国内No.1プロテイン「ザバス」 企業秘密だらけの工場に潜入 - 土屋礼央

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※この記事は2019年12月19日にBLOGOSで公開されたものです

土屋礼央が気になる企業や人物にインタビューする「じっくり聞くと」。今回は、国内No.1の売上実績を誇る明治のプロテイン「ザバス」シリーズを生産する岡山県食品株式会社の工場を訪れた。

海外のプロテインが主流だった1980年にプロテイン市場に参入した明治。ザバスがトップアスリートから一般人まで幅広い支持を集めている理由はなんなのか。じっくり聞いてみた。

モザイクだらけ? プロテイン製造ラインは企業秘密の結晶

土屋:本日はザバスを製造している岡山県食品の工場にやってきました。工場に入る前には手洗いやエアシャワーなど、徹底した衛生管理が行われ、私自身も完全防備で誰だかわからない見た目になっております。

工場を案内してくれるのは株式会社明治・栄養開発部の山内大器さんです。どうぞよろしくお願いいたします。

山内さん、工場に入った途端にいい香りがしますが、保管されているこの粉は何でしょうか?

山内:ホエイたんぱくといわれるザバスのたんぱく原料の粉です。その他に、ビタミンやミネラル、フレーバーなどザバスのプロテインを作るのに欠かせない原料を保管しています。まず、使用する原料をふるいに通して異物を取り除いたあと、釜に移して「造粒」という工程に入ります。

土屋:造粒というのはどういう作業でしょうか?

山内:細かいそれぞれの粉をまとめてあげる作業です。この工程によって、プロテインが溶けやすくなり、含まれる栄養素の均一性が高まります。この工程の詳細は企業秘密なんです。

土屋:ここに、圧倒的に溶けがいいザバス独自の秘密が隠されているわけですね。

山内:造粒の工程も終えて、プロテインは完成ですが、粉が大きくなりすぎると、溶け具合や均一性に影響してくるので、再びふるいにかけて粒度の調整を行います。

土屋:その検査工程も企業秘密なんですね。

山内:そうなんです。ふるいにかけるメッシュのサイズなどは門外不出なので。味や溶け具合を、現場レベルで何度も厳しく確認作業を行います。

土屋:現場レベルということは、これが最終チェックではないんですね。検査で「違うぞ」となったらどうなるのですか?

山内:各専門家を集めて、どの工程に誤りがあったのかを調べます。その上で、本当にダメなものは廃棄となります。

土屋:徹底してやっていますね。

スプーン先入れに興奮 1g単位の正確さ

山内:複数のチェックを経て、ようやく製品を缶や袋に充填していく作業に入ります。本日は、ザバスの缶タイプの充填ラインをご見学頂きたいと思います。まず空の缶が送られていきます。

底部が空いている缶には、埃などが入っている可能性があるので、缶の中にエアーをかけて綺麗にします。そして、お客様が計量しやすいように、専用のスプーンを充填します。

土屋:粉より先に入れているんですね。

山内:粉を先に充填してしまうと入らなくなってしまうのです。

土屋:スプーンが機械で縦になって落ちて缶に入っていく。メカ好きなので、同じことが繰り返されていく様子は大好きなんです。この工程は興奮します(笑)。次が粉の充填ですね。ものすごいスピードで入っていきます。

山内:微妙に量が足りないこともあるので、重量を1g単位で再確認して完成です。

土屋:なぜこんなに美味しくなったのか、人気の秘訣はなにか、じっくり聞かせてください!

「罰ゲーム」感覚だったプロテインがデザート並みの美味しさになったワケ

普段からザバスユーザーだという土屋。工場見学の興奮も冷めやらぬなか、「たくさんあるプロテインの違いとは?」「なぜザバスは美味しいのか?」など、気になるポイントを担当者と1対1でじっくり聞いていく。

土屋:「プロテイン」と一口に言っても、お店にはたくさん並んでいます。違いはどこにあるのでしょうか?

山内:牛乳由来のホエイたんぱくや、カゼインたんぱく、大豆由来のソイたんぱくなどいろいろな種類があります。ホエイたんぱくは筋肉でカラダを大きくしたい方、大豆プロテインは内側からカラダを引き締めたい方に適しているなど、それぞれ特徴があります。

土屋:僕はずっとジムに通っていて、15~16年前からプロテインを飲んでいますが、当時は「罰ゲーム感覚」で飲むほど、美味しくありませんでした(笑)。でも、最近の商品は圧倒的に美味しくなっている気がします。

山内:昔は牛乳に混ぜて飲むのに合わせてバニラ味が主流でしたが、我々はお菓子やヨーグルトメーカーとしての知見を活かしながら、継続して風味の改良を続けています。

ザバスでは現在、ココアやチョコレート、水に溶かしても美味しいヨーグルト、グレープフルーツ、アセロラ味といった、スポーツドリンクのように飲めるものなどさまざまなタイプを揃えています。

土屋:これだけ味の変化が起こせたのは、技術の向上があったからですか?

