「安保法を通そうとしている国会議員には立法する正統性がない」 一人一票運動の升永英俊弁護士が指摘 - BLOGOS編集部
※この記事は2015年07月31日にBLOGOSで公開されたものです
衆議院や参議院の選挙における「一票の格差」を批判し、人口に比例した「一人一票」を実現すべきだと訴えて、継続的に違憲訴訟を展開している升永英俊弁護士が7月30日、外国特派員協会で記者会見を開き、安保法案の審議に対する見解を述べた。升永弁護士は「違憲状態の選挙で選ばれた国会議員には正統性がない」として、次のように話した。安保法を通そうとしている人たちは「正当に選挙された人」ではない
我々は「一人一票」を日本で実現しないと民主主義国家が成り立たないと考えている。一人一票は、憲法の条文の中に書いてある。まず、憲法56条2項は、国会議員の多数決で国の仕組みを決めるというルールを定めている。そして、憲法前文には、主権が国民にあり、主権者たる国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動すると書いてある。
つまり、国の仕組み、国の政治を決めるのは、国民が国会議員を通して行うとされている。そして、その国会議員の多数で国の仕組みを決めるというルールがある。国民が国会議員を通して、その多数で国の仕組みを決めるということは、主権者たる国民の多数意見で国の仕組みを決めるということ。そう憲法は明文で定めているというのが、我々の主張だ。
「国の仕組みは、国民が、国会議員というツールを使って多数決で決める」というルールが憲法に定められているが、国民の多数意見と国会議員の多数意見が一致するためには、一人一票、つまり、人口比例でないと不可能。そこで、我々は6年前から、一人一票の裁判を始めた。
一人一票の裁判はこれまで64。この6年間に、全国で、64の訴えを高等裁判所に提起した。そのすべてで判決が出ているが、驚くことに、64のうちの8つが「一人一票は憲法上の要求だ」と言った。
それまで日本人は、参議院は6倍の人口差があってもいい、すなわち一人0.16票でもいいという考えを持っていた。衆議院も3倍の人口差があってもいい、一人0.3票でもいいと言っていた。それが、6年の間でここまで来たのは、大変な進歩だと私は思う。
高裁判決のあとには、最高裁判決が4回出ている。その最高裁判決は4つとも、「選挙は違憲状態であるが、有効だ」と言った。その結果、安倍さんは首相でありつづけて行政権を行使し、国会議員たちは立法活動をしている。ところが、彼らは「違憲状態の選挙」で選ばれた人だ。
去年の11月に出た最高裁判決で、5人の裁判官がとても重要なことを言った。最高裁の15人の裁判官のうち、「違憲状態だけど選挙は有効」と言った、我々からすると悪い裁判官が11人いたが、そのうちの5人が非常に重要なことを言った。
その5人は判決の補足意見で、「違憲状態の選挙で選ばれた国会議員は国会の活動をする正統性がない」と言い切った。これは恐ろしいほど、重要なこと。選挙で選ばれたのに、国会活動をする正統性がないと言った。
そんな人たちが現実には、立法をしたり、総理大臣を選んだり、総理大臣になって行政権を行使している。これはとんでもないこと、クレイジーなことだ。
安保法がいま、参議院で議論されているが、反対派の理屈は、マスコミも学者も「憲法違反の法律を通すのは良くない」というもの。法律の内容が憲法違反だから反対だ、という理屈で一色になっている。
しかし、一番の問題は、法律を通そうとしている人たちが、正統性がないということ。正統性のない人たちが国会議員と名乗ってやっているだけ。これはお話にならない。木の根が腐っている。
このポイントを日本のマスコミが言うようになれば、安保法を通そうとしている人たちが正当に選挙されておらず、立法の資格がないということが一気に広がれば、この安保法は止められると思う。
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