※この記事は2016年06月01日にBLOGOSで公開されたものです

通常国会が会期末を迎えた6月1日、安倍総理大臣が会見を開き、この秋に「総合的かつ大胆な経済対策」を講じる考えを明らかにするとともに、消費税の増税を2019年10月まで2年半先送りすることを正式に表明した。

また「アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか。これが、来る参議院選挙の最大の争点であります。」と述べ、来月の参院選では自民・公明両党で過半数の議席獲得を目指す考えも明らかにした。

冒頭発言全文

本日、通常国会が閉会いたしました。この国会で成立した法律や予算によって、介護休業給付の拡充、介護や保育の受け皿整備、不妊治療への100%助成、一人親家庭への児童扶養手当の増額など、一億総活躍社会の実現に向け、新たな取り組みが次々とスタートいたします。少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが生き甲斐を感じられる社会をつくる。一億総活躍の未来を切り開くため、大きな一歩を踏み出す、未来へと挑戦する国会になったと考えています。

他方、足下では、新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している。こうした認識を、先般伊勢志摩サミットに集まった世界のリーダーたちと共有しました。

先般の熊本地震では、熊本や大分の観光業や農業、製造業など、九州の広い範囲にわたって、経済や暮らしが打撃を受けています。これらが日本経済にとって、新たな下ぶれリスクとなっている。最悪の場合、再びデフレの長いトンネルへと逆戻りするリスクがあります。

今こそ、アベノミクスのエンジンを最大に噴かし、こうしたリスクを振り払う、一気呵成に抜け出すためには脱出速度を最大限まで上げなければなりません。アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか。これが、来る参議院選挙の最大の争点であります。

伊勢志摩で取りまとめた合意を議長国として、率先して実行に移す決意であります。アベノミクスの3本の矢をもう一度力いっぱい放つため、総合的かつ大胆な経済対策をこの秋、講じる考えです。

もっとも重要なことは構造改革を断行し、将来の成長を生み出す民間投資を喚起することであります。
TPPの早期発効を目指します。さらには、日EUEPAなど、良い物が良いと評価される自由で公正な経済圏を世界に拡大することで、新しい投資機会をつくり出します。
現下のゼロ金利環境を最大限に活かし、未来を見据えて民間投資を大胆に喚起します。新たな低利貸し付け制度によって、21世紀型のインフラを整備します。
リニア中央新幹線の計画前倒し、整備新幹線の建設加速によって、全国をひとつの経済圏に統合する。地方創世街道をできるだけ早くつくり上げます。
保育所や介護施設の整備など未来の一億総活躍社会を見据えた投資を力強く進めます。


最大のチャレンジは、多様な働き方を可能とする労働制度改革です。
長時間労働の慣行を断ち切る。雇用形態に関わらない均等待遇を確保する。そして同一労働同一賃金を実現します。
非正規という言葉を日本国内から一掃する、その決意で、全体の所得の底上げを図り、内需をしっかりと拡大していきます。

こうした諸改革と合わせて、今なお地震が続く、熊本地震の被災者の皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、被災地のニーズをしっかりと踏まえつつ、本格的な復興対策を実施致します。

G7で協力し、世界的な需要を強化するため、将来の成長に資する分野で大胆に投資を進める。人工知能、ロボット、世界に先駆けた技術革新を日本から起こす。 しっかりと内需支える経済対策を行う考えであります。

その上で、来年4月に予定される、消費税率10%への引き上げについてお話いたします。
1年半前の総選挙で、私は「来年4月からの消費税率引き上げに向けて必要な状況を作り上げる」と、お約束しました。そしてアベノミクスを強力に押し進めて参りました。

現在、有効求人倍率は24年ぶりの高い水準となっています。それも都会だけの現象ではありません。就業地別で見れば、北海道から沖縄まで47の都道府県すべてで一倍を超えました。これは史上はじめての出来事であります。一人の求職者に対して一つ以上の仕事があるという状況を作り出すことができたんです。
リーマンショック以来、減少の一途を辿っていた正規雇用は、昨年8年ぶりに増加に転じ、26万人増えました。この春の高校生の就職率は、24年ぶりの高さであります。大学生の就職率は過去最高となりました。

