山谷国家公安委員長の会見に続き、松島みどり法相の会見でも在特会についての質問が - BLOGOS編集部
※この記事は2014年09月26日にBLOGOSで公開されたものです
26日、日本外国特派員協会で松島みどり法務大臣が会見を行った。会見では前日の山谷えり子国家公安委員長・拉致問題担当大臣の会見に続き、海外メディアから在特会についての質問が出たほか、7月に行われた谷垣禎一前法務大臣の会見と同様、死刑制度についての質問も出た。 写真一覧
冒頭スピーチ
こんにちは。今日は法務大臣として、また安倍政権が活用している女性、その女性閣僚のうちの一人としてお話したいと思います。私がこの法務大臣を拝命したときに安倍総理から指示されたのは、日本を世界で最も安心・安全な国に作り上げ、それを守っていくことでした。
私自身が国会議員11年務めてきた中で最も印象的だったのは、犯罪被害者支援法を議員立法で作ったことです。
その中で決めたことは、例えば犯罪の被害に遭った方およびご家族、ご遺族、そういった方々が刑事裁判に参加することができる。愛する人が殺されたとしたら、最後はどういう風な様子だったのかを質問したり、被告にどういう刑を希望するかについて、被害者やその家族が法廷で言うことができるということでした。
経済的なことで言えば、国が治安を守れなかったという反省のもとに立つ、被害者や遺族の方々への給付金を引き上げたこと。そしてまた、これは国交省の所管ですけれども、たとえば被害にあったお家、刑事事件ですと血が飛び散っているようなお家に住むことはできませんから、公営住宅に優先的に入れるようにと、そういうことも勝ち取りました。
法律は人を幸せにするものでなければならないので、それだけにとりわけ関わる人の責任は重大だと思います。 活動の中で、私には法律を作りたい、改正したいというテーマがございました。奇しくも法務大臣になりまして、実現させたいと願っております。それは女性に対する犯罪、性犯罪の法定刑が、物を奪った罪に対する刑より軽いということに対する怒りと問題意識から発しております。
これは日本の刑法ですが、強姦致死傷、つまり強姦の結果相手が死んでしまった、ケガをさせてしまった場合、5年以上または無期懲役。一方、強盗致死、つまり物を奪って死なせてしまった場合、死刑または無期。強盗で死なせてはいないけれどもケガをさせた場合、懲役6年以上または無期懲役。つまり、物を盗って怪我させた場合のほうが、強姦させてケガをさせた、死なせた時よりも重い。これは絶対におかしいと思ってきました。
国会議員として法務委員会で質問してきた中では、それは明治時代からの流れであり、昔は物盗りはもっと重罰で、女性に対する罪は刑が軽かったのを少しずつ改めてきたと言うんですけど、そこに正義はないと私は思ってきました。
さきほども申し上げました、犯罪被害者およびその家族や遺族の立場に立つ法律をつくる中で、犯罪の中でも性犯罪に関しては、家族も被害者も声を上げにくいという点に気づきました。ですから日本の国会議員に女性は少ないんですけど、私がしっかりと追及してきたいと思うに至った次第です。
法務大臣になったその日に、法務省の事務当局に、この法案の改正を早急に検討をするよう指示しました。私の任期はいつまでかわかりませんが、この問題に道筋だけはつけていきたいと思っています。
もうひとつ、総理から指示を受けた、安心・安全な国・日本ですが、日本の治安を維持するためには再犯を防止すること。これが最重要であります。平成24年に刑務所に入った人の6割が二度目以降の刑務所入りでした。刑務所から出た人が再び罪を犯さないために何が必要か。それは帰る場所があること、そして仕事があることです。
ひとたび罪を犯したけれども、そこから立ち直ろうという人には仕事を提供する。紹介する。そういった方を受け入れる「協力雇用主」が採ってやろう、となりやすい環境、また、その仲立ちをする、全国に4万8千人いる保護司という民間のボランティアが業務を行いやすい環境を整えることが法務大臣の仕事です。
