【大阪府】全43市町村の待機児童数を調査! 保育園に入りにくいのはどこ? 大阪市の状況は?
東京都、神奈川県に次いで人口が多い大阪府。2025年には大阪・関西万博の開催が予定され、経済的にも盛り上がりを見せています。一方、女性の就業率や共働き世帯の増加により保育ニーズは大きく高まっています。そこで今回は、大阪府の待機児童数を調査。その結果をもとに、保育園に入りやすく子育てがしやすいと考えられる市町村を紹介します。
大阪府の待機児童数は多い? 少ない?
全国の待機児童数は、2万6,081人を記録した2017年以降、年々減少しています。2021年4月1日時点では過去最少の5,634人となり、1994年の調査開始以来、初めて1万人を切りました(出典:厚生労働省「令和3年4月の待機児童数調査のポイント」P2)。
待機児童の内訳を見ると、首都圏や近畿圏などの都市部に約6割(3,516人)が集中しています。そこには大阪府も含まれますが、大阪府全体の待機児童数は2021年4月1日時点で158人。人口ランキング上位10都道府県(東京都・神奈川県・大阪府・愛知県・埼玉県・千葉県・兵庫県・北海道・福岡県・静岡県)の中では、静岡県、北海道に次ぐ少なさです。
大阪府の待機児童数は過去最少を記録
大阪府の待機児童数は2018年に初めて1,000人を切り、2021年4月1日時点では過去最少の158人となっています。この要因と考えられるのが、保育の受け皿の拡大です。府では、国の交付金を財源とした「大阪安心こども基金」を設立し、市町村による施設整備や認定こども園の拡充などを支援しています。その結果、2021年には府全体の保育施設が前年比109ヶ所増の2,740ヶ所に、受け入れ定員は前年比6,108人増の19万8,072人となりました。
大阪府で待機児童が多い市町村は?
全43市町村のうち、2021年4月時点で待機児童がいるのは9市。ワースト1位の泉大津市は府南西部の泉北地域にあり、大阪都心部や関西空港まで鉄道で約30分とアクセスがよく、共働き世帯の増加などにより保育ニーズが高まっています。しかし、慢性的な保育士不足などが原因で保育環境の整備が思うように進まず、2021年の定員数は前年比64人減の1,493人という結果に。待機児童が3年連続で増加する1つの要因となっています。
なお大阪府では、通常年1回の国家試験に加え、「地域限定保育士試験」を実施することで年2回の受験チャンスを設けたり、保育士の復職をサポートする「大阪府保育士・保育所センター」を設立したりするなどして保育士の確保に努め、各市町村の待機児童解消を支援しています。
大阪府の約8割の市町村で待機児童ゼロを達成!
大阪府では、2021年4月時点で全体の約8割に当たる34市町村で待機児童ゼロを達成しています。市町村別に見ると、前年に待機児童数50人でワースト2位だった島本町、38人でワースト4位だった東大阪市がいずれも待機児童ゼロを実現しています。
また、箕面市、豊中市、池田市といった北大阪地域の自治体も、人口が増えているにもかかわらず待機児童ゼロを実現しています。
なお、2021年4月時点で待機児童ゼロの市町村は、堺市、東大阪市、豊中市、枚方市、高槻市、茨木市、八尾市、寝屋川市、守口市、箕面市、大東市、泉佐野市、松原市、門真市、池田市、羽曳野市、貝塚市、富田林市、河内長野市、交野市、高石市、柏原市、熊取町、泉南市、島本町、阪南市、河南町、忠岡町、太子町、田尻町、岬町、豊能町、能勢町、千早赤阪村の合計34市町村です。
待機児童にカウントされない「隠れ待機児童」に注意
待機児童とは認可保育所などに入所できなかった児童のことをいいますが、一方で、待機児童にカウントされないケースがあります。それが下記4つのケースです。
【待機児童に含まれないケース】
・地方単独保育施策を利用している場合
※地方単独保育施策とは、自治体が関与して一定基準の保育サービスを提供している認可外保育施設(企業内保育所等)のことを指します
・求職活動中の保護者が、求職活動を休止している場合
・特定の保育所などを希望して、空きがある施設に入所しない場合
・育児休業中の場合
これらのケースに該当する児童は「隠れ待機児童」や「利用保留児童」などと呼ばれています。その数は、2021年4月時点では大阪府全体で7,051人にも上り、37の自治体で「隠れ待機児童」が存在しています。
特に多いのが「特定の保育所などを希望して、空きがある施設に入所しない場合」です。背景には、「自宅近くの保育施設に入れたい」「兄弟・姉妹と同じ保育所に通わせたい」「質の高い保育サービスを提供している施設に入所させたい」など、保護者のさまざまな思いがあります。
2021年4月時点の隠れ待機児童数を市町村別に見ると、大阪市が2,050人と圧倒的に多くなっています。この「隠れ待機児童」の解消が、今後の大きな課題と言えるでしょう。
