「腰が痛い」原因とストレッチ法はご存知ですか?医師が徹底解説!

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腰が痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
柏木 悠吾 医師

宮崎大学医学部卒業。宮崎県立宮崎病院、宮崎大学附属病院で研修。地元地域に貢献すべく、2022年より橘病院(宮崎県)に勤務。日本医師会認定スポーツドクター。日本整形外科学会、日本骨折治療学会、日本人工関節学会会員。他に日本医師会認定産業医などの資格を有する。

「腰が痛い」症状で考えられる病気と対処法

腰は体の中心であり、どんな動きをする時も関わるため、痛みがあると日常生活がかなり制限されます。老若男女全てに起こりうる症状であり、年齢や性別、痛みの性状、腰痛の場所で考える疾患が異なってきます。ありふれた症状ですが、中には命に関わる疾患が含まれていることがあります。適切な受診の仕方や予防方法など、腰痛との付き合い方を学んでいきましょう。

急に腰が痛い症状で考えられる原因と治し方

前屈みになった際や中腰での作業時などに急に腰痛が生じることがあります。この場合に最も考えられる原因は、急性腰痛症です。筋肉の損傷による筋性・筋膜性の疼痛が原因となっていることが多く、その他、腰椎や靭帯なども原因となりえます。突発的に生じることが多く親しみやすいネーミングのため、ぎっくり腰と呼ばれることもあります。
腰痛が生じた時の対処法は、完全に安静にしすぎるのも良くないと言われており、日常生活程度の運動をしていた方が痛みの経過が良いようです。
基本的に動いた時のみの痛みであり、安静にしている時や夜間就寝時にも痛みを感じるようなら要注意です。思いもよらない疾患が隠れている場合があるため、そのような場合は早めに整形外科への受診をご検討ください。

腰の右側もしくは左側が痛い症状で考えられる原因と治し方

腰の右側もしくは左側の片方のみが急に痛くなる症状を指します。この場合に最も考えられる原因は尿路結石です。
おしっこは腎臓で作られ尿路を通って排泄されますが、腎臓で作られた結石が排尿途中で詰まってしまい、尿路が膨張、伸展され急な痛みを感じます。腎臓は左右に一つずつあるためどちらか片方の疼痛となります。結石が無事に尿とともに排出されない限り、体勢にかかわらず疼痛が持続します。吐き気や嘔吐、血尿、発熱などを伴う場合もあります。
結石が小さければ薬の服用や、飲水量を増やし尿量を増やすことで自然排石されることが期待できますが、大きければ外科的に結石を砕く加療が必要です。血尿などを伴う場合は尿路結石を疑い、泌尿器科を受診しましょう。

腰の痛みとともに発熱がある症状で考えられる原因と治し方

腰痛とともに発熱がある場合を指します。この場合に最も考えられる原因は、尿路結石や化膿性脊椎炎、脊髄硬膜外膿瘍などです。

化膿性脊椎炎・脊髄硬膜外膿瘍

化膿性脊椎炎や脊髄硬膜外膿瘍は、腰の骨やその周囲において細菌感染や膿貯留が見られることがあります。腰の骨のすぐ近くには脊髄もあるため、炎症や膿貯留が進行すれば足の麻痺が起こったり、おしっこが出なくなったり、場合によっては生命にも関わる病態へ進行します。治療は抗生剤による加療が中心となります。腰痛や発熱という症状はありふれているため、受診後もなかなか診断に至らず、症状出現から診断まで平均2-6ヶ月を要したとの報告もあります。腰痛だけでなく、発熱も認めた場合は要注意ですので、内科や整形外科で早めに検査と治療を受けるようにしてください。

成長期に腰が痛い症状で考えられる原因と治し方

中学生や高校生など成長期においてみられる腰痛のことを指します。この場合に最も考えられる原因は腰椎分離症と言い、腰の骨の疲労骨折を認めることがあります。成長期の子供は体が柔らかく骨が未発達であるため、スポーツの練習などで繰り返し腰に負担をかけることで発症する例が多く報告されています。サッカーなどスポーツ選手の約30%が腰椎分離症であるともいわれています。初期の段階での腰椎分離症はコルセット加療にて治癒可能です。しかし進行例は骨がくっつかなくなり腰痛持ちになるなど後遺症として残ってしまいます。腰椎すべり症(骨がずれる)となり足の痺れや麻痺を生じる場合もあります。そのため初期に発見することが大切です。スポーツをしている成長期の子供は、腰痛が生じた場合に整形外科を受診し、一度レントゲン撮影を受けてみましょう。

