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初代Osmo Actionの発売から3年、Osmo Action 2(以下:OA2)の発売から1年待たず「Osmo Action 3」(以下:OA3)が発売された。多くの方々が初代Osmo Actionの後継機を待ち望んでいたなかで、OA2の発売から1年も経たないうちにOA3のシルエットのみが先行発表されたために、「縦型なのか?」といった観測もあったが、蓋を開ければ安定の初代のスタイルで、スマホ等で多く用いられる縦映像表示にも対応できるように、垂直マウントも簡単に行えるようになった。

ということで、今回使用感等を簡単に説明していこうと思う。

4K/120fpsと1080P/240fpsのハイフレームレート撮影

OA3の発表でやはり一番の注目点は、4K/120fpsというハイフレームレートで撮影ができるようになったことだ。1080P/120fpsで撮影できるカメラは、最近であればアクションカメラでなくとも多く存在しているが、こと4K/120fpsで撮影できるカメラとなると現在でも価格は跳ね上がる。それをこの価格帯のアクションカメラで実現できたのは素晴らしいことだと言えるだろう。特に需要が多いと思われるエクストリーム系のスポーツ等では重宝されることは間違いない。

最大4K/120fpsの撮影に対応
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また、ハイフレームレートで撮影を行えば編集時の演出の幅が格段に増える。特に1080P/240fpsでの撮影は、画角サイズが4Kから1/4になるとはいえ、秒間24フレームでは10倍スロー、秒間30フレームなら8倍スローで撮影できることはうれしい限りだ。ただ、ハイフレームレートでの撮影には「熱による障害」がつきものになる。特に小型のアクションカメラは放熱性が良くない分、撮影時には気をつけなければならない。冬山や水中でなら気にならない場合でも、夏場などの直射日光が当たる場所での使用では、OA3でも十分な注意が必要だ。

強力なブレ補正と水平保持(RockSteady 3.0・HorizonSteady・HorizonBalancing)

4K/120fpsでの撮影は確かに大きなポイントではあるが、筆者的には実はブレ補正と水平保持もとても魅力的に感じている。ジンバル系のカメラとは違いメカニカルにブレを抑制するため、撮影には慣れが必要な場合が多いと思うが、OA3には新世代の電子映像ブレ補正「RockSteady 3.0」が備わり、4K/120fpsでの撮影でも、滑らかにブレのない映像を気軽に撮影することができるようになっている。

今回テストしたシチュエーションでいうと、車のフロントに据え付けて4K/120fpsや1080P/240fpsで撮影した時にRockSteady 3.0をON/OFFして比較をしてみた。撮影素材を再生して確認したが、撮影時のフレームレートで再生した場合ではどれも気にならなかったブレが、29.97fpsで確認するとRockSteady 3.0をOFFで撮影したものは、アスファルトからの細かな入力による小刻みな振動がはっきり確認できたが、ONの状態の時には無駄な振動を一切感じない滑らかな心地よい映像が撮影できていた。

スタビライズ機構にRockSteady 3.0やHorizonBalancing、HorizonSteadyを搭載

それに加え水平を保持する「HorizonSteady」と「HorizonBalancing」がまた強力である。水平の保持は特にジンバルを使ったカメラの方が強力だと思われるが、OA3は制限があるもののジンバルを使わなくても同じように撮影できる。まずHorizonSteadyは、撮影を開始した時点での水平を保持するものだ。撮影開始後に転倒などでカメラが回転してしまった場合等に有効な機能で、動作の上限は1080P/60fpsとなっている。

続いてHorizonBalancingは、OA3の水平傾きが±45°まで水平を保持するもので、回転まではいかないまでも、斜めになる状況が予想される場合に設定しておくと水平を保持した映像が撮影できる。HorizonBalancingの動作の上限は4K/60fpsとなっており、4Kでも水平を保持した映像が撮影できるのは魅力的だ。

思い通りの露出・色温度設定と優れたAUTO機能、そしてより広くデジタルズームまで

露出や色温度の設定等は初代Osmo Actionを踏襲しているが、当然機能アップは図られている。初代のCMOSのセンサーサイズは1/2.3インチ、OA3のCMOSセンサーは1/1.7インチと大型化が図られ、ISO感度の上限も12800となっており、初代の3200から12800と2段分上がっている。AUTOでは、ISO100から一段ずつの幅で設定を行うことができ、EVでも±3までを1/3段ずつ調整することができる。

「Proモード」を利用すると、露出、FOV、ホワイトバランス、フォーマットといった設定が利用可能になる

色温度のマニュアル設定も2000Kから10000Kまでを100K刻みで設定することができるが、色温度をAUTOに設定すると、10K刻みでより細かく適切な色温度に設定してくれるのもありがたい。露出と色温度のAUTOがより充実したことにより、編集作業の軽減はもちろん、ライブ配信等での露出や色温度の調整不足等も格段に減ることだろう。

ホワイトバランスは自動モードとマニュアルモードが利用可能
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また、FOVは初代から10°ほど拡張された155°の「超広角」と「広角」、歪み補正を利かせた「標準」と画角を変えることができ、そこにデジタルズームを搭載。デジタルズームはほとんどの画角サイズとフレームレートで2倍だが、1080P/60fpsで水平保持機能を有効にしている場合は3倍、RockSteadyがON/OFFの場合で4倍の倍率までズームが可能。

