結局、モテるかどうかは「ひとこと」が言えるかどうか  作家・藤沢数希から恋愛工学を学ぶ - 土屋礼央のじっくり聞くと - 土屋礼央

写真拡大

※この記事は2017年11月28日にBLOGOSで公開されたものです

土屋礼央の「じっくり聞くと」。今回は作家の藤沢数希さんにインタビュー。
女性と一線を超えるには何をすべきか。

恋愛の勝利の方程式『恋愛工学』を創り出し、実際にユーザーたちをモテるようにしたという藤沢さん。著書『ぼくは愛を証明しようと思う。』(幻冬社刊)は目からウロコの発想で、ナンパ未経験の隠れ肉食男子から会社の営業マンまでが参考になるモテる方法論を伝えています。

そんな藤沢数希さんに、これまでの人生でそれなりにモテてきたと自負するミュージシャン・土屋礼央が今回も「じっくり」聞いています。

恐怖の非モテコミット

土屋:はじめまして。著書を楽しく読ませていただきました。

藤沢:ありがとうございます。

土屋:『非モテコミット』って、面白いワードを思いつきましたよね。
【恋愛工学用語:非モテコミット】  欲求不満な男がちょっと優しくしてくれた女性を簡単に好きになったり、この女性しかいないと思いつめて好かれるために必死にアプローチすること。女性から「キモい」と思われるか、「搾取相手」にしかされなくなるので要注意。
藤沢:最近、改めて思うのは、まずは友達から……、というマインドだと恋愛は本当にうまくいきませんよね。

土屋:いきませんね(笑)。

藤沢:(笑)。

土屋:そもそも恋愛工学という名前はどうやって思いついたんですか?

藤沢:15年くらい前かな、金融工学というのが金融業界というか、ちょっと新しい学問として流行っていた時期だったんですね。それで恋愛も工学的にやると面白いんじゃないかなと。

土屋:藤沢さんの「ぼくは愛を証明しようと思う。」を読んで、ああ、ボクも非モテコミットだったなあ…と思ったんですよね。

藤沢:この女性とつきあいたい!と思い込んで、大事に大事にいくと、本当にうまくいかない。あれは、不思議ですねぇ。

お前はワンオブゼムだ、みたいな心のゆとりを持って、だけどお前のこと好きだよみたいな感情も持ちつつ、ふつうにディスったりしながらアプローチしていくと、うまくいくんですけどね。

女性が好きなのは「モテる男」

土屋:本を出してから、女性読者からの反響はどうでした?

藤沢:モテる女性は、そうよね~、と笑いながら軽く流してくれるんですが、中くらいや真ん中よりも下のカテゴリーのひとからは嫌われるようですね(笑)。でも、女性はモテる男が好きなんですよね。困ってしまうほど。

土屋:本の中にグッピーの話がありましたね。

藤沢:生物学でも証明されているんですよ。たとえばメダカやグッピーは、綺麗な長いヒレを持つイケメンのオスがモテるんです。

土屋:ほお。

藤沢:ヒレがみすぼらしいブサメンのオスをイケメンのオスと一緒に水槽に入れて、そこにメスを放すと、メスはイケメンのオスの方に行こうとします。

でもブサメンのオスと他のメスとを交尾させて、それをメスに見せつけると、交尾できてないイケメンより、目の前で後尾に成功しているブサメンの方に寄っていくんです。それは人間界でも当てはまりますね。常に女性の匂いが付いている男はモテますから。

土屋:そうなんですよね。モテるひとへの一極集中を打破するために恋愛工学を学校で勉強するようになると、世の中は変わりますか?