女性で腰が痛い症状で考えられる原因と治し方

一般的に女性は、閉経後に女性ホルモンの関係で骨が弱くなってしまう方が多いです。尻餅などの軽い外傷で骨折を起こしてしまうような状態を骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と言います。
腰の骨が潰されるように折れると腰椎圧迫骨折と呼ばれます。骨粗鬆症があると圧迫骨折が起きやすくなります。
圧迫骨折は「いつの間にか骨折」とも言われている程、1ヶ月ほどで痛みが勝手に軽快し、病院を受診されない方が多いです。慢性的な腰痛の原因となり得ます。また脊椎が縦に潰れ、身長低下や亀背(背中が丸まる)が起こります。脊椎のすぐ後ろには脊髄という神経が通っているため、足の麻痺やおしっこが出なくなるなどの怖い症状も起こり得ます。
転んだりしていない場合でも、腰痛が長引く時は整形外科を受診し、レントゲン撮影を行って下さい。

すぐに病院へ行くべき「腰が痛い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

前触れのない急な腰痛の場合は、循環器内科へ

腰痛は運動後や外傷後に起きることが多いですが、主な誘因なく前触れもなく生じることがあります。大動脈解離、腹部大動脈瘤などの血管由来の疼痛に注意したいところです。
大動脈乖離は大動脈の内側の膜が裂け、血管の壁が剥がれるように裂けていく疾患です。突然の激しい裂けるような痛みがあり、解離が進むにつれ疼痛の箇所も広がり移動します。
腹部大動脈瘤は、心臓から全身へ血液を送る太い血管(大動脈)がこぶのように病的に膨らんだ状態を指します。持続的な腹痛や腰痛などが生じる場合があります。
主な診療科は循環器内科です。どちらも高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙など生活習慣によってリスクが上がります。また、トイレで息む時や、気温差が激しい時など血圧の変動が起こりやすい状況で起こる可能性が高いです。緊急性があり、生命に関わりますので、前触れもなく突然の激しい痛みがあればすぐに救急車を要請しましょう。

「腰が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「腰が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

椎間板へルニア

腰椎と腰椎の間にあるゲル状の組織を腰椎椎間板と呼びます。圧を分散させるクッションの機能を果たし、椎体を保護しています。加齢性の場合が多いですが、椎間板への負担が強い方(肥満、筋力低下、ストレッチ不足など)は若年においても椎間板に亀裂が入り、その一部が、そばにある神経の方へ突出し神経の通り道が狭くなってしまいます。そのような状態を腰椎椎間板ヘルニアと呼びます。坐骨神経痛も生じます。主な診療科は整形外科です。
痛みやしびれのみであれば、投薬のみで症状を和らげ、手術をせずにヘルニアが自然に消失する可能性も十分ありますが、力が入りにくい時や尿が出にくくなるなどの症状があれば要注意です。早めの受診をご検討下さい。

腰部脊柱管狭窄

脊髄は脊柱管という管の中を通っています。脊柱管の周囲には、腰椎や椎間板、靭帯などがあり、これらが脊柱管を圧迫し脊髄の通り道を狭窄させてしまうと、腰部脊柱管狭窄症と呼ばれます。加齢や重労働などの負担、腰の骨の骨折などが原因となることが多いです。主な診療科は整形外科です。長距離歩くと太ももから両足の全体に鈍痛やしびれなどの症状が生じ、前屈みで歩行すると楽になったり、休憩するとすぐ軽快したりします。腰椎椎間板ヘルニアと同様に、体幹筋(腹筋、背筋)の低下や、体重増加が増悪の要因となることがありますので、日ごろからの適度な運動が推奨されます。また、女性の場合、骨粗鬆症が進むとともに骨の変形も進み、腰部脊柱管狭窄症になり得ますので、60歳を過ぎたら定期的な骨密度検査を受け、骨粗鬆症予防を行って下さい。

膵臓がん(すいぞうがん)

膵臓(すい臓)は、お腹の臓器の中でも背中に近いところ(後腹膜)に位置しているため、すい臓に異常があると腰痛を生じることがあります。
すい臓がんは、初期は症状が出にくく、早期発見が難しく、遠隔転移もしやすいため悪性度の高い癌です。腰痛の性状は、波がなく持続する痛みであることが多く、軽快しません。その他、腹痛やお腹の張り、黄疸、体重減少などの症状が出ます。採血検査やお腹のCTを撮影し診断します。
よく聞くぎっくり腰だけでなく、腰痛にはこのような内臓が原因となる病態が隠れていることがあるため、症状が当てはまる場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。

「腰が痛い」ときの正しい対処法は?