2020年、東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されております。そこへ向けて、私たち日本は観光立国を目指しており、昨年は日本へ来る外国人が初めて1000万人を突破しました。今年は対前年比2割のペースで増えています。 日本は人口が減っていますが、国土交通副大臣、直近では産業経済副大臣として、これを経済政策のひとつとして、携わってまいりました。
今回法務大臣としては、入国管理をスムースに行うことが観光立国の推進のために重要なことであります。すでに始めているのは、何度も外国と行き来するビジネスマンなどの日本人で、あらかじめ本人が了解して指紋を登録している場合は 自動ゲートでスムースに行けるようにしております。それを度々日本来られる外国のビジネスマンの方に対しても同じような制度にしたいと思います。
一挙に大勢の何千人のお客さんが来られる大型クルーズ船にも、入管手続きを特別にやっていきたい。また、顔認証、これは機械を良くしようと研究開発しているところですが、入管の職員、スタッフも限られているので、その活用をうまくしていきたい。
入国管理の職員は2200人おりますが、毎年100人ずつ増やしており、来年度は300人増やせるように、財務省と交渉を始め、予算を獲得しようと頑張っているところです。
外国のお客様に待ち時間を減らすことで、観光立国に資するようにしたいと思います。 外国のお客さんを迎える事が出来る体制、そして、世界で一番安全であることによって、「日本に行って居心地が良かったね」と言っていただけるように、職務を果たしていきたい。
いま、"Women in Politics"について、というメモを渡されました(笑)。 先ほど申し上げた、性犯罪に対する厳罰化がひとつです。それと同時に、ストーカー、DV対策。 家庭内の暴力も残念ながら増えています。ストーカーやDVから女性を守る、被害に遭っていると感じた時、法務省の出先機関である法務局に訴えて、職員が指示をすることができる。 これは人権擁護も所管しており、14000人のボランティアの人権擁護委員に委嘱もしていますので、児童虐待、セクハラについても、こういう方たちに相談できる。女性の人権を守っていくこと、啓発していくこともやってもらっている。 その分野でもしっかり仕事をしてまいりたいと思っております。
最後にひとこと、プライベートを含めてお話させてください。
私は1980年に大学を卒業しました。当時、4年制大学を卒業した女性が男性と同じような就職をすることは極めて困難でありました。東大経済学部の男性の友人たちのところには、3メートルくらいの高さまで積み上がるほど、数多くの企業から案内が来ました。私たち女子学生のところには一冊も来ませんでした。
安倍総理が、安倍政権が女性を活用しよう、企業においても官庁においてもそれをあらゆる場面で促進していこうと旗を振っていることは、私の人生を振り返ると夢のようなことです。
女性が仕事を持つこと、そして続けていくこと、さらに家庭を持って、できれば子どもも。もちろん本人の気持ち次第ですが、それを同時に続けられる、そんな日本にしたいと心から思っております。
私自身は、記者から政治の道へと変わりましたが仕事を続けることができ、結婚もしました。ところが残念ながら子どもを持たないままこの年齢まで来ました。日本のすべての子どもたち、子どもを持ちたいお父さん、お母さんのために環境を変えていきたいと思っています。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答
ー大臣は、過去に衆議院法務委員会で「刑務所でイスラム教徒に豚肉を除いたメニューを出すのは逆差別ではないか」と言っておられました。そのお考えに変わりはありませんしょうか。(フリーランス・田中龍作氏)松島大臣:結論から言うと変わりました。つまりどういうことかといいますと、私確かに、宗教名を出したのではなく、イランという国名をだしたかと思いますが、日本の刑事施設に収容されてる多様な人達の取り扱いについて、日本国民の中から色々な意見が出ている、そのひとつを申しました。
その後、私も色々な勉強をしてまいりましたし、そしてまた法務大臣として、国内外のいろいろなご意見のバランス、とくに宗教に対する寛容性というのは国際的な人権の中でも非常に重要であるという認識にも立って、食事はもちろんのこと、実際に刑事施設で行われています各種宗教的な儀式も、大きな音を立てたりするなどということがなければ、お祈りを捧げてもいいし、いろいろな対応をしていいと、法務省は規定している。それが正しいと思っております。