藤沢:どうなんでしょうかね。この前、結婚と離婚に関する本を書いたときに、人類の配偶システムを調べたんです。哺乳類というのはもともと一夫多妻が多い。ゴリラでもライオンでもそうですけど、強いオスがメスをたくさんもっていきます。

それで人類も、アマゾン流域の民族とか中国の少数民族なんかを、社会の「数」でカウントしていくと、じつは9割くらいが一夫多妻なんですよ。しかし、数では残り1割にも満たないキリスト教先進国の価値観である一夫一婦制の国々が世界を支配しているんですよ。

土屋:ほう。

藤沢:だから、人間も放置しておけば一夫多妻制になるんじゃないかなと思うんです。恋愛市場で、モテるひとに女性が集中していることでも明らかですし。ただ、権力者なんかに女性が集中する一夫多妻制だと、他のオスがやる気をなくして社会が発展しないんじゃないかな。だから、ある意味で不自然な一夫一婦制社会が世界を制したのではと。

土屋:深いですね。それにしてもなんで恋愛工学を若い頃に知れなかったのか、と思いますよ。もっと楽にモテたのに(笑)。

藤沢:でもクリエイターの場合、インスピレーションの源は非モテコミットだと思うんですよね。非モテであるのは、ある意味でいいんですよ。

土屋:非モテな方が情熱的になれますよね。

藤沢:貧乏と非モテはクリエイターにとってはいいことなんですよ。

土屋:藤沢さんは、芸術家がモテることについてどう思いますか? 歌手がモテるのは、鳥の鳴き声みたいなものだと考えるとわかるんですけど、画家とか彫刻家もモテると思うのですが。

藤沢:たとえば、ロダンですね。彼は彫刻家だから裸体のモデルが必要じゃないですか。その美人モデルと次々に関係を持って、妊娠させたりしていたそうです。その上、女性に子どもを堕ろせ!とか言ってたかなりのダメンズだったんです。

芸術って突き詰めるとセックスのことや人間の根源的なことを描くものだから、そこへの理解が深いというのはモテることにつながるんじゃないですかね。

土屋:藤沢さんは、やっぱり経験した人数が多い方が人生は豊かになると思いますか?

藤沢:そのことについて最近、熟慮したんです。世間では男性はセックスで失うものがなくただ気持ちいいだけ。女性は大切な何かを失うし、リスクは女性にあると思われているけど、実際は、その逆じゃないかと。

土屋:と、言いますと?

藤沢:まず、金と時間を失います。さらに望まぬ妊娠の場合、男性はずっと養育費を払いますよね。あとでセクハラだなんだと揉めると、男性は仕事を失ったりします。同意じゃなかった、みたいなことになったら、最悪、性犯罪で刑務所ですよ。

一方で、女性はどれだけ股を開こうと、黙っていればヤリマンと非難されることもないので、失うものは何もない。これは、やすやすとその辺の女性とセックスするべきじゃないな、と思いました。

恋愛工学でセックスできる確率を上げる

土屋:ところで、知り合いのナンパ師は、女性に会うと必ずセックスしようって言ってみるそうなんです。で、100人に声をかけるとひとりくらいは「いいよ」って言ってくれる。難しいことを考えるよりもその方がセックスに持ち込める確率が上がることは考えられませんか。

藤沢:いきなり「セックスしよう」と言うと確率は1%なんですが、恋愛工学を使って、お茶でも飲みながら1時間ぐらい仲良くなったあとに、改めて「セックスしよう」って言うと、100人のうち20人くらいが「いいよ」って言ってくれるようになりますよ。不思議なことに(笑)。

土屋:藤沢さんの本って、読んでいると実践したくなる。結婚している僕にとっては危険な本です(笑)。本の主人公は先のことを考えない恋愛を数多くする、というスタイルですけど、結婚って男にとってはどうなんですかね?

藤沢:結婚していることのメリットって、ほかの女性と結婚しなくていいということだと僕は思います。結婚を迫られても、すでに結婚していたら「結婚できないけど、君のこと愛してる」ってナチュラルに言えるじゃないですか。それは、素晴らしいことですよね。

あと、芸能人とかは「ひとりの女性を大事にする」イメージで押していったほうが、売れるんじゃないですかね。すこしはヤリチン枠もあるけど、それは傍流であって、メインストリームじゃないですから。

土屋:そうですね、ロックはいいけどJ-POPは浮気しちゃダメ。そのトップにいるのがおそらく、ゆずの北川悠仁君といきものがかり(笑)。でも、男ってモテたいもんじゃないですか。

藤沢:そりゃあね(笑)。

土屋:あと、恋愛がうまくいっているひとは、ビジネスでもうまくいっているということでしょうかね。僕の場合、結婚する前に男として生まれたからにはこういうことを経験してみたかった、というのをある程度コンプリートしたから、今、落ち着いたんです。野心がもうない。

藤沢:クリエイターはそういう野心を持ち続けてないといけない部分はあると思うんですがね。まあ、でも、結婚してからも5、6回は浮気してますよね?

