今夏、3年ぶりに古巣ガンバに復帰した食野。大阪ダービーでさっそくピッチに立ち、“らしい”プレーを見せた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1第22節]G大阪 1−2 C大阪/パナソニックスタジアム吹田/7月16日

 23年ぶりのシーズンダブルを許し、今季セレッソ大阪との公式戦は1分3敗という未勝利に終わったガンバ大阪。勝てば官軍、負ければ賊軍、となる大阪ダービーで力負けを果たした直後、片野坂知宏監督は、懸命にポジティブな要因を見出そうとしていた。

「今までだったらもう少し守る、防戦一方になりそうなゲームもありましたが、今日のゲームに関しては、後半少し(食野)亮太郎や(倉田)秋や(坂本)一彩を入れて、盛り返してチャンスを作ってくれたところは今後につながる」

 レアンドロ・ペレイラとウェリントン・シウバは明確な個の強みを持つ一方で、指揮官は自らが求める基準にこだわるがゆえに外国人枠は機能不全中。サブメンバーに2種登録のユース組、南野遥海を入れざるを得ない苦しい台所事情が続いていたG大阪だが、C大阪戦では鈴木武蔵が先発し、食野はベンチスタート。久々にサブメンバーが充実するなかで迎えた大阪ダービーで、3年ぶりのJリーグ復帰となる食野は、手薄な攻撃陣を活性化しうる存在であることを短時間で示して見せた。

 合流して日も浅く、連戦が続くチームメイトとは連係を合わせる時間は皆無に近かったが78分に、坂本一彩のパスを受けた食野は左サイドから得意のカットインを見せ、右足を一閃。求められるプレーの一端を披露した。

 もっとも、痛恨の逆転負けを喫し、タイムアップの笛を聞いた瞬間、食野はがっくりと両膝を付き、悔しげにピッチを叩いていた。

「あそこを決めきれなかったことが全てだと思いますし、あそこを決めていた2−1で僕たちが勝てた試合だったかもしれないのでサポーターの皆さんに申し訳ないです」

 アカデミー育ちの選手だけに、大阪ダービーが持つ意味の重みは言われなくても自覚済み。7月12日に行なわれた復帰会見でも「ダービーで負けることだけは許せない。そこは強調していきたいですし、もし出場の機会があったら、全力で勝利に向かっていきたい」と食野は話していた。

 それだけにわずか3分あまりのミックスゾーンの取材の中で「申し訳ないです」と三度、口にした食野は時折、言葉を詰まらせるほど自らを責めていた。
 
 パナソニックスタジアム吹田での大阪ダービーでは5連敗となり、かつてのG大阪では考えられないほどダービーでの負け癖が付きつつあるのも事実だが、G大阪が持つべきプライドを知る食野は、最悪の形で迎えた再デビュー戦を必ず、プラスのエネルギーに変えるはずだ。

「やっぱり僕は青黒で育って、青黒の人間ですし、ホンマにガンバのために一つでも多くのゴールとアシストで貢献したいですし、もう一回強いチームにしたいという思いがあるので今日は本当に申し訳ないです」

 クラブ幹部は手薄なボランチへのテコ入れとしてボールを動かせるタイプのボランチの補強の必要性を語っているが、前線の活性化は鈴木と食野の早期フィットにかかっている。

取材・文●下薗昌記(サッカーライター)

【PHOTO】古巣復帰後即出場!果敢な突破で持ち味を発揮した食野亮太郎!