中小企業の倒産も、政権交代前から3割減少しています。ここまで倒産が減ったのは、25年ぶりのことであります。

所得アップについて、連合の調査によれば、中小企業も含めて、一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で、今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができました。今世紀に入って最も高い水準であります。それを実現することができたんです。そして、パートの皆さんの賃金も過去最高を記録しています。一部の大企業で働いている方の給料が上がっただけでは決してありません。パートで働いている皆さんの時給も過去最高となっているんです。どうかここも見ていただきたいと思います。

雇用をつくり、そして所得を増やす。
まだまだ道半ばではありますが、アベノミクスは順調にその結果を出しています。しかし、世界経済はこの1年あまりの間に想像を超えるスピードで変化し、不透明感を増しています。最大の懸念は中国など、新興国経済に陰りが見えることです。

リーマンショックに匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落し、さらに投資が落ち込んだことで、進行国や途上国の経済が大きく傷付いています。これは、世界経済が成長のエンジンを失いかねないということであり、世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念されます。世界の経済の専門家が今、警鐘を鳴らしているのは、まさにこの点であります。

これまで7回にわたって、国際金融経済分析会合を開催し、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授やクルーグマン教授をはじめ、米国や欧州、アジアの経済の専門家から直接意見を伺ってまいりました。その専門家の多くが、世界的な需要の低迷によって、今年、そして来年と、さらなる景気悪化を見込んでいます。

こうした世界経済が直面するリスクについて、G7のリーダーたちと伊勢志摩サミットで率直に話し合いました。その結果、新たに危機に陥ることを回避するため、適宜にすべての政策対応を行うことで合意し、首脳宣言に明記されました。

私たちが現在直面しているリスクはリーマンショックのような金融不安とは全く異なります。しかし私たちは、あの経験から学ばなければなりません。2009年、日本経済はマイナス成長となりましたが、その前年の2008年時点では、IMFも4%近いプラス成長を予測するなど、そのリスクは十分には認識されていませんでした。直前まで認識することが難しい、プラス4%の成長予測が一気にマイナスになってしまう、これがリスクが現実のものとなったときの危機の恐ろしさです。

私は、世界経済の将来を決して悲観している訳ではありません。しかしリスクには備えなければならない。今、そこにあるリスクを正しく認識し、危機に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます。今般のG7による合意、共通のリスク認識のもとに、日本として構造改革の加速や財政出動などあらゆる政うを総動員してまいります。

そうした中で、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきである、そう判断いたしました。

いつまで延期するか、についてお話しいたします。

中国などにおいては、過剰設備や不良債権の問題など、構造的課題への対応の遅れが指摘されており、新興国経済の回復には時間がかかる可能性があります。そうした中で、世界的な需要の低迷が長期化することも懸念されることから、できる限り長く延期すべきとも考えました。

しかし、私は財政再建の旗を降ろしません。わが国への国際的な信任を確保しなければならない。そして社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たす。安倍内閣のこうした立場は揺るぎないものであります。2020年度の財政健全化目標はしっかり堅持します。そのため、ぎりぎりのタイミングである2019円10月には消費税率を10%に引き上げることとし、30ヶ月延期することとします。その際に、軽減税率を導入いたします。

3年間のアベノミクスによって、国・地方を合わせて税収は21兆円増えました。その2年半の延期によってその間にアベノミクスをもう一段加速する。その事で、さらなる税収アップを確保し、2020年度のプライマリーバランスの黒字化を目指す考えであります。

1年半前、衆議院を解散するに当たって、まさにこの場所で、私は消費税率の10%への引き上げについて「再び延期することはない」とはっきりと断言いたしました。「リーマンショック級や、大震災級の事態が発生しない限り、来年4月から10%に引き上げる」と、繰り返し、お約束してまいりました。