ー死刑は廃止すべきだと定期的に欧州各国から圧力があると思う。なぜ欧州の国々は日本の考えを理解してくれないのか、疑問に思っているか。
また、在特会が話題になっているが、この組織についてどう思っているか。プラスの面もあると思うか。(TIMES)
松島大臣:死刑の問題について、今の日本の立場をご理解いただいているかと思いますけれども、大体5年おきに内閣が世論調査を行っていますが、最新の結果では「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた国民が85.6%となっております。一方、「どんな場合でも廃止すべきだ」と答えたのが5.7%、「わからない」が8.6%となっております。
各種国際機関から死刑制度についてご批判があることは承知をしていますが、それは当面外交的な手段を通じて、そのようには考えないということを、つまり諸外国の批判は当たらないということを、日本政府としても示している次第です。
もう一つ、在特会については、日本の憲法で結社の自由が認められております。そしてそれに該当するとしたら、私が良い点、悪い点について判断する材料もありませんし、会があるということを知っているという程度ですので、何とも言いようがありません。
つまり、どういう言動をされているかを仔細に承知しているわけでないですし、どのことについて聞かれているかわからないので、評価し得ない、何とも言いようがない。
ー今、これだけ話題になっているので、仔細な情報を入手したいと思われるか(司会)
松島大臣:かつて新聞の情報を勉強した限りでは、京都のある民族の学校周辺での行動について、在特会のメンバーの人に対する判決が出たことは承知しておりますが、会の目的などは今のところ知らないというか、法務大臣が所管する会でもございませんので、わかりません。
ー先ほど、在特会は法務省の所管ではないのでとお話がありましたが、人権の問題はまさに法務省の所管です。
在特会のデモの中で、「韓国人を殺せ」「在日韓国人出て行け」という、いわゆるヘイトスピーチがたくさんあり、あるいは在留について法律問題になっていたフィリピン人の女の子が通っている中学校の前で「出てけ出てけ」と言ったりと、人権問題が多発しております。これについて、法務大臣としてどういうふうに取り組んでいくのか。(フリーランス・江川紹子氏)
松島大臣:今の江川さんの質問についてならば、しっかり答えることができます。つまり特定の行動、マイノリティと言われる方たち、特定の人種や民族、国籍の方たちに対する、憎悪ですとか、侮蔑ですとか、そういった言動。ヘイトスピーチとはそういうものだろうと思いますが、これは絶対に許してはならないと思います。
許してはならないことですが、それについてはどういう対応を取るか。いくつか考えられると思います。 ひとつは現行の法律の枠組みの中でも、先ほど申し上げた判決のように、民法上の不法行為、名誉毀損に該当する場合には民法でも損害賠償責任が発生しますし、刑法でも侮辱罪、威力業務妨害があたってまいります、そういった形で罪なってまいりますので、そういうことが成立しうると思います。ただこの場合は、特定の個人や団体というものに特定した行動でなければ法体系ではなかなか難しいが、そういう対応がある。
そしてですね、民事上の不法行為と刑事罰の対象にならない、やや漠然としていて、しかし人の人権を傷付ける。これについては、まずは法務省としては人権擁護という観点に立って、さっきは女性の問題を挙げましたが、いろんなテーマで啓発活動を行っています。そのテーマの中の重点項目のひとつが「外国人の人権を尊重しよう」ということがあります。
ぜひみなさんに知っていただきたいのですが、11月15日に、大阪で「外国人と人権」というタイトルで法務省がシンポジウムを行います。1年に3回だけやっているシンポジウムのうち、2回は被災地の問題でしたから、特別人権の問題の中でも「違いを認め、共に生きる」という問題を、私たち法務省が重要視していると理解していただければと思います。
