エアバスA350=「パソコン飛行機」たる所以? 「操縦席巨大モニター」のスゴイ機能とは JAL機長に聞く
JAL初の新造エアバス機である「A350-900」は、6枚の大型モニターが並ぶのがコクピットの大きな特徴です。同機を担当するパイロットに聞いたところ、このモニターには優れた機能が多数備わっていました。
ウェザーレーダーもひと味違う!
JALが2019年に初めて新造導入したエアバス機「A350-900」、そのコクピットは6枚の大型モニターが並ぶのが大きな特徴です。このモニター画面には、エアバスの新鋭機らしい機能が多数備わります。その機能の一部を、同社のA350パイロット、仲本大介機長に聞くことができました。
エアバスA350-900型機のJAL初号機のフェリーフライトの様子。このフライトでは、仲本機長も操縦を担当した(2019年6月14日、伊藤真悟撮影)。
仲本機長はこれまで乗務してきた旅客機(ボーイング737)と比べ、エアバスA350の違いのひとつとしてモニターを挙げています。
「モニターの数や大きさもこれまでと違いますが、A350の場合は、一部のモニターをタッチパネル式で動かすことができますし、画面の内容を別のものに切り替えることもできます。またPCで用いるようなキーボードのほか、トラックボールもついていて、マウスのように動かすことができます。この機能を使って、ナビゲーションディスプレイ(飛行機の飛行すべき経路など表示する。自動車のカーナビに相当)の行きたい方向に線を引くこともできます。A350は『パソコンのような飛行機』ということができるでしょう」(仲本機長)
また、A350のコクピット画面に表示されているウェザーレーダーには、通常の平面表示のものだけでなく、断面も表示される高機能なものが導入。当該機が積乱雲などの上下を問題なく通過できるかがすぐわかる機能を備えているといいます。それに加え仲本機長は「レーダーの断面表示を左右に振ることができるので、どちらにいけば雲が少ないかを見ることができますし、高度ごとに切って表示することなども可能です」と話します。
「航空路図」「着陸進入」の画面もスゴイ!
仲本機長によると、A350のコクピットモニターには、航空路などが記載されている航空路図「エンルートチャート」がデータとしてすべて入っているそうです。
「長い飛行でもスクロール操作で自分の場所がわかりますし、キーボードで検索をかけたりなどができます。どこどこで揺れている!といった情報を受けた時、その場所がどこなのかをすぐに呼び出すこともできます」(仲本機長)
従来機であればエンルートチャートは紙やタブレットで読むことが一般的でしたが、コクピットモニターに備わったエンルートチャートは「GPSなどを用いた正確な位置情報などもついているので、それよりも一段正確な情報を用いて飛ぶことができます」とのこと。「自動車でいうと地図アプリを見ながら飛ぶことができるイメージです」といいます。
JALの仲本大介機長(松 稔生撮影)。
旅客機は着陸進入のとき、着陸する空港、滑走路側の条件や天候などにあわせて、10パターン程度にものぼる進入方法から都度手段が選ばれます。こうしたケース、A350のコンピュータはどう判断するのでしょうか。
着陸進入のもっとも一般的な手段のひとつが、滑走路から発せられる縦方向と横方向の電波をガイドに着陸する「ILSアプローチ」。これは左右、上下の電波ガイドがあることから”精密進入”と称されます。対し、条件によっては、たとえば精度がILSのものより低い横方向のみの電波を用いて着陸進入を行う「VORアプローチ」など、いわゆる上下左右方向のガイドがない「非精密進入」を実施しなければならないケースも発生します。仲本機長によると、後者の非精密進入の際も、A350のコクピットモニター上ではILSと同じような表示をする機能が採用されているとのこと。
「パイロットとしては、どのような方法で着陸進入をする場合でも、”同じような見え方”で操作ができるということにつながりますので、とても便利に感じます」(仲本機長)
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このほか、A350のコクピットモニターには、全席に備わった客席モニターの機能のひとつ「機外カメラ」を活用し、地上走行時に機外の様子を確認できる「タクシーカメラ」としてモニターに放映できる機能も備えます。仲本機長は「あまり広くない誘導路や、これから(2023年からJALでは胴体延長型のA350-1000を国際線に導入する)不慣れな空港へ行くことも多い国際線を就航するにあたり、尾翼カメラを使って操作ができるのは便利で安心な機能になってくるのではないでしょうか」と話します。