世界経済は今大きなリスクに直面しています。しかし率直に申し上げて、現時点でリーマンショック級の事態は発生していない。それが事実であります。熊本地震を大震災級だとして、再延期の理由にするつもりももちろんありません。そうした政治利用は、ひたすら復興に向かって頑張っておられる皆さんに、大変失礼だと思います。

ですから、今回再延期するという私の判断は、これまでのお約束とは異なる、新しい判断であります。「公約違反ではないか」とのご批判があることも真摯に受け止めています。

国民生活に大きく影響を与える税制において、これまでお約束してきたことと異なる判断を行うのであれば、まさに税制こそ民主主義であります、であるからこそ、まず国民の皆さまの審判を仰いでから実行すべきであります。「信なくば立たず」。国民の信頼と協力なくして、政治は成り立ちません。新しい判断について、国政選挙であるこの参議院選挙を通して国民の信を問いたいと思います。

国民の信を問う以上、目指すのは、連立与党で改選議席の過半数の獲得であります。これは改選前の現有議席を上回る高い目標でもあります。さらに野党は、政策の違いを棚上げしてまで、選挙目当てで候補の一本化を進めています。大変厳しい選挙戦となる。それは覚悟の上であります。しかしこの選挙で、しっかりと自民党、公明党の与党で過半数という国民の信任を得た上で、関連法案を秋の臨時国会に提出し、アベノミクスを一層加速させていく、その決意であります。

9年前、私は総理大臣として、あの夏の参院選で大敗を喫し、その後、総理の職を辞することとなりました。あの時の挫折は今も私の胸に深く刻み込まれています。困難な政策であればあるほど、国民的な理解を得て、国民と共に前に進むほかに道はない。これがあのときの反省であります。その反省の上に、この3年あまり、国政に邁進して参りました。

4年前の総選挙、3年前の参議院選挙、1年半前の総選挙。国民の皆さんから大きな力を頂いて、アベノミクスを加速することができました。その結果、世の中の雰囲気は、確かに、皆さん、大きく変わった。大きく変わったことは事実であります。

まだまだ道半ばでありますが、雇用は確実に増え、所得も確実に上がっています。この道を力強く前に進んでいこうではありませんか。4年前の、あの低迷した時代に後戻りさせてはなりません。

世界経済がリスクに直面する今、ロケットが大気圏から脱出するときのように、アベノミクスのエンジンを最大限に噴かさなければなりません。デフレからの脱出速度をさらに上げていかなかればなりません。そのためにもはもう一度、国民の皆さまの力が必要であります。国民の皆さまのご理解とご支持をお願いいたします。

「新しい判断をした以上、国民の声を聞かなければならない」


―2014年11月の記者会見で述べた引き上げ時期を守れなかったことに対する政治的責任は? また、2019年10月という引き上げ時期は、自民党総裁任期を超えることから、野党から無責任との声もあるが。

さらに社会保障の安定財源が懸念される点については?(時事通信)

冒頭申し上げましたように中国など新興国の経済が落ち込んでおります。その中で、世界経済において、需要の低迷、成長の減速が懸念されているわけであります。

こうした世界経済のリスクについて、今回伊勢志摩の地において、日本が議長国として行ったサミットにおいて、この世界経済の状況、リスクについて認識を共有したわけであります。

そうした中において、新たな危機に陥ることを回避するため、適宜にすべての政策対応を行うことで合意をし、これが首脳宣言に明記されたわけであります。G7と協力して、日本としても構造改革の加速や財政出動などあらゆる施策を総動員していかなければなりません。それはまさに今回議長国として、首脳宣言を作成する、いわば、リーダーシップをとった国の責任でもあろうと思います。

まさに、こういうリスクがある中において、「需要が低迷する」「成長が減速する」というリスクの中で、やるべきことをすべてやっていかなければならない。こういう中において、G7で私たちが進めてきた、いわば三本の矢の政策を進めて行く。この認識を共有したわけであります。

この認識を共有する中において、この議論を主導した議長国・日本としての責任があるだろうと思います。

その中で、先程も申し上げましたが、「政治的な責任」、「かつて言っていたことと違うじゃないか」と。確かに「リーマンショック級の出来事」は起こっていません。大震災も起こっていないのは事実であります。

