかも、それ1人だけじゃなく、更に後ろから別の人が覆いかぶさり、重さはどんどん増えていく。これは「群衆雪崩」と呼ばれる現象で、大都市など人が集まりやすい場所で発生しやすい。
たった1人が転倒しただけでも、身動きが取れないほど人が密集した状態であれば、その小さなきっかけで、この大災害が発生してしまう。
霊夢:
でも、別に後ろの人が縦になって、前の人に覆いかぶさるわけじゃないじゃない? 平行な場所で倒れるならそんなに被害出ないんじゃないの?
魔理沙:
もちろん、後方に並んでいる人が、そのまま前の人にすべて覆いかぶさるというわけではない。だが、このような雑踏で発生する場合は、転倒時に自分の身を守る態勢を取ることが困難であり、通常ありえないような態勢で倒れこむことになる。それは顔からの場合もあるし、指先からの場合もあるだろう。
霊夢:
あ……確かに……。
魔理沙:
さらに恐ろしいのは、これだけの長蛇の列になってしまうと、後方の人たちは、前方で転倒事故が起こったことに中々気が付けないという点だ。それに気が付かないまま、後ろの人は「もっと前に出ろ」と、歩みを進めてしまう。そして、その人もまた転倒してしまい……。というのを繰り返すことになる。
霊夢:
そういうことだったんだ……。単純に重さだけの話じゃないのね……。
魔理沙:
また、雑踏での転倒では、転倒後に体勢を立て直すことも困難だ。人の上に更に人が乗り、という状態が連続するため、一番底にいる人は、上の人が立て直すまで、長時間無理な体勢で圧迫され続けることになる。一番下にいた人なんかは、おそらく内臓などに大きなダメージを負っていただろう。
霊夢:
だから圧死してたんだ……。
魔理沙:
実はここサウジアラビアでは、過去にも大巡礼の際、同様の群衆雪崩事故が繰り返し発生していた。
霊夢:
こんなことが前にも?
魔理沙:
1990年以降の大事故のみを数えても、4回の群衆雪崩が発生しており、毎回数100名から1400名近い犠牲者を出していたことがわかった。
霊夢:
今回が初めてってわけじゃなかったんだ……。
魔理沙:
今回はその中でも群を抜いて死傷者が多かったが、巡礼関係での群衆事故は小さなものを含めると数えきれないほど発生しており、かねてから危険が指摘されていたが、大きな対策はとられず巡礼する人々の意識も変わっていなかったために、このような事故がまた発生してしまった。
その後、サウジアラビア国王はこの事故を受け、「大巡礼の運営方法を見直すように」と指示を出した。しかし、事故の犠牲者には多数のイラン人が含まれていたこともあり、当時のイラン指導者はサウジアラビア王国に対して、「責任転嫁や他者を非難していないでサウジはまず責任を認め、全世界のイスラム教徒と、遺族に謝罪すべきだ」との声明を発表し、謝罪を要求した。
霊夢:
国際問題になってる……。
魔理沙:
この事故は、サウジアラビアという遠い異国で発生したものではあるが、規模こそ違えど、わが国でも同様の群衆雪崩によって、人が死亡する事故がいくつも発生している。
霊夢:
そういえば、花火大会のときにあったわね。
魔理沙:
ああ。そのほかにも新年行事での行列で発生した事例も紹介したな。群衆雪崩は、このようなイベントで発生することが最も多いが、災害による避難時などでも、同様のことが起こりやすい。
これは人口の密集している都市圏での震災で発生しやすく、震災直後に無理に帰宅しようと駅出口などに人が殺到し、転倒するケースが非常に多い。
霊夢:
あぁ〜、そういえばそういう映像、ニュースなんかで見たかもしれないわね。
魔理沙:
多くの人がある方向へ向かうと自分もその方向に向かいたくなる、という群集心理も働き、それが大震災などでパニック状態になっていると、よりそんな群集心理に陥りやすくなってしまう。
霊夢:
だからみんな同じ行動をとろうとしてたのかしら。
魔理沙:
ただ、群衆雪崩自体の原因として、「パニック」が上がることはほぼない。
霊夢:
あれ、そうなの?
魔理沙:
実際には、並んでいる行列の一部が停止してしまうことで、その後ろの密度が段々と高まり、密度が一定を超えたときに、様々な方向に力を伝えあって、人にダメージを与え、転倒を起こしてしまっているんだ。
群衆雪崩事故が無くならない原因のひとつとして、これまで対策と勘に基づいた個別対応ばかりがされていたため、という指摘もある。
霊夢:
なるほど……立ち止まると確かに危ないもんね。
魔理沙:
そこまでの人密度が高まらないように、根本的な整備を行うという対策法もあるけどな。中々すべての場所でそのような対策をとるまでには至っていない。
こういった転倒事故に遭わないように、「たかが転ぶだけ」と考えず、人が密集したような場所では、どのような危険があるのか、普段から意識して、そのような群衆にはなるべく加わらないようにして、危険を回避することも大事だ。
霊夢:
そうね……。「転ぶくらいで」って思ってたけど、話を聞くとかなり怖い事なんだなってわかったし、私たちも気を付けなきゃね。
魔理沙:
身近なところでは、お祭りや初詣、イベントスペースやコンサート会場なんかに赴く際は、特に注意しないとな。
行列に加わってしまったときは、ある程度間隔をあけて、急に立ち止まったりせず、係員がいるときは指示に従い、自分はもちろん、周りへの安全にも配慮して並ぼう。さてと、今回の紹介はこの辺で終わりにしておくぜ。
身近なところでも発生する可能性のある群衆雪崩。巻き込まれないためには、人が多すぎる場所には近寄らない方がよさそうです。
この解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してください。
[ゆっくり解説]ゆっくり霊夢と学ぶガンダムMS開発史講座 外伝part2