どうなる衆院選!?前代未聞のコロナ禍で100年に1度の選挙となるか - 毒蝮三太夫

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※この記事は2021年10月27日にBLOGOSで公開されたものです

衆院選、どうなるのかねぇ…。まず自民党だけど、新総裁・岸田さんは安倍・麻生にすっかり押さえつけられてる印象だな。これまで自公政権が引きずってきた「負の遺産」をそのまま継承してる感じだ。岸田さんって「私は人の話をよく聞く」って言ってたから、それに関してはちょっと期待してたんだ。

だけどさ、あちこちから質問される度にお茶を濁すような回答ばかり。まるで安倍・麻生に忖度するマスクをつけて、言うことにフィルターをかけて喋ってるみたいだもの。今は誰もアベノマスクをしてないけど、岸田さんだけ見えないアベノマスクをしてるみたいだよ…(苦笑)。

岸田さんの新内閣、あれなら、人の話を聞くふりだけうまい「聞くふり内閣」だよな。だったらさ、「私は人の話をよく聞く、とくに安倍さん麻生さんの話をよく聞く」って、前もって言っといてほしかったよ(苦笑)。

総裁選だけ威勢が良かった岸田総理

先月の自民党総裁選のときは岸田さんも威勢が良かった。さまざまな公約を掲げてたよな、編集部。

編集部)はい、「令和版所得倍増」「金融所得課税の強化」「健康危機管理庁創設」「役員任期3期までの党改革」などなどです。

岸田さん、せっかく自民党のトップに上り詰めたのに、衆院選での自民党公約ではそれらを加えてないんだろ。自分で言ってたことなのに、どうしてあっさり引っ込めちゃったんだろ。岸田さんって「人の話をよく聞く」って言いながら「自分の話はよく聞かない」の?

だってそうだろ、自分の話をよく聞くなら、自民党総裁として自身の政策や主張を党の公約に盛り込んで当然だよ。だけどそれをしない。たった1カ月かそこらで「言うだけ」の人になってる。

あと、自公政権が残してきた負の遺産――、「森友学園」や「桜を見る会」など一連の問題に関しても、結局、岸田さんになって何も変わらずだ。

編集部)それらの問題に関しての岸田総理ですが、森友問題の再調査については「国会などで説明を行ってきた」、甘利幹事長の現金授受問題に関する説明責任については「政治家自身が判断すべき」、日本学術会議の会員候補を菅政権が任命拒否した件については「人事に関することなので答えは控える」と、菅政権から前進する答弁はとくにありませんでした。

岸田さんになって何かが変わる期待はしぼんでいくばかりだな。グレイだったものがそのままグレイ。白か黒かハッキリさせる気配ゼロ。俺は、河野太郎さんを推してた。いまさらながらだけど河野さんがトップになってたら、もう少し蛮勇を振るう姿が見られたんじゃないかって思うよ。

岸田さんに期待するとしたら、口に張り付いてる見えないアベノマスクを1日も早く外して、政治家として自分自身の政治をやってほしいね。

岸田さんは東京生まれだけど、岸田家は代々広島で岸田さんの選挙区も広島1区だ。広島を背負う政治家として日本のトップに立ったわけだ。岸田家を辿ると原爆で被ばくした方や亡くなられた親族も多いそうだ。だから岸田さんには「核」に対する毅然とした態度を見せてほしいよ。

本当に「人の話を聞く」政治家であるなら、核兵器禁止条約に言及する姿を見せてほしい。核兵器禁止条約は核保有国も批准してないから日本も…と言うけど、世界において日本は原爆投下による唯一の被ばく国であり、まさに広島の地から選ばれた政治家なんだから。

2040年度には介護職が69万人不足する

衆院選で与野党の争点は色々あるけど、俺は高齢者の一人として介護問題が切実だ。介護職が69万人不足するっていうニュースが今年あったよな。

編集部)はい、今年7月に厚生労働省が発表した推計で、高齢化がピークを迎えるとされる2040年度に必要な介護職員が、2019年度の211万人から、2040年度は280万人になるそうです。高齢化問題に対応するため先々介護職が69万人不足する見通しです。

介護職は仕事が大変なのに給料も低く地位も低い。それじゃあ介護職の成り手が少ないのも当然だ。日本の社会に必要な人材なんだから、これには本気で取り組まないと。長生きすればするほど不安になる、そんな暗い社会にしてはダメだよ。

自民党はこの介護職問題に関して公約に盛り込んでたな。就業条件を改善して「介護離職ゼロ」を目指す、「賃金の水準を抜本的に見直す」と。野党の立憲民主党も「医療・介護従事者には慰労金の支給など待遇改善を進める」と公約に盛り込んでた。どっちにしても介護職の賃金と地位が上がるように早急に取り組んでほしい。

なんだか今回、与野党の公約を見渡すと基本的に言ってることは似てるんだ。「コロナ対策」しかり、「経済対策」しかり。「給付金配ります」とかさ。

でね、どこの党も給付金を10万配る20万配るってマニフェストに入れてるけど、肝心なのはその財源をどうするんだってことだよ。結局はどこも国債におんぶにだっこだろ。ホントにそれでいいの? 貴重な国債を発行するならさ、まず、自分たち政治家が身を切ることを態度で示してくれよ。

議員定数削減の問題、いつまでほったらかしなんだろうね。口先ばかりでちっとも具体化しないよな。そういう覚悟を見せたうえで、国家予算に言及してほしい。ちょっと編集部、国会議員の平均月収を出してみてよ。

編集部)まず議員歳費の月額が議長や副議長以外の一般議員で129万4千円。文書通信交通滞在費が月100万円。立法事務費で65万円。あと期末手当が年で約635万円ですので月額にすれば53万円。他にも交通費などさまざまな交付がありますが、ひとまず算出するなら国会議員の平均月収は「約348万円」でしょうか。