大阪市の「待機児童」「隠れ待機児童」解消に向けた取り組み
大阪市では「待機児童解消特別チーム」を立ち上げ、さまざまな施策を講じて待機児童や「隠れ待機児童」の解消に取り組んでいます。2021年11月に行われた第16回特別チーム会議で議題に挙がった、2つの主な取り組みを紹介します。
市が所有する土地や建物を活用した保育施設の整備
大阪市では、市有地を使った認可保育所の整備や市役所や区役所、市営住宅の空きスペースを活用した小規模保育事業所の整備などに取り組んでいます。2022年4月には、JR難波駅からほど近い市所有の浪速公園に認可保育所が開設されました。こうした取り組みは、用地確保が難しい市中心部の保育ニーズに応える効果的なもので、2017年からの4年間で約2,000人分の入所枠確保につながっています。
大規模マンションの事業者に対し保育施設設置の事前協議を義務化
大規模マンションが建設されるとクローズアップされるのが保育ニーズの増加です。これに対応するため、大阪市では建設事業者に対して保育施設の設置に関する事前協議を条例で義務付けています。また、事業者による保育施設の設置を促すため、そのメリットとしてマンション住民が優先的に入所できる特例(開設から5年を上限)を設けています。2022年4月には北区と中央区に、10月には東淀川区に保育施設を併設した大規模マンションが誕生する予定です。
このほか、大阪市内に転入した新規採用保育士を支援する「保育士ウェルカム事業」など、保育士の確保に向けた取り組みも各種実施しています。「隠れ待機児童」が多い大阪市ですが、施設整備などのハード面、保育士確保のソフト面といずれも積極的に取り組みを進めています。
2020年の国勢調査によると、大阪市の人口増加数は5年間で6万1,227人と全国4位を記録しましたが、それでも2021年の待機児童を14人にとどめているのは各取り組みの成果と言えそうです。
子育て世帯に注目の市町村は?
待機児童ゼロを達成した大阪府内の全34市町村の中から、子育て世帯に注目の3つの自治体を紹介します。
治安の良さは府内随一!? 北大阪急行線の延伸で注目を集める「箕面市」
北大阪地域の山麓に広がる箕面市は、富裕層が多く集まる街です。「子育て・教育日本一」を掲げ、待機児童数は2019年から3年連続でゼロを達成。現在は公立幼稚園・保育所の再編に取り組んでいるほか、新規採用の保育士に毎月2万円を3年間支給するなどして保育人材の確保にも力を入れています。
また2022年4月には、子どもの急な発熱に対応する小児科併設の病児保育室もオープンしました。鉄道を使った交通の便に課題がありましたが、2023年度には北大阪急行線が箕面市まで延伸し、大阪都心部へのダイレクトアクセスが可能になります。今後のさらなる成長が期待できます。
共働き世帯を意識した子育て支援策が好評! 交通の利便性も高い「堺市」
大阪市に南接する堺市は、世界遺産の「仁徳天皇陵古墳」など数々の文化遺産があるエリア。JRや南海電鉄、泉北高速鉄道などが市内を走り、交通の利便性は良好です。人口の多さは大阪市に次ぐ府内2位ですが、2021年4月時点で待機児童ゼロを達成。手厚い子育て支援制度が好評で、第3子以降の0~2歳児は保育料を無料とし、将来的には第2子の0~2歳も無料とする方針を立てています。また病児保育施設は市内に5ヶ所あり、訪問型の病児保育にも対応。これらの共働き世帯を強力にサポートする取り組みが評価され、日経xwomanの「共働き子育てしやすい街ランキング2020(東京都を除く全国編)」では、堂々5位にランクインしています。
保活の穴場!? 府内の人口増加率ナンバーワンの「島本町」
京都府に面した人口約3万人の小さな街「島本町」は、町内の湧き水を利用したサントリー山崎蒸留所があることでも有名です。大阪や京都の主要駅まで約20分という交通の利便性の高さと、自然に恵まれた住環境の良さから転入者が徐々に増加。2017~2020年の人口増加率は府内1位となっています(2020年国勢調査)。
この影響もあり待機児童数は大きく増加しましたが、保育施設を約2倍に増やすなどの迅速な対応で2021年には待機児童ゼロを実現。その後も数々の子育て支援策に取り組み、2021年には大東建託賃貸未来研究所の「住み続けたい自治体ランキング<全国版>」で見事1位に輝きました。今、子育て世帯から最も注目を集めている自治体のひとつと言えるでしょう。
大阪での保活、キーワードは「隠れ待機児童」
大阪府では、府と市町村が連携して保育環境の整備に取り組むことで、待機児童数が大きく減っています。府全体の待機児童ゼロが目前に迫った今、次の課題となるのは「隠れ待機児童」の解消です。その対策が進むことで、大阪府は子育て世帯にとってより魅力的な街になるでしょう。大阪府での暮らしを考えている人は、市町村別の待機児童数だけでなく、「隠れ待機児童」の数も忘れずにチェックしてください。