山内:我々の技術力が上がったことに加え、原料メーカーとの共同開発に力を入れてきた結果でもあります。

プロテイン=男性の飲み物からの脱却 市場規模は10年で約3倍拡大

土屋:味だけではありませんよね。昔はシェイカーを振っても蓋を開けると全然混ざっていないなんてこともありました。これもトレーニングの一環だからしょうがないって、ずっと振っていましたけれど(笑)

山内:先ほど工場内でご覧いただいた造粒の技術が高まった結果、簡単に溶かせるようになりました。

土屋:プロテインは筋肉質の男性が飲むイメージが強かったのですが、明治さんでは「シェイプ&ビューティ」など、ピンクのパッケージで女性を意識した製品も出されていますよね。

山内:最近は身体を鍛えたい、引き締めたいという女性のお客様からのご要望が増えてきました。ザバスは男性っぽいイメージの製品が多かったため、女性のニーズに合わせて生まれたのがシェイプ&ビューティです。

土屋:コンビニでも見かけるなど、最も身近なプロテインと呼んでも過言ではないザバスですが、売り上げも右肩上がりだったりするんでしょうか?

山内:プロテイン全体の市場がここ10年で約3倍に拡大するなか、ありがたいことにザバスは人気ナンバーワンのプロテインとして多くの方にご愛用いただいています。

以前は部活に励む学生さんや、トップアスリートなどがメインでしたが、近年のフィットネスやランニングブームで、プロテインの存在がより身近になったことが市場拡大の大きな要因だと思います。

「プロテインを飲みすぎると太る」は間違い

土屋:プロテインを飲むタイミングとしてはいつが一番いいのでしょうか。

山内:運動直後に飲んでいただくのがベストタイミングだと言われています。また間食時の栄養補給などにもお使いいただけます。

土屋:食生活のなかでもプロテインを取り入れるということですね。我々の普段の食生活だけでは、たんぱく質が足りないのでしょうか。

山内:例えば朝はパン、お昼はサラダだけですませて、たんぱく質をしっかり摂るのは夜のみというように、摂取のタイミングに波があるよりも、一定の時間ごとにたんぱく質を補給することが重要です。

土屋:「プロテインを飲みすぎると太る」という理由で回数を控える人も多いのではないでしょうか。

山内:実際にカロリー表を見てもらうと、1回分で80キロカロリー程度。通常の生活のなかで、身体を動かしていれば問題ありません。

土屋:「出来る限り自然な食べ物から栄養を摂りたい」という人もいますが、プロテインは食品寄りなのでしょうか、それとも薬やサプリ寄りですか?

山内:プロテインは牛乳や大豆のたんぱく質を利用したもので、間違いなく食品です。見た目が「粉」ということで抵抗あるかもしれませんが、ゼリータイプや飲料タイプの商品もございますので、お客様が摂りやすいものをお選び頂ければと思います。

ザバスはなぜ日本のプロテインのなかでNo.1になれたのか

土屋:世の中にプロテインはたくさんあるのに「やっぱりザバスでしょ」という印象があります。明治さんとしてはブレイクスルーを実感した瞬間はありましたか?

山内:2006年に大きなリニューアルを打ち出し、バリエーションやラインナップの見直しを図ったことで、市場においてザバスの認知度が少しずつ高まってきました。水に溶けてすっきり飲める「ザバス アクアホエイプロテイン100」シリーズや、競技別の商品を開発。その後、大豆由来のソイシリーズや女性向けのラインナップなどを手がけていきました。当初の市場規模は小さかったのですが、ドラッグストアやスポーツ店でたくさんのザバス商品を並べていただいたり、“プロテイン”とネット検索すると一番に表示されるのがザバスになっていたりして、多くのお客様に興味を持っていただけました。

土屋:ザバスのスーパースターはどの商品になるのでしょうか?

山内:売り上げナンバーワンは、スタンダードタイプの「ザバスホエイプロテイン100ココア味」です。身体づくりに良いとされるホエイプロテインを100%使った商品ということで、ホエイプロテイン100と名付けています。本日はリッチショコラ味を土屋さんに飲んでいただこうかと。

土屋:シェイカーではなくビーカーを用意していただいたんですね(笑)。テーブルの上が理科の実験みたいになっています。スプーンですりきり3杯、水は200mlですね。

すごい! シェイカーを使わなくても溶ける! 昔はここにたどり着くまでに時間がかかっていました。もうできた! では、いただきます!

山内:いかがですか。

土屋:これはデザートですね! しかし、甘さが前面に来るわけではなく、単純に飲みやすくて美味しい。

山内:プロテインを飲まれる方が牛乳派と水派で半々という時代の流れに合わせて、水でも美味しく飲めるというシリーズになっております。

2020年には新工場稼働 トップ品質の追求を続けるザバス

土屋:今後のザバスにはどういう展望があるのでしょうか?

山内:トップアスリートの求める高いレベルのプロテインを目指しながら、一般のお客様に提供する品質も上げていきたいと考えています。市場も伸びていますので、岡山県内に新工場を建設し、11月から生産を開始いたしました。

土屋:企業としては、トップアスリートにザバスを飲んで大きな活躍をしてもらいたいですよね。そして同時に日本人全体の健康を底上げする。

山内:はい、そうですね。運動する人が増えて欲しいです。お客様の期待に応えられるような、美味しさ、溶け、機能に妥協を許さず、喜ばれるものを作っていきたいなと思っています。

土屋:日本の、いや世界の健康のためにザバスには羽ばたいていただきたいと、楽しみにしております。本日はありがとうございました!