注意しなければいけない腰痛の特徴をおさえましょう。腰痛症のガイドラインでは、

・①20歳未満または50歳以上

・②時間や活動性に関係のない腰痛

・③胸部痛

・④がん、ステロイド治療、HIV感染の既往

・⑤栄養不良

・⑥体重減少

・⑦広範囲に及ぶ神経症状

・⑧構築性脊椎変形(せぼねが曲がる)

・⑨発熱

この9項目を危険信号としています。
これらにあてはまる場合は、頻度は低いのですが、内臓由来の疾患が隠れていることがあります。当てはまる場合は内科を受診して下さい。
ぎっくり腰など筋肉が原因の腰痛であれば、市販の鎮痛剤を使用しても構いません。主な市販薬は、ロキソニンSやラックル、タイレノールAなどの内服薬です。湿布や塗布剤での消炎鎮痛剤でも構いません。日光に当たると湿布かぶれを生じやすいのでお気をつけください。安静にしすぎると疼痛が長引く場合がありますが、日常生活程度の活動なら問題ありません。一般的に症状が出始めたばかりの時期は冷やし、慢性化した症状の場合は温めましょう。

「腰痛」予防の正しいストレッチ法は?

立位体前屈で手の平は床にピタッと着くでしょうか?できないようならば、太腿裏(ハムストリング)の硬さから腰椎に負担がかかって腰痛の原因となっている場合があります。
ジャックナイフストレッチと呼ばれるストレッチ方法が推奨されています。
足を肩幅に広げてしゃがみ、両足首をそれぞれの手でつかみます。胸と太ももを密着させたまま徐々に膝を伸ばしていきます。ハムストリングが張っていることを感じながらストレッチを行いましょう。
その他では、腰痛体操と呼ばれるストレッチや体幹トレーニングがありますので自分にあう運動を取り入れましょう。

「腰が痛い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「腰が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

急な腰の痛みはぎっくり腰でしょうか?何科で治療できますか?

柏木 悠吾 医師

ぎっくり腰の場合は慣れない運動や重量物をもつなど思い当たる誘因があることが多いです。誘因なく突然現れる腰痛は思いもよらぬ疾患が隠れている場合があります。誘因がなく突然発症する腰痛で安静時にも痛みがある場合は内科を受診しましょう。

前にかがむと腰が痛いのは、何が原因となるでしょうか?

柏木 悠吾 医師

前にかがむ時は腰の筋肉に負担がかかるため、筋性の疼痛である場合が多いです。整形外科が主な診療科となります。

腰を反ると痛いのですが、どんな治し方がありますか?

柏木 悠吾 医師

腰を反る時は、腰の骨、関節に負担がかかりますので、骨の変形や軟骨の消失がみられるかもしれません。整形外科で診察を受けてください。内服薬での対応もありますが、減量や体幹筋のトレーニング、ストレッチ加療などのリハビリテーションをお勧めします。

腰が痛い症状が内臓や腎臓の疾患が原因ということは考えられますか?

柏木 悠吾 医師

筋肉や骨、関節由来の疼痛より頻度は低いですが、充分考えられます。上記の危険信号の9項目に当てはまる場合は要注意です。

腰の痛みを運動後に発症した場合の原因と対処法を教えてください。

柏木 悠吾 医師

骨粗しょう症がある方は腰椎圧迫骨折、10代のスポーツマンは腰椎分離症などの可能性もあり初期の段階での治療が重要となりますので、初発の腰痛で原因がわかっていないときは整形外科受診をお勧めします。

まとめ

腰痛はありふれた症状であり、84%の人が生涯のうちに経験すると言われています。腰痛の原因は多岐に渡り、危険な疾患も含まれています。わが国の腰痛ガイドラインにて前述の危険信号9項目が明記されていますので当てはまる場合は早めの受診を心がけてください。

「腰が痛い」で考えられる病気と特徴

「腰が痛い」から医師が考えられる病気は17個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

急性腰痛症

化膿性脊椎炎

脊髄硬膜外膿瘍

腰椎分離症

腰椎すべり症

腰椎圧迫骨折

腰椎椎間板ヘルニア

腰部脊柱管狭窄症

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎後縦靱帯骨化症

頚椎すべり症

外傷性頚部症候群

頚性頭痛

泌尿器科の病気

尿路結石

循環器内科の病気

大動脈解離

腹部大動脈瘤

消化器内科の病気

すい臓がん

腰の骨に関わるような整形外科の病気が多いのですが、内臓の病気でも腰が痛くなるため注意は必要です。

「腰が痛い」と関連のある症状

「腰が痛い」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

生理前の腰痛左腰の痛み尾てい骨の痛み右下腹部の痛み背中の右側が痛む左の背中が痛い

動くと腰が痛い

腰が熱い

立ち上がることができない

背中が痛い

歩くことができない

「腰が痛い」の他に、これらの症状がある際は、「急性腰痛症」「大動脈解離」「尿路結石」「腰椎椎間板ヘルニア」「腰椎分離症」などの疾患の可能性が考えられます。ケガなどのエピソードがなく、急激に腰が痛くなるような場合は早めの医療機関への受診を検討しましょう。

【参考文献】
・腰痛診療ガイドライン 2019(日本整形外科学会診療ガイドライン委員会)
・腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021(日本整形外科学会)
・腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(日本整形外科学会)