「投票整理券が届かない」。選管の対応は? - 渡邉裕二

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※この記事は2017年07月02日にBLOGOSで公開されたものです

 2日に投開票だった都議会選。
 焦点は逆風の自民党に対して、小池百合子都知事率いる「都民ファーストの会(都ファ)」がどれだけ躍進するのか、だった。

 今回の都議会選、42の選挙区で127人の定員に対して25人が立候補していた。 
 投票率は前回4年前の43.5%を上回る勢いだ。

「築地市場の豊洲移転」が争点という声もあった。が、実際には都議会選でありながら、有権者からは安倍政権への疑問、批判が高まり、結果的には投票率アップに結びついたような気がする。もっとも、自民党としては「国政への批判」「安倍政権への批判」とは思いたくないだろうが…。

 それにしも都議会選のタイミングに合わせるかのように、安倍政権を揺るがすようなスキャンダルが続出したことは否めない。「これでもかこれでもか」という勢いで出てきた。選挙結果次第では、豊洲問題なんかより3年後の「東京五輪」にも影響が出てくるかもしれない。

「投票整理券」が届かない

 しかも、そんなタイミングが、何故なのか筆者にもぶち当たってきた。
 実は今回の都知事選挙では「投票整理券」が届かなかったのだ。
 本来は公示直後だろう、有権者には郵送されてくる。「期日前投票」もあるから通常は2週間前には届くはずである。

 「そう言えば来ていないな」。
 選挙が近くにつれ気になってきた。

 筆者は目黒区に住所がある。集合住宅(マンション)で、郵便受けはダイヤルキーになっている。ボックス内の郵便物を抜き取るのは容易ではない。ボックスには部屋番号が明記されている。通常、公共機関からの特別郵便の場合には部屋番号も明記されている。

万が一、誤配があっても普通だったら、その部屋に入れておいてくれるだろう。それに普通郵便である。普段届いているのに、今回に限って「不在」とか「転居先不明」の理由で差出人に戻すなんてことも考えられない。

 こういったことを前提に「何で届かないのだろう」と思った。
 もちろん、「投票整理券」が届かない場合でも「宣誓書」を明記するなどしたら、投票は可能なので「その程度のことで大騒ぎする問題でもない」と考える人も多いだろう。と言うのも、今回の一件をTwitterで書いたら「届かなくても投票は出来ます」と言う返信が圧倒的だった。これには正直言って驚いた。

余りに無責任な選挙管理委員会の対応

 話は前後するが、今回、「投票整理券」が届かないことに疑問を抱いた筆者は目黒区選挙管理委員会に電話した。最初に電話口に出て来た男性に事情を説明すると

 「担当者に変わります」。

 30秒ぐらいして、担当者という男性M氏が電話口に出てきた。

 「電話を変わりました。どのようなお話でしょうか」。 

 筆者は、自らの住所や名前も告げぬまま

 「実は、投票整理券が届いていないんです。どうなっているのかと思い連絡しました」。

 そう告げると、電話口のM氏は

  「そうですか。こちらは出しているので、郵便局の配達事情もあるかと思われます。届けたかどうかは郵便局の方に問い合わせてもらわないと。もしかしたら戻って来ているかもしれませんので、お調べすることは可能です」。 

 何、言ってんだ、この人は?

 「要するに、選管は出しているんだから、その後のことは郵便局にお問い合わせくださいってことですか?そもそも郵便事情と言いますが、投票日は明日ですよ」

  「(小声になって)そうですね…」。 

 そこで、筆者はM氏の対応について疑問をぶつけた。

 「まず理解できないのは、私がこうして連絡していますが、あなたは私が、どこの誰なのか分かっているのですか?私は、最初に出た方には、大まかな(住所の)地名と苗字は言いましたが、あなたには何も言っていませんよ。どういうことですか?」

  「はぁ」 

 「どこの誰だかもわからない。もしかしたら、目黒区の住民ではないかもしれません。民間だったら、どこでも最初に尋ねますよ。ところが本人確認もしないで、(投票整理券は)出しました、郵便事情もあるかもしれない、って言うのは事務的だし、余りに無責任なのでは?」

  「ですから、お調べすることはできます、と…」。 

 「いやいや、単なるクレーマーだと思われてしまったら困りますが、本来は、まずどこの誰だかを聞いて、ただいまお調べしますとか何とか言うのが担当者としての行動じゃないのかと?」。

  「ですから、お調べすることは…」 

 「それは分かりました。でも、これは投票整理券ですよ。それが届いていないって言われて、何も感じないのですか?個人情報という観点でも問題がないとも言えません。それに、他人が悪用したらどうなるとか…」

  「その場合は、犯罪ですから警察の方の捜査になります」 

 「待って下さい。届かなかったら郵便局、不正に利用されたら警察って、それはそうでしょうけど、目黒区の選挙管理委員会というのは、有権者に対してそんな対応ばかりしているのですか?」

 結局のところ、話は堂々巡り。着地点も見い出せず、何で「投票整理券」が届かないかも分からないまま、モヤモヤ気分で電話を切った。

実はいい加減な日本の選挙

 Twitterの反応では「郵便局内の物量が多くて捌き切れない。配達員不足。もしかしたら配達員が隠したか捨てた」という意見から、それぞれの都市、地域での対応を詳しく記してくれる方もいた。しかし「(投票整理券が)届いていないという連絡は結構届いているよう」とも。

 もちろん投票には行った。
 投票所で事情を説明し宣誓書を書くと、担当者が「問い合わせてみます」。その間に投票用紙が発券され投票を済まして、帰ろうとしたら「ご本人様の確認が取れました」。
 アレレ?今、確認が取れたの? もう投票は済んじゃったよ。

 日本の選挙は厳格だと思っていたが、実は、それほど厳格なものではなかってことかもしれない。甘い。いい加減。緊張感が乏しい。ま、弁護士出身の防衛相・稲田朋美先生の発言を見てもわかる。

そう考えたら、「投票整理券」が届かないぐらいのことなんて自治体の選管からしたらいつもの話。大した問題ではない、一部有権者の戯論(たわごと)だという程度の認識なのだろう。