20歳未満の人に酒を飲ませたらどうなる?

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 吉川赳衆院議員が18歳の女子大学生と飲酒した上、高級ホテルでともに過ごしていたことが6月に週刊誌で報じられ、ネット上などで批判が殺到しました。週刊誌の取材に対し、女性は自身が18歳であることや、吉川氏に勧められて飲酒したことを認めたほか、吉川氏から4万円の小遣いをもらったことを証言しています。一方、吉川氏は、「女性が20歳以上だったと思っていた」などと週刊誌側に文書で説明したとされていますが、この問題が発覚後、所属先の自民党を離党しており、その後、公の場に姿を見せていません。

 そもそも、20歳未満の人に酒を飲ませた人は、相手を20歳以上だと思っていた場合でも法的責任を問われるのでしょうか。子どもの権利・法律問題に詳しい、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

親や監督代行者以外は罪に問われず

Q. 20歳未満の人に酒を飲ませた場合、飲ませた人は法的責任を問われるのでしょうか。

佐藤さん「飲ませた人がどういう立場にあるかによって異なります。『20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律』(旧『未成年者飲酒禁止法』)では、親には未成年者の子どもが飲酒しているのを知ったら制止する義務があり(同法1条2項)、飲酒を知りながら制止しなければ、科料(軽微な犯罪に科する財産刑、金額は1000円以上1万円未満)に処すとされています。

また、親に代わって監督する者(監督代行者)についても、親と同様の義務と罰則が定められています。監督代行者とは、『親権者に準じ、または親権者に代わって一般的、総合的に未成年者を監督すべき立場にある者』です。例えば、地方から出てきた未成年者を下宿させ、同居して面倒を見る親戚や知人、未成年者を住み込みで働かせている店の雇い主などが監督代行者に当たると考えられます。

一方、未成年者の日々の生活を監督する立場にはない、単なる先輩や会社の上司などは監督代行者には当たりません。従って、親や監督代行者が子どもに酒を飲ませた場合、罪に問われる可能性がありますが、それ以外の人の場合は、日常的に面倒を見ているなどの特段の事情がない限り、罪に問われることはないと考えられます。

ただし、20歳未満の人に酒を飲ませたり、飲み会で同席しながら飲酒を制止しなかったりする行為は望ましいものではなく、さまざまな社会的責任を追及される可能性があるでしょう」

Q.それでは、知人などが、20歳未満の人だと知らずに酒を飲ませた場合、あるいは相手が20歳以上だと身分を偽っていた場合は、飲ませた側は社会的責任を追及されるでしょうか。

佐藤さん「親権者や監督代行者でない単なる知人などが、相手が20歳未満だと知らずに飲ませた場合や、相手が20歳以上だと身分を偽っていたために飲ませてしまった場合には、法的責任はもちろん、社会的にも道徳的にも、強く非難するのは難しいのではないでしょうか」

Q.酒を飲んだ20歳未満の人は法的責任を問われるのでしょうか。また、20歳以上だと身分を偽って飲食店で酒を飲んだり、小売店で酒を購入したりした場合はどうですか。

佐藤さん「20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律は20歳未満の者の飲酒を禁じていますが(同法1条1項)、違反した20歳未満の人に対する罰則は定めていません。この法律は20歳未満の人の健全な育成を目的としているため、20歳未満の人を罰するのではなく、親など周りの大人に対して罰則を科す仕組みとなっています。従って、20歳未満の人が飲酒したとしても処罰されることはありませんし、20歳以上だと身分を偽って飲食店で酒を飲んだり、小売店で酒を購入したりしても、本人が何らかの法的責任を追及されることはないでしょう」

Q.小売店や飲食店が20歳未満の人に酒を提供した場合、法的責任を問われるのでしょうか。利用者が20歳未満でありながら「20歳以上」だと身分を偽るケースもありますが、その場合も責任を問われるのでしょうか。

佐藤さん「20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律は、お酒を取り扱う小売店や飲食店などの店に対し、20歳未満であることを知りながらお酒を売ったり、提供したりすることを禁じており(同法1条3項)、これに違反した場合、50万円以下の罰金に処せられます(同法3条1項)。

店側が20歳未満であることに全く気付かなかった場合は『20歳未満であることを知りながら』に当たらないため処罰されませんが、これらのお店には、20歳未満の者の飲酒を防止するため、年齢確認など必要な措置を講じる義務が課せられています(同法1条4項)。『20歳未満の人が飲酒するかもしれない』程度の認識であっても『知りながら』に当たり、処罰される可能性があるため、店側は身分証の提示を求めるなど年齢確認を徹底する必要があるでしょう。

なお、20歳未満の者に酒を提供して罰金刑を科された場合、酒類販売業の免許が取り消されることもあります」