FOVは、「標準(歪み補正)」「広角」または「超広角」に設定可能

そしてOA3はレンズ保護カバーを外すことができるため、サードパーティー性のNDやフィルター、マクロレンズ等を装着することで、様々なシーンでの撮影に対応できるようになっている。

強化されたバッテリーと急速充電、そして格段に向上した操作性

アクションカメラは長時間の撮影を要求されることも多いわけだが、給電できない状態で2時間を超える撮影が行えるのもOA3の特徴だ。もちろん録画設定は制限されるわけだが、1080P/30fpsで最長160分の撮影が可能だ。

USB3.0での給電を行う場合、初代ではUSB3.0のポートとmicroSDスロットが同じ場所にあったため、microSDスロットがむき出しになっていたが、OA3ではUSB3.0ポートだけ独立しているので、障害が起こりにくくなっている。本体のUSB3.0のポートでは給電だけでなく18分の充電で80%の急速充電が行え、様々なシチュエーションでの撮影用途が広がる。

左からバッテリーを搭載した状態、バッテリーを抜いた状態、SDカードを抜いた状態
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OA3ではUSB3.0ポートだけ独立して搭載

そして大きなアップグレードとして、操作性の向上もあげておきたい。OA3では背面の液晶でのタッチ操作はもちろん、前面の液晶でも操作が行える。例えば、背面で操作ができない場合でも前面で同じように操作が可能で、DJI Mimoでも遠隔で操作を行えるので設定や操作でのストレスを格段に軽減してくれる。また、音声による録画開始に停止、写真撮影とシャットダウンの4つの操作を行える。ただし、現状では英語と中国語の二言語のみの対応。

その他に現在の動作状態を音声で読み出す機能もあり、至れり尽くせりといった感じだ。

カメラの電源を入れると、タッチ画面にはライブビューが表示される。撮影モード/バッテリー残量/microSDカードの情報が表示されている
下にスワイプすると、操作メニューに移行する
前面のタッチ画面にも操作メニューを搭載

縦位置にも対応、強力なマグネットで素早く固定。様々なアクセサリーが使える

スマホでもサイネージ等でも、縦型の画面での撮影や視聴が増えてきているなか、一早く横位置と縦位置の双方にOA3は対応している。横位置は「保護フレーム」を介さず「クイックリリースアダプターマウント」を装着することができ、縦位置で装着する場合は保護フレームを装着した上でクイックリリースアダプターマウントを装着すると縦位置での固定ができる。

下部にクイックリリーススロットを搭載
Osmo Action 3クイックリリース式アダプターマウントと組み合わせた状態
標準搭載のOsmo Action 3保護フレームと組み合わせた状態(前面)
Osmo Action 3保護フレームと組み合わせた状態(背面)
Osmo Action 3保護フレームを垂直取り付けにした状態

クイックリリースアダプターマウントはマグネットの磁気極性があるために、正しい方向で簡単に装着、確実に固定することができ、DJIが用意するもの以外にも様々なアクセサリーを使って、横位置、縦位置の撮影が行える。

今までアクションカメラを使ってなかった人にぜひ使ってもらいたいOsmo Action 3

上記で紹介しきれなかった機能がいくつかある。音声の収録に関してもモノラルからステレオになり、風によるノイズの低減や、外部マイクも使用でき、Webカメラにもなる。そしてDJI Mimoを介してライブ配信等を行えたり、編集時にアドバンテージがある「インビジブルスティック」などの機能に、当然水中撮影も防水ケースを使わずに水深16mまでの防水を実現しており、様々な拡張性を秘めているように思う。

為替等の影響もあり、初代Osmo Actionから比べると若干高く感じるかもしれないが、機能的にはむしろ安くなっていると思える部分が大きい。また、販売パッケージも必要最小限の「スタンダードコンボ」と拡張性の高い「アドベンチャーコンボ」が用意されていて、それぞれスタンダードコンボが税込47,300円、アドベンチャーコンボが税込66,000円となっている。

非同梱品のDJIフローティングハンドルと組み合わせた状態

今回のテストで、とことん使い込んだというわけではないが、初代Osmo Actionの良い点がそのまま拡張され、使いづらかった点等をよりよく改善してきたのがOA3だと言えるだろう。

ぜひこれまでアクションカメラを敬遠してこられた方々には、OA3を使っていただきたいと思う。今回OA3使用したなかで思ったのは、鉄分の多い人達にぜひ使ってもらいたいということだ。例えば、前面展望を撮影するためにカメラを固定できない状況はたくさんあると思うが、OA3のブレ補正や水平保持機能などを使って、手持ちでも固定状態に近い映像が撮影できるだろう。

小山田有作|プロフィール
「you-arts」の屋号で映像の仕事を始めて20年。企業PVやセミナービデオなどを中心に、ディレクションから撮影、編集に2DCGの作成などを行っている。スチルの撮影もこなし、現在はYouTubeの番組制作も携わっている。