豊田真由子さん。お願いなので、もう表に出てこないで - 赤木智弘
※この記事は2017年06月25日にBLOGOSで公開されたものです
「このハゲーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
という罵声がどこのニュース番組からも響き渡り、薄毛のお父さんたちには酷な日々が続いているかと思う。多分来週までだから心を強く持って!
自民党の豊田真由子衆議院議員のパワハラ問題について、すでに内容は各ニュースで報じられているので繰り返さないが、NHKの記事に書かれていた、元官房長官である自民党の河村建夫衆議院議員の反応が興味深かった。(*1)
河村議員は記者団に対して、やり取りを録音した秘書に対して「何か意図がある」といい、パワハラについては「あんな男の代議士はいっぱいいる」と、擁護の姿勢を示したという。
その一方で、民進党の蓮舫代表と、共産党の小池晃書記局長は、自民党の体質の問題として理解しているようで、議員と自民党に対する説明責任や自民党からの離党だけではなく、議員の辞職を求めている。
さて、この後に河村議員は発言を撤回しているそうだが(*2)、僕はこの発言が極めて重要であると考えている。
実際、僕がこのニュースを最初に聞いたときも「この程度のことをやってる議員なんていくらでもいるだろう」と思ったからだ。
僕の意見は表層的には河村議員と全く同じだ。まず、この問題のベースは「女の議員が偉そうにパワハラをやっているから叩かれている」のである。ただ、河村議員と違うのは、そもそもパワハラ事態を論外だと考えている点だ。「男の政治家もやっているのに、女性だけ叩かれている」ということに対して、少なくとも僕は「ちょっとかわいそうだな」などとは見ない。「女性だけ叩かれている」ことが問題なのではなく、「女性しか叩かれていない」ことが問題なのだ。
河村議員は「秘書が、やり取りを録音して外に出すということは、何か意図がなければありえない」というが、その意図は「パワハラに業を煮やして」だろう。週刊新潮によれば、秘書の男性は蹴る殴るハンガーで叩くは断続的であったとされ、豊田議員から「お前の娘にも危害が及ぶ」などと言われたことから、ICレコーダーに録音することにしたという。(*3)
それにしても、あの怒鳴り声は車を運転している秘書に対する怒号である。秘書もいつ殴られるかと、冷静ではいられなかっただろう。もし、それが原因で秘書が事故を起こしたらとか、人を轢いてしまったらなどとは考えなかったのだろうか? 事故を起こしたら秘書の責任にするつもりだったのだろうか。
NHKの記事では蓮舫代表と小池議員は自民党の問題であるかのように答えているが、これに対して僕は「違うだろおおおおおおおおおおおおお!!」といいたい。そうではなく、最低でも「うちにはそのような議員はいないし、もし、いたとしたら、議員を辞めさせて追い出す」くらいのことを言わなければならなかったはずだ。何を他人事のように口にしているのだろうか?
この問題というのは、決して自民党の代議士の問題ではなく、さらには日本の政治家のみならず「人の上に立って権力を行使する人、全員」の問題である。
どこの会社にだって豊田議員のように、無駄に怒り続ける上司のひとりやふたり、いるだろう。たとえ彼らが何らかの成果を出しているとしても、それは他人が本来出すべき成果を潰した上での成果に過ぎない。彼らの成果は長期的にはその組織にとっても、そして日本全体にとってもマイナスにしかならない。
ハッキリ言って、人の上に立った時に近くの部下がどんな失敗をしたと言っても、それで暴言を吐いて暴力ふるって、権力を示すようなことしかできない人に、責任ある立場に立ってほしくない。
40過ぎても、そうやって権力を誇示することでしか人の上にいられない人は、もう一生治らないから、一生一番下の立場でいればいいのである。そもそも働くことに向いてないのだから、頼むから働かないで!我々の前に姿を表さないで!!
豊田議員の問題が明るみに出る数日前、Twitterで1枚の風刺絵を見た。
それは、上司のいじめに対する風刺画で「タイでは上司にいじめを受けた部下は上司を刺し殺すが、日本では部下が自殺をしてしまう」と言うものだった。
その傾向が本当かウソかは知らないが、この絵を見て僕は「タイのほうがいいなぁ」と思ったのだ。
なぜなら、部下が上司を殺せば、少なくともその上司による次の被害者は発生しない。しかし日本のように部下自身が我慢をし、その末に自殺をしてしまえば、その上司は次のターゲットをいじめ始めるだけだからだ。
よくいじめ問題で「イジメられた人間が自殺をしたら、イジメてた人間は傷つくだろうか」という話があるが、そもそもそんなことで傷つくようなメンタルではないからこそ、イジメをするのである。イジメられた人間がどんな不幸に陥っても、イジメる側がそれで何かの良心に目覚めることはない。むしろ「いい気味だ」とか「死んだやつが弱すぎた」としか思わない。むしろ自殺に対して「俺が加害者みたいじゃないか」と逆ギレする。それがイジメをする人間の考え方だ。それは子供でも大人でも同じことである。
パワハラ上司はすでに「下の人間をいじめることでしか、自身の権威性を示せない状態」に陥っているので、彼らがその立場にあり続ける限り、多くの人を傷付け続けるしかないのである。ならばそれに対する対処は「パワハラ上司をその立場から引きずり下ろす」しかない。上司を殺せばそれは達成されるが、部下の自殺は何も達成しない。
もちろん「殺せ」って話ではない。本来は部下が上司を殺す代わりに、会社がそうした上司を発見し、降格させたり、クビにしたりして、外に放り出さなければならないのだ。
豊田議員に関しては、議員に当選してからの4年半で100人の秘書が辞めたとされている。(*4)
原因は不明だが、少なくとも今回の暴言の記録を聞くに、他の秘書にもこうしたパワハラが繰り返されていたのだろうと考えるのは、決して不当な見方ではないだろう。
そのようなことがありながら、それを周囲の人間が見咎めず、議員先生だからと持ち上げ続けていたことが、今回の問題の本質である。そしてそうした議員は他にもたくさんいるはずだ。民進党や共産党も同じことだ。他人事ではない。
最後に1つ。
豊田議員は暴言の中で、何度も「有権者」と言っていた。これを聞いて「有権者のことを考えるが余りの怒り」と擁護の解釈をし、さも「有権者に失礼をしたから私は怒っているんだ」と読む人もいるのだろうが、そんなことはありえない。
なぜなら、彼女の下で働く秘書たちも、また有権者であるからだ。
自分のすぐそばで働いている有権者を笑顔にできない議員が、果たして他の有権者や国民を笑顔にできるだろうか?
僕は絶対にできないと考える。こういう人は本当に二度と人の上に立たないでほしい。そして働かないでほしい。
それがパワハラで社会に出られなくなってしまったり、イジメを受けた事がある人たちの願いであろう。
*1:自民 豊田真由子衆院議員が離党届を提出(NHKニュース)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170622/k10011026961000.html
*2:自民・河村元官房長官、暴力報道の豊田氏擁護発言を撤回(J-CASTニュース)https://www.j-cast.com/2017/06/23301464.html
*3:安倍チルドレン「豊田真由子」代議士の“絶叫暴行”を秘書が告発(デイリー新潮)https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170621-00522881-shincho-pol
*4:スタッフ100人辞めた豊田議員 国会で「労働環境改善」訴えていた(J-CASTニュース)https://www.j-cast.com/2017/06/23301482.html?p=all