「結果が出る」放送作家になるためのGWの過ごし方 - 西原健太郎
※この記事は2017年05月04日にBLOGOSで公開されたものです
世の中は大型連休のシーズンになった今日この頃。みなさんいかがお過ごしでしょうか?私はというと、4月に入ってから始まった新番組にも慣れ、最近ついに、ジム通いを始めました。ジムは数年前から通いたいと思っていたのですが、なかなか腰が上がらず…今年の目標の一つとして始めてみたのですが、いざ始めてみるとこれがなかなか面白い!自分の体の現状を知りつつ、限界を見極めながら行うトレーニング。『筋トレは裏切らない』という言葉もあるように、『やればやるだけ結果が出る』楽しさを感じています。
ところで、やればやるほど結果が出るものといえば、放送作家のトレーニングにも当てはまります。丁度大型連休の時期ということで、今回は普段の生活でできる『放送作家のトレーニング』について、書いてみようと思います。
放送作家を鍛えるのは「エンタメ」
そもそも、放送作家にトレーニングが必要なのかというと、私は必要だと考えます。なぜなら、放送作家とはアイデアを出すのが仕事であり、アイデアを枯渇させない為、アイデアを生み出す為にトレーニングは必要だからです。何回か前のコラムで、『少ない労力で数をこなさないと、ラジオの放送作家は生活ができない』と書きましたが(ラジオとお金とダンピング)、たとえ少ない労力だとしても、アイデアを生み出すにはその元となる【データベース】が必要不可欠です。そしてデータベースは、常に更新し、拡張していかないと、その価値は下がる一方です。古いデータベースしか持たない作家には、新しいアイデアを生み出す能力は備わりません。つまり、放送作家にとってのトレーニングとは、自らのデータベースを更新し、拡張していくことなのです。
では、具体的にどうやってデータベースを更新・拡張していくのか…ですが、放送作家のデータベースには、【流行】【世相】【社会情勢】…などの情報だけが詰まっているのではありません。それらの情報の中から、『何が面白いのか』『どうすれば面白くなるのか』を自分なりに咀嚼(そしゃく)し、再構築したものが、放送作家のデータベースです。そして、情報を咀嚼するには、咀嚼する為の確かな『歯』や『舌』を持たないといけません。ワインのソムリエが、自らの舌を鍛えるために世界各地に赴きワインに触れるように、我々放送作家は、確かな咀嚼力を身につける為に、世界各地で様々な『エンタメ』に触れるのです。
ここで重要なのが、触れるのは『情報』ではなく『エンタメ』ということです。
『情報』は、データそのものの事を指すのですが、『情報』に対して、『エンタメ』は『第3者によって作られたもの』を指します。例えば、『テレビ番組』『ラジオ番組』『映画』は、『第3者が何かしらの情報を、伝えやすいように表現した、エンターテイメント』であると言えます。それに対して、ニュースなどの報道は、情報をありのままに伝える事が責務です。(最近報道もエンタメ色が強くなっているという話もありますが…それは別の話という事で)。また、『本』や『舞台』ももちろんエンタメですし、『コンビニ』や『スーパー』などの商店も、やってくるお客さんを楽しませるという意味では『エンタメ』であると言えると思います。
エンタメを咀嚼する力が必要
そして、エンタメに触れた時には、そのエンタメをただの情報として飲み込んではいけません。丸呑みするのではなく、ここで咀嚼が必要なのです。『どうしてこういう味付けになったのか』『調理人(制作者)の意図通りの味になっているのか』『自分が調理人ならどんな味付けをするのか』…など、エンタメを咀嚼し、自分のデータベースに落とし込んでいきます。この作業こそが、放送作家におけるトレーニングなのです。
ちなみに、世の中で活躍する放送作家であれば、このトレーニングは自然とできて当たり前です。普通の放送作家であれば…ですが。中には忙しさのあまり、トレーニングを疎かにしてしまう作家も存在します。その結果、その作家が作った料理がどうなるかは…もう書くまでもないでしょう。
前回のコラムは、『放送作家になるには?』的なテーマで書きましたが、もしあなたが将来放送作家を目指しているのであれば、今のうちにできるだけ多くの『エンタメ』に触れ、咀嚼し、自分のデータベースを構築しておいてください。
データベースは、将来自分が放送作家になった時の財産になりますから。大型連休は、世の中のエンタメに触れに、出かけてみてはいかがでしょうか?でも忘れないでください。あくまでもトレーニング。美味しいものばかり食べるのではなく、普段食べないものや、苦手なものもしっかり食べましょう!