ですから、新しい判断をした以上、国民の声を聞かなければならないわけであります。「代表なくして課税なし」「税こそ民主主義」。この考え方は私の考え方として一貫している。国民生活に大きな影響を与える税制において、新しい判断を行うのであれば、ご指摘のようなご批判も含めて、「その判断は前の判断と違うではないか」という批判も受け止めて、そして、国民の皆様の審判を受け止めた上で、秋の臨時国会に、そのための法案を出したいと考えています。

まさに「民主主義とは何か?」。それは選挙を通じて国民の声を聞くことであります。この政治の 責任、国民の声を聞くことによって、我々はしっかりと、この選挙に勝ち抜いて行く中において、責任を果たしていきたいと考えています。国政選挙である、この参院選挙を通じて、国民の信を問いたいと考えた次第であります。

そして、この選挙でしっかりと過半数という国民の信任を得た上で、19年10月からの引き上げを明記した関連法案を秋の臨時国会で成立させたいと考えています。加えて、総合的かつ大胆な経済対策を講じて、アベノミクスをいっそう加速させていてく決意であります。

先般の伊勢志摩サミットの合意に基づいて、G7諸国と力をあわせて、世界経済が直面する リスクに立ち向かうことによって、19年10月からの引き上げが可能な環境を整えるべく、力を尽くしていきます。

そして、「総裁任期を超えるのではないか」というご指摘がございました。今回は経済の再生のためには、アベノミクスを進めていく上において、負荷をかけずに、アベノミクスを最大限に回転させることが必要です。

そして、脱出速度を得て、デフレから脱却をする。まさに、このリスクに直面するG7で、経済のけん引役を果たして行くという責任をそこで果たしていきたいと考えています。そのためには、先程も申し上げましたように、「出来る限り伸ばす」ということも考えたわけでありますが、同時に、「財政再建」という、この旗を下ろすつもりはありません。

その中で、最適のタイミングが19年10月からという判断に至ったわけであります。むしろ、自民党の総裁任期で判断してはならないと考えたわけであります。それは国民生活にとって、大きな影響のある経済です。これを間違えれば、また20年間続いたデフレに戻る。「どんなに頑張ったって仕事がない」という状況に戻ってしまう。「どんなに頑張ったって給料があがらない」という状況に戻ってしまう。

それを「単に私の任期が○○だから、その中におさめる」。そういう判断は私はしませんでした。経済的にこれが正しいという時期を選んだわけであります。総裁任期によって、判断を歪めてはならない。当然、そういうご批判はあるだろうと思いました。

しかし、例えば2020年のGDP黒字化目標というのも、私の任期を超えている目標ではありますが、この目標にもしっかりとかなう判断をしたところであります。この実現に向けて、道筋を私の任期中にしっかりとつけていく。それが私の果たしていく責任である。そう考えたところであります。

そして、社会保障については給付と負担のバランスを考えれば、10%への引き上げをする以上、その間、引き上げた場合と同じことをすべて行うことはできないということはご理解をいただきたいと思います。

民進党のように赤字国債を発行して、その給付をまかなう、社会保障費をすべてまかなうということは、私は無責任だと思います。赤字国債を財源に社会保障の充実を行うような無責任なことは私たちは行いません。自民党と公明党の連立与党は、そういうことは絶対にしないということは、まず明確に申し上げておきたいと思います。

しかし、安倍政権のもとで、子育て世帯を支援して行く。この決意は揺らぎません。保育の受け皿50万人分の確保。来年度までの達成にむけ、約束どおり実施いたします。また、「介護離職ゼロ」 に向けた、介護の受け皿50万人分の整備もスケジュールどおり、確実に進めて行きます。

さらに保育士、介護職員等の処遇改善など「一億総活躍プラン」に関する施策については、アベノミクスの果実の活用も含め、財源を確保して優先して実施していく考えであります。