土屋:いやいやそれが、僕はパーフェクトなんです。浮気ゼロ。それで僕の場合、結婚して野心をなくしたら、仕事が増えたんです。うちの嫁さんは男ならモテた方がいいって言います。ただ実際に浮気するかどうかは別次元の話らしいですけど(笑)。

藤沢:はいはい。

土屋:結婚って、いいことだけが2倍になると言うひともいるけど、ぼくの実感では、いいことも辛いことも倍になる、2倍味わえるのが結婚の醍醐味ではないかと。

藤沢:結婚って、ひとことで言うと「財布がひとつになる契約」だと思うんです。そういう契約を結んでいて、仲違いすると家庭裁判所から呼び出されます。奥さんに収入の半分の取り分があるから、それを婚姻費用として払わなければいけないんです。ずっと払い続けるわけですから、これは大変な額です。

みんな勘違いしているんですが、離婚騒動になると、半分になるのは自分の貯金じゃなくて、これから生涯にわたって稼ぐお金の半分なんですよ(笑)。

土屋:なるほど。

藤沢:そうしたわけで、女性が結婚したがるのは当然です。でも稼いでいる女性には結婚するメリットは全くないです。女性が離婚したい場合でも、相手にたっぷり払わないと別れてくれませんからね。

土屋:そういう考えだと、男性は結婚しないほうがいいんですか?

藤沢:でも、「結婚してくれないならセックスしない」という女性はいっぱいいる。だから、その点で、男性はやむにやまれず結婚しないといけないかもしれません。一緒にいたい、子供も欲しいとなるとね。

まあ、でも、金持ちの男性の場合は、相手が事実婚で納得してくれるなら、その方が絶対いいですね。金持ちの女性が貧乏な男性と法律婚をするのは、純粋なバカです。だって、女と違って、男は「結婚してくれないならセックスしない」とは言いませんからね。貧乏な男でも。

避妊具が人類を滅ぼす!?

土屋:やはり、セックスが軸ですか!?

藤沢:なんだかんだ言って、人間社会は金とセックスじゃないですか。でも、今の社会は20代で誰ともセックスしていないひとが40%もいるんですよね。性風俗店での経験も含めてその数字だから、大変なことになっています。恋愛に参加できていない男性があまりにも多いんです。

土屋:地球上に人間が多すぎるのかな。少子化になるのも自然の流れなのかもしれない。

藤沢:生物の基本は子孫繁栄だから、環境さえ許せば個体数はどんどん増えていくんですよ。ネズミでもなんでも。でも、人間はこんなに豊かになったのに子供の数が減っていくというのは、不思議なことで、学者はこのことに対する答えを出せないでいるんです。

僕は、これはすごく単純な問題で、人間には子供をたくさん作ろうという本能があるわけでなはく、ただ単に性欲があるだけだからだと思うんです。セックスしたいけど、子育ての責任まで持ちたくないからコンドームやピルが発明され普及した。その結果、避妊具が簡単に手に入る先進国では、個体数を減らして滅びつつある、というのが僕の仮説なんです。

コンドームやピルなどの避妊具は、昔でいうところのペストや天然痘みたいなもので、人口にすごいインパクトを与えているな、と。

土屋:生物学的な話になると、これからモテる人間が非モテを淘汰していく世の中になるのでしょうか。たとえば、みんなの恋愛偏差値が上がったとしても、モテるひとの比率って変わらないものですか?

藤沢:プロサッカー選手を見ても、稼いでいるのはごく一部でしょ。トップクラスの選手に価値が集中するんです。サッカー選手が儲かるんだったら、ふつうの経済学で考えると、サッカー選手になりたいひとがどんどん増えて賃金が減ると思われるかもしれないけれど、それは違うんですよ。

トップクラスというのは相対的なものだから、トップ0.1%はどんなにマスが大きくなっても0.1%しかいない。その0.1%のひとたちの独占市場なんです。恋愛だって、モテは相対的ですからね。

たとえば男女それぞれ100人ずつの村があるとします。1番モテるひとから100番までランク付けします。グラフの縦軸にモテる度合い、横軸に順位、左から100位で右に行くほど順位があがっていきます。

女性の場合、線は緩やかに右肩上がりの直線なんです。真ん中くらいでも、それなりにモテるんです。それに対して男性はずーっと横ばいで、順位が一桁になってくるとグイッと上昇カーブを描いて、ぶっちぎりでモテるんです。

土屋:ここにいるスタッフ全員が納得した!