ー経済学部をお出になったこととリンクしているかも知れないが、EUが特に人権の課題や死刑について求めている現状がある。同時にEUと日本はEPAを結ぼうとしているが、人権侵害があれば成立しないと言っている。人権問題や死刑の問題が、EPA締結に影響する恐れがあると思うか(オランダ・経済誌)
松島大臣:それはEU側の対応だと思いますので、また、EPA交渉については外務省、経済産業省が取り組んでおりますので、私の言葉が影響を与えると行けないのでコメントは差し控えたいと思います。
ただ、特に人種、民族の違いを分かり合った上で対応するのは極めて重要な課題だと思います。
死刑に関しては、先ほど世論の考え、また三審制でそのような決定が出された場合には、重大に受け止めて、もちろん死刑制度というものが人の命を奪う大変な制度であることは認識しておりますが、凶悪犯罪もある、被害者の感情もある、そして世論もこういう状況であることを受けて、今、日本で死刑制度廃止を取り上げることはふさわしくないと思います。
ー過去数ヶ月の間に、二人が無罪であるという決定が出て釈放された。もし死刑が執行されたということであれば、死刑囚であるべきでは無かった人が殺されてしまたっということだ。こういうことがあるからこそ、死刑は廃止すべきだという考えがある。(ドイツ・ジャーナリスト)
松島大臣:直近におきまして、死刑確定囚が無罪であると覆るような事案は無かったと考えておりますが…個別の案件については触れなくないのですが、袴田事件についてでしたら、再審請求を認めることを静岡地裁が決定をし、それに対して地検が抗告しておりますので、彼が無罪であることが確定したわけではありません。
ー朝鮮学校の処遇について、人種差別撤廃委員会で、朝鮮学校が外国人学校のなかで唯一特別視をされており、高校無償化から除外をされ、地方自治体の補助金も打ち切られているという状況について、日本政府の改善を求める勧告が出された。先ほど外国人の人権についての話があったが、今の朝鮮学校の置かれている状況を人権侵害と考えるか。また、勧告を受けて何かアクションを起こす考えは。(神奈川新聞)
松島大臣:高校無償化の対象に外国系のどの学校が入って、どの学校が入らないかは、これを所管しているのは文部科学省並びに各自治体であると思います。残念ながら私はそれぞれについては詳しく知りませんので、知らない状況では答えられない。さらに、国際機関などからの指摘についても、中身を見ておりませんので、回答を差し控えさせていただきます。
ー日本の勾留期間が(最長で)23日間であることについて、勾留される人にとっては残虐な対応ではないかと言われている。この期間について変える考えは。(司会)
松島大臣:現在のところ、勾留期間の問題に関しまして、省内その他で議論は起こっておりませんし、いまのところ議論を始める予定はございません。
ーNISCという組織の調査によると、日本の企業の約半分が非常にサイバー攻撃に対して脆弱であるとのことだが、この状況に対してはなにか考えているか。(Daily Beast)
松島大臣:日本政府の各機関ももっと強固である方策をとらなければならないと思います。ただ、そのまとめ役は日本では内閣官房でありまして、法務省はその所管ではないので、それについてはどういった法制度を作るかという立場にはない。 ただおっしゃったように、企業も政府も、もっともっとしっかりするための方策を急いでやらなければならないと思っている。
ー靖国神社に参拝するつもりはあるか。(司会)
松島大臣:靖国神社には、もちろんお参りしたことがります。しかしこの法務大臣としての職責を全うする間、政府の一員でいる間はお参りするつもりはありませんし、私は靖国神社にグループで行くのは私の考えにはそぐわない。行くとしても、一市民一日本人として戦没者の例を敬いたい、慰めたいという考えであり、みんなでお参りする会にもはいっておりませんので、私の心の中の問題でございます。
昨日行われた山谷えり子国家公安委員長・拉致問題担当大臣による会見
・「ヘイトスピーチ、憂慮にたえない」・「拉致問題の解決に、“オールジャパン”で取り組んでいきたい」
前任の谷垣禎一氏による会見(7月17日)
・「ヘイトスピーチ、恥ずかしい」「死刑執行の決断は非常に荷の重い仕事」・外国人労働者、会社法…海外メディア向けに取り組みを報告