この3年半のアベノミクスによって、国と地方あわせて税収は21兆円増加をしました。私がこの経済政策を進めたとき、「税収がそれで増えていく」と言った人は少ないと思います。私は、「必ず税収は増えていく」と主張しましたが、ずいぶんそれは批判にさらされました。

そういう批判がありましたが、我々がアベノミクスを進めた結果、国地方をあわせて税収が21兆円増えたわけでございます。ですから、この一事を見ても、私たちの施策が失敗したとはいえないと思います。

民進党も「失敗した」というのであれば、共産党と一緒になって代わりの政策を示していただきたいと思う次第でございます。まさに逆戻りになってしまう。しっかりとこの道を進んでいくことで、私たちは税収をさらに増やしていきたい。アベノミクスを一段と加速することによって、税収を一段と増やしていきたい。そう考えているのです。

そして、その果実も使って、可能な限り社会保障を充実させて参ります。いずれにせよ、優先順位をつけながら、今後の予算編成の中で、最大限努力をしていく考えでございます。

「衆議院解散が、頭の中をよぎったことは否定いたしません」

―参院選の日程について。また、増税延期にあたり衆議院を解散しなかった理由は?任期満了をにらんだ次の衆議院選挙のタイミングは?(テレビ東京)

まず参議院選挙の投票日は7月10日といたします。公示日については、沖縄の慰霊の日に配慮して、6月22日といたします。これを明日閣議決定いたします。

そして、この参議院選挙の最大の争点は、まさにアベノミクスを力強く前に進めていくのか、あるいは後戻りするのか、これを決める選挙なんだろうと。こういう風に考えています。その中で「国民の信を問う」選挙でありますから、改選議席の過半数を自民党、公明党の与党で獲得べく、全力で選挙戦を戦っていく決意であります。

そして、同時選挙についてでありますが、先程「国民の信を問いたい」と申し上げましたが、今週に入って野党から内閣不信任案が提出されるということに至りました。その中において、内閣不信任案でありますから、「内閣は総辞職せよ」ということなんだろうと。これは当然、岡田代表はどういうわけか、おっしゃらなかったのですが、「解散を求める」という意味もあったのかなぁと思いますから、その時に衆議院を解散することが、私の頭の中をよぎったことは否定いたしません。

しかし、熊本地震の被災地ではいまだ多くの方々が避難生活を強いられている中において、参議院選挙を行うだけにおいても、その準備でも大変なご苦労をおかけをしているという状況であります。こうしたことなどを考慮いたしまして、同じく国政選挙である参議院選挙において、「国民の信を問いたい」と、このように判断したわけであります。

その中においては、参議院の全体過半数であれば、前回勝利した分、大きなプラスがありますが、それはいれずに「信を問う」というのであれば、今回の改選議席の過半数。これは厳しい戦いになりますが、それを目標として定め、勝ち抜き、信任を得たいと決意をしたところであります。

そして、私の任期は、18年の12月でなく9月まででありまして、この任期の間に、選挙をやるかどうか。今の段階では、解散の「か」の字もないということであります。

選挙の勝負というのは常に、「与党で過半数」

―参院選の目標議席について。以前は、改憲勢力で2/3という話もしていたが、これを目指すのか。また2/3を獲得した場合、任期中の憲法改正の発議について(朝日新聞)

憲法の改正というのは、衆議院、参議院それぞれ2/3。これはそう簡単なことではないということは、従来から申し上げておりますし。例えば、自民党、公明党与党でそれぞれ2/3をとることは、不可能であると申し上げていました。

まさにそれは憲法審査会において議論をする中において、逐条的な議論を勧めて行く中で。 「それだったら賛成しましょう」あるいは「ここをこうすれば議員がついていく」ということになって、はじめてその可能性が見えてくるわけであります。

この選挙においても、我々は憲法改正草案を示していますが、「これをやりますから2/3になるために賛成する人は誰ですか」と募っているわけではありません。ですから、それはそう簡単なことではありませんし、いわば、決意として申し上げて入るわけでありまして。