藤沢:男性はトップ5人くらいだけがモテるんです。女性の場合は中の上でも同じ順位の男性を完全に圧倒して威張っているんですが、さらに上位の女性、たとえば女優さんとかモデルさんがこの世の春を謳歌しているかというと、そうでもない。

同じ順位の男性は競争率が高すぎるから確実に男性を獲得するためにはランクを下げなければいけない。モテの位が高い女の人って意外に悲惨な恋愛をしていたりするんです。グラフで見ても偏りが男女でこれだけ顕著だと、トップクラスの女性は確かにモテるんだけど、トップクラス同士の男女で比べると男性にモテが逆転されてしまいます。

モテるかどうかはビール飲んだあとに「セックスさせて」と言えるかどうか

土屋:なるほど。最後に、初心者向けの恋愛工学テクニックってありますか?

藤沢:勇気を出して声かけて誘ってください。そして、最後は思い切ってシュートを打ちましょう。最近つくづく思うんですが、モテるモテないって、結局のところ、ふたりでビール飲んだあとに、「セックスさせて」って言えるかどうかに集約されるなぁって。

土屋:その一言か…。

藤沢:あとは、相手の立場に立って、自分が女性ならこうしてほしいとわかるスマートな男がモテますよね。ひとことで言えば、「相手への思いやり」。

土屋:女の人をコマだと思ってしまうひとは、うまくいかないですね。

藤沢:そうですね。相手の立場になって考えられるひとは、ビジネスにおいても成功している。逆に相手の立場になって考えられるひとは、敵になると自分が一番やって欲しくない、痛いところを攻めてくるから、手強いんですよ。相手のことを考えられるひとは、じつは怖いんですよね。

土屋:恋愛からビジネスまで、恋愛工学はいろんなところで応用できますよね。本に出てくる理論を深夜番組のバラエティ番組で披露してってお願いされるでしょ? そのクシャッとした笑顔に女の人はやられちゃうんだな、藤沢さん、超イイ人っぽい。

藤沢:僕はひっそり生きていきたいから、メディアに出ることは考えていませんね。

土屋:いや、世の中がそうさせませんよ。1年後にはお茶の間でも有名人になってるはず(笑)。

藤沢:いやいや、そんなことないですって。

プロフィール

土屋礼央
1976年、東京都国分寺市出身。RAG FAIR として2001年にメジャーデビュー。 2011年よりソロプロジェクト「TTRE」をスタート。ニッポン放送「土屋礼央 レオなるど」、TOKYO MX2「F.C. TOKYO魂!」、FM NACK5「カメレオンパーティ」などに出演中。
・ TTREアルバム「ブラーリ」
・土屋礼央 オフィシャルブログ
・Twitter - 土屋礼央 @reo_tsuchiya


藤沢数希(ふじさわ かずき)
理論物理学研究者、外資系金融機関を経て、作家。高度なリスク・マネジメントの技法を恋愛に応用した『恋愛工学』の第一人者でもあり、人気ブログ『金融日記』の管理人。メールマガジンの『週刊金融日記』も評判で、ツイッターのフォロワー数は現在13万人以上にものぼる。




ぼくは愛を証明しようと思う。 (幻冬舎単行本)
posted with amazlet at 17.11.27
幻冬舎 (2015-07-24)
売り上げランキング: 1,097
Amazon.co.jpで詳細を見る

ぼくは愛を証明しようと思う。(1) (アフタヌーンコミックス)
posted with amazlet at 17.11.27
講談社 (2016-07-22)
売り上げランキング: 4,842
Amazon.co.jpで詳細を見る

損する結婚 儲かる離婚(新潮新書)
posted with amazlet at 17.11.27
新潮社 (2017-02-24)
売り上げランキング: 1,622
Amazon.co.jpで詳細を見る