それに比べて民間の平均給与って手取りで約28万円って話だ。介護職なんかはさらに低くて月の手取りで20万円もいかない人が多い。議員は348万円。貰いすぎなんだよ。

…なになに、日本の議員報酬って世界で1位なの? 世界じゅうの国で日本の議員が一番貰ってるってことは、それだけ日本の議員に価値があるってこと? うーん、そうは思えないよな。だったらなおさら民間との収入差を大胆に縮めて、本当に国民の為に働きたい人材が低い報酬で国会議員を務める「名誉職」にするべきだよ。

重要なのは「国民の“もやもや”に答えてくれるのか」

あらためて今回の衆院選、与野党で似たような公約が並んでるけどさ、じゃあ、その違いはいったい何だって言ったら、問題が起きたときに国民の疑問に「答える」のか「答えない」のか、もやもやした問題をきちんと説明してくれるのかってことになるよな。

森友での「公文書改ざん」とか、学術会議への「人事介入」とか、ああいう「もやもや」を「うやむや」にする政党なのかどうか。

それで言うと買収事件を起こした広島の河井克行元議員だよ。先日、懲役3年の実刑が確定したけど、2019年の参院選で、当時、自民党本部から1億5千万円が河井夫妻のいた支部に入金された。それがいったい何に使われたんだと。少なくともそのうち1億2千万円は我々国民の税金から出ている政党交付金なんだよな。この税金を選挙買収の為に好き勝手に使われたんじゃたまんないよ。

編集部)この1億5千万円についてですが、自民党本部は「買収の原資ではなかった」と発表、河井克行被告は東京地裁公判で「1円たりとも買収資金に使っていない」と主張しました。

そう言われて、ハイそうですかって納得できる? この10年、こういう問題の数々でうんざりなんだよな。これは安倍さんのときの問題だ。この2019年の参院選で党本部から河井陣営に支給された選挙資金は1億5千万円、溝手陣営には1500万円。その結果、安倍さんが推す河井案里が当選。岸田派の現職だった溝手顕正さんは落選。そんなことがあってもいまだに安倍さんに頭が上がらない岸田さんもどうかと思うけど…、そのあと河井克行は安倍内閣で法務大臣に任命されるんだから、どれもこれも呆れるよ。

こんなあからさまなことなのに「買収の原資ではなかった」「1円たりとも買収資金に使っていない」とか言ってるんだろ? つくづく国民をバカにしてる。もう、自民党の公約に「国民をバカにしません」って書き足してほしいよ(苦笑)。

為政者を国民がジャッジする米大統領選の“強さ”

第二次安倍政権から自民公明による連立で、かれこれ10年にわたって日本の政権を握ってきた。実質は自民党による一党独裁だ。国民が選挙で選んだんだから国民による「製造者責任」もあって今の日本があるわけだ。

日本に比べてやっぱりアメリカは違うと思っちゃう。だってトランプ大統領を選んで、ああこれじゃダメだってなったら、大統領選挙でもって4年でスパッとクビにして次の大統領を選ぶんだからね。為政者に対して国民がジャッジする、そういう選挙のパワーがアメリカのほうが強いって感じるよ。

日本は大統領制ではないし、二大政党も根付かないから選挙による政権選択が見えづらい。どうしても自民党を軸にしたマイナーチェンジの繰り返しになる。それが長引くと公文書改ざんだとか、官邸の言うことを聞く人間ばかり出世する人事とか、そんな状態の日本を国際社会から見たら、どこかの独裁国家とたいして変わらないって世界での信用を失くしていくよ。

だからね、今回の衆院選、人それぞれに1票への思いがあるだろうけど、俺個人で言えば一党独裁のような状態はできれば改善されてほしい。与野党が拮抗する「キッコウ政権」になってほしいかな。内閣不信任案が出されたら国会に強烈な緊張が走る、それぐらい拮抗した状態になればいい。そうなれば何かもやもやした問題が起きたときに、うやむやな答弁で逃げ切ることもできなくなるよ。

そうして、悪かったことは悪いとして責任を取り、正直者がバカを見ることがなくなり、不毛な時間が短くなって、緊張感ある国会になってほしい。

この衆院選はコロナになってから最も大きな国政選挙だ。このコロナの期間に国民の内側にたまったものがどう出るか、それがカギだと思う。コロナは100年に1度のパンデミック。そういう時代の真っ只中で国の舵取りを決める衆院選、まさに「100年に1度の選挙」と言えるよ。

あのね、「自助・共助・公助」という言葉、今とても重く感じてるんだ。コロナという非常時に政治は国民に対して何をしたのか、それによってこの3つのバランスはずいぶんと揺れ動いたからさ。

命に関わる「自助・共助・公助」、それがこれからどうなるのか、衆院選はこの「自助・共助・公助」の行方を選ぶ選挙でもあるよな。

(取材構成:松田健次)

<追伸>

ああ、そうそう、ちょっとお知らせさせてくれ。この国が年寄りが安心して老後を暮らせる国になってほしいと常々思っているけど、老後に必要な資金は2千万円だって話があったよね。あれも今となっては2千万じゃ足りない時代になってると思う。これから高齢者とお金の問題はますますシリアスになるだろうよ。

そういう老後にかかるお金の問題を描いた映画「老後の資金がありません!」、10月30日から公開になる。主演は天海祐希さん。俺もガンコ親父の役で出演してるんだ。シリアスでユーモラスな映画だ。老後のお金が気になるなら観てみるといいよ、ヨロシクな!

映画『老後の資金がありません!』公式サイト (https://rougo-noshikin.jp/)