選挙の勝負というのは常に、「与党で過半数」ではないでしょうか。そうでなければ、「じゃあどちらが勝ったのか」ということになります。野党において、まったく政権に遠い状況でも「勝ったのか?」ということになってしまいますから、これは世界の選挙の常識として、「選挙で過半数をとった勢力が政権を担います。ですから、そこが分岐点であるのは、当然のことであります。

それ以下であった政党が「勝った」ということはおかしいのではないでしょうか。つまり、まさに勝負の基点はどこかと言われれば、過半数だろうと思います。

ですから、私は再三申し上げておりますように、普通であれば参議院全体で過半数としては、前回勝っておりますから。参議院は6年間という長いスパンでどちらが過半数をとるかということになりますから、私たちは前回60を超える議席をいただいておりますから、これを足しこんだもので、過半数ということなろうと思います。

ですから、今度こういう形で消費税について、前回申し上げたことと違う、新しいことを申し上げている中で信を問う。こういうことを申し上げていなければ、私は参議院全体での自民党・公明党での過半数を維持する。これを目標としていました。

今回は、そうではなくて、まさに「この国政選挙で信を問いたい」と申し上げておりますから、過半数を改選議席の中で取るという厳しい目標を掲げたわけであります。

「『一億総活躍社会』というのは、みんなが活躍できる社会」

―サミットで中間層が利益を行うような投資を行うべきだという認識が共有された。個人消費の伸びに力強さがない中で、中間層が細っている、格差が拡大しているなどの批判があるが、この点についてどう考えているか。

また、中間層を分厚くするための政策について、どのように考えているか?

サミットにおいても中間層の重要性について議論がありました。私からも中間層は重要であると。社会の安定性を確保して行くためにも中間層が必要であるという趣旨のことを申し上げたわけであります。

その考え方のもとに、我々もいままで政策を進めてまいりました。三本の矢によって「もはやデフレではない」という状況を作り出すことができました。

その中で、例えば非正規で働く方々の正社員化や最低賃金を三年連続であげたことによって。先程「パートの時給が過去最高となった」と申し上げましたが、これは三年間連続で、15、16、18円と高い水準で最低賃金を引き上げた結果です。

今後も中間層が、将来に期待をもてるようにするために、財政支出や民間投資が重要であるという指摘がありました。まさにその通りだと。

そのために我々は「一億総活躍社会」の実現を目標に掲げて、教育費の負担軽減や子育て、介護と仕事を両立できる環境整備に力を尽くしているわけであります。こうしたわが国の取り組みを踏まえて、私から各国首脳に対して、人材育成や教育といった分野への官民のさらなる投資にコミットすることを訴えました。

成長が、社会のすべての層の利益となることの確保や、人材育成、教育等の経済成長に資する分野へのさらなる投資が合意されたわけであります。今後このG7の合意を踏まえまして。先程も申し上げたように中間層が大切である。そのために、「一億総活躍社会」を進めていく。その中のエッセンスについて、これをG7の合意として書きこんでいくべきだと、合意され、今申し上げたことが入り込んだわけでありますが。

その合意を踏まえて、「同一労働同一賃金」の実現による非正規雇用のさらなる処遇改善や保育士、介護士の処遇改善、保育介護の受け皿の整備や奨学金制度のさらなる拡充など、「一億総活躍社会」の実現に向けた施策を進めていきたい。

「一億総活躍社会」というのは、みんなが活躍できる社会であります。であるからこそ、その結果は、これを進めていけば、中間層は厚くなり、いわば、欧米で起こっている一部の人たちに富が集中する、一部の人にしか機会がないという社会ではなく、みんなにチャンスがある社会を作って行く。みんなに機会がある社会を作っていく。みんながそれぞれ才能を生かしていくことが出来る社会を作っていくことが、我々が進めている「一億総活躍社会」であり、まさに今回の伊勢志摩サミットで指摘された議論は、我々が進めてきた議論、あるべき政策と方向性を一致するものである。このようにと思っております。

・衆院を解散し、ダブル選にすべきだったと思う?
・消費増税見送り判断、あなたの意見は?