※この記事は2017年05月26日にBLOGOSで公開されたものです

俳優で実業家としても知られる梅宮辰夫(79)が、過去60~70年代に主演した人気映画シリーズの楽曲を中心に集めたCDアルバムの発売を準備していることが明らかになった。

来年、80歳を迎える。しかも芸道60周年という節目。そんなタイミングもあって水面下で企画が進んできたものだが、今年1月に50年来の親友だった松方弘樹さん(享年73)との別れが一気に企画を加速させたようだ。しかも、ここにきて梅宮は「(出すなら)改めてレコーディングしたい」と意欲も見せているという。

梅宮は1958年に東映ニューフェイスとしてデビューした。これまでに映画、テレビドラマなど数百本に出演している。そういった中で「夜の青春シリーズ」や「不良番長シリーズ」「帝王シリーズ」「仁義なき戦いシリーズ」など東映の黄金期を担ってきたことは言うまでもない。

「相棒」松方弘樹さんの死に大きなショック

しかし、3年前の2014年に高倉健さんや菅原文太らが逝き、今年に入ってからは共に〝昭和の2大東映スター〟と言われ続けてきた〝相棒〟の松方弘樹さん、さらには渡瀬恒彦さんも帰らぬ人となった。特に松方さんとは、テレビドラマはもちろん、映画「仁義なき戦い」(1973年)などでの共演もあるが、プライベートでの釣り仲間で「遊び」も共にしてきた盟友だっただけにショックも大きかった。

松方さんは昨年2月に体調不良を訴え入院、その後に「脳リンパ腫」であることを公表。日本での発症率は10万人に1人とも言われる珍しいがんだった。しかも、現在の医療では手術が出来ず放射線治療や抗がん剤治療を受けてきた。梅宮は、時間が許す限り松方さんの元を訪れ勇気づけてきた。関係者によると「7、8回見舞った」とも言われている。

最後の対面は昨年12月20日だった。

「意識がなく。呼んでも反応しなかった」。

それから1ヶ月後の今年1月21日に息を引き取った。訃報を知らされ病院に駆けつけた梅宮は、松方さんの亡骸に「俺もすぐに行くよ」と語りかけたという。

密葬にも参列した。

「今の芸能界で、アイツみたいな生き方をしてきた奴はいない。今の芸能界では類を見ない役者だったけど、人間なんて呆気ないものだと思った」。

そう言って涙を見せていた。

しかし、最近になってからは精神的にも落ち着き始め「死んだら終わり。元気なうちに出来ることはやりたい」と前向きになってきたという。

とは言っても、来年には80歳を迎える。高齢だけに健康面での不安もある。松方さんの入院中も肺炎を拗らせて入院。また十二指腸がんで手術もした。昨秋だったが長女の梅宮アンナは「十二指腸と胆のうを全摘した」ことを明らかにしている。

そういった中で進んできたのが今回のCDアルバムだった。

もっとも内容など詳細は「検討中」と言い続けていたが、ここにきて梅宮自身が大ノリになっていると言う。自ら企画にも参加するようになり、

「早く進めよう」

「自分で選曲する」

と周囲に語るほど。

さらに「改めてレコーディングしたい」とも言い出すようになったという。

28年ぶりのレコーディング

梅宮は、1989年12月に演歌歌手の村上幸子さん(90年7月没=享年31)とのデュエット曲「純情物語」を発売している。記録の中では、それが「最後のレコーディング」となっているだけに今回、もし実現したら実に28年ぶりのレコーディングとなる。事務所関係者も梅宮の意欲には驚くが、その一方では「決まれば単なるベスト・アルバムではないものにしたい」という。

収録曲は、過去に自ら出演した作品というだけに「番長シリーズ」「帝王シリーズ」の楽曲が中心になりそうだ。その時は現代風なアレンジにする模様で〝平成版の梅宮辰夫アルバム〟になることは間違いない。

松方さんも含め、仲間が一人づつ自分から去っていくことは仕方がない。それは精神的にも辛いことではあるが、梅宮は、

「今や残り少ない昭和のスターの生き残り。アイツの分も含め、残された者の使命かもしれない。今、出来るうちに何でもしておきたい。逆に、この歳になっても、やることがあるのは幸せなこと」

と、逆に前向きに捉えるようになったようだ。

「特に意識している訳ではない。ただ、こう言ったことはタイミング。今年やるから意味があるんだよ。それも、俺にとっては一つの節目だと思っている」。

平均寿命にしても年々、アップしていく中にあって〝傘寿〟になっての挑戦は、ますます高齢化していく日本にとっても意味深いものがある。そういえば、テレビ朝日系で放映されている倉本聰脚本の「やすらぎの郷」が話題になるような時代、世の中の流れでもある。それだけに梅宮の動きは…もちろん芸能界のことではなるが、今や一般社会にも通じるものはあるだけに注目を集めそうだ。

6月6日には東京・芝の東京プリンスホテルで松方さんの「偲ぶ会」が予定されている。当日、梅宮は発起人を務めているが関係者は「それまでには松方さんに梅宮から報告できるようにしたい」と言う。