エンジンも日本製 純国産機OH-1「ニンジャ」初飛行-1996.8.6 攻撃ヘリっぽいけど観測用
映画『シンゴジラ』でもAH-1S「コブラ」とともに出演していました。
設計開始からわずか3年で初飛行に成功
1996(平成8)年8月6日、川崎重工が開発した陸上自衛隊向けの観測ヘリコプターOH-1が初飛行しました。なお、陸上自衛隊では本機に「ニンジャ」という愛称を付けています。
OH-1は、エンジンを含めオール日本製の純国産ヘリコプターなのが特徴です。なお、日本初の純国産ヘリコプターは三菱重工が開発した民間向け「MH2000」であるため、OH-1は2例目になります。
陸上自衛隊のOH-1観測ヘリコプター(画像:陸上自衛隊)。
従来、陸上自衛隊は小型の観測偵察ヘリコプターとして、アメリカのヒューズ社(現MDヘリコプター)が開発したOH-6シリーズを長らく使用していました。同機は川崎重工でライセンス生産され、初期のJ型、改良型のD型あわせ陸上自衛隊だけで300機以上を導入しています。
ただ、2000年代を見据えたとき、より優れた観測偵察機器を積んだ新型ヘリコプターが必要と目され、新型機の導入が検討されるようになりました。そのなかで国産開発の機運が高まったことから、生まれたのがOH-1です。
計画は1992(平成4)年から本格化し、川崎重工を中心に富士重工と三菱重工が協力する形が採られます。設計は1993(平成5)年から始まりましたが、日本の航空機メーカーの総力を結集する形でわずか3年で終了、前出したように1996(平成8)年8月6日に初飛行に成功したのです。
その後、各種試験ののち、1997(平成9)年には陸上自衛隊が制式採用。2000(平成12)年には量産1号機の引き渡しが行われました。
優れた飛行性能が自慢、でも価格高くて調達数は伸びず
OH-1は観測ヘリコプターとはいえ、隠密性や生残性を高めるために、AH-1「コブラ」やAH-64「アパッチ」といった攻撃ヘリコプター(戦闘ヘリコプター)に似た外観をしているのが特徴です。
乗員は2名で、コックピットは、いわゆるタンデム配置と呼ばれる、前後に乗り込む形をとっています。これにより胴体幅は約1mに抑えられており、前方レーダー反射面積の抑制や目視での被発見率低下を図っています。
陸上自衛隊のOH-1観測ヘリコプター(画像:陸上自衛隊)。
観測装置(索敵サイト)はコックピット後方上部、メインローター基部前方部分に配置されています。このサイトは赤外線暗視装置やTVカメラ、レーザー測距装置などからなる複合型となっており、昼夜問わず警戒監視が可能です。
4枚翼のメインローターは、川崎重工が独自開発した無関節(ヒンジレス)ローターハブ構造で、これにより優れた操縦応答性を確保しています。加えて尾部ローターも安全性と静粛性の高い構造をしているほか、高性能な自動操縦装置を装備しているため、パイロットが操縦装置から手を放しても自動的にバランスを取ってホバリング(空中停止)することができます。
ただ、高性能を追求した弊害で、調達コストも上昇してしまい、結果的に生産は38機(試作機含む)で終了しています。そのため、OH-6D全機の更新はできなかったほか、データリンク装置を搭載していなかったため、リアルタイムでの情報共有ができないなど、現代戦に対応できない部分が出てしまいました。
その後、事故により1機を失いましたが、2022年現在も37機が全国各地の陸上自衛隊飛行場に分散配置され、運用されています。