日本とカナダをつなぐGoogleの海底ケーブル「Topaz」は一体どんなテクノロジーを採用しているのか?
Googleはさまざまなサービスを提供しており、これを世界中のユーザーが快適に利用できるように、大陸間をつなぐ海底ケーブルを複数敷設しています。Googleは2023年に開通予定の新しい海底ケーブル「Topaz」を敷設中で、このケーブルはカナダのバンクーバーと日本の三重県と茨城県をつなぐ予定です。
カナダと日本を結ぶ初の海底ケーブル Topaz を発表 | Google Cloud Blog
Under the sea: Building Google’s fiber optic network | Google Cloud Blog
https://cloud.google.com/blog/topics/developers-practitioners/googles-subsea-fiber-optics-explained
Topazはカナダのバンクーバーにあるポートアルバニアという小さな町から、太平洋を越えて日本の三重県と茨城県までつながる予定の海底ケーブル。Topazは2023年に開通予定となっており、Google検索やGmail、YouTube、Google CloudなどさまざまなGoogleサービスへの低遅延アクセスを実現するのに役立つとのこと。
Topazの開通により、カナダおよび日本では大規模な経済効果が見込まれており、Analysys Masonの調査によると、2022年から2026年の間に累積で3030億ドル(約39兆円)の GDP増加が見込まれると予測されています。
Topazはホースほどの直径の光ファイバーケーブルで、ケーブル1本に収納される光ファイバーの数は最大で16ファイバーペア(32心)となっており、これによりケーブルの総容量は毎秒240テラビット(Tbps)を実現しています。また、Topazは波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)に対応しているため、光ファイバーペアのスペクトルをソフトウェアで効率的に定義して分割することで、柔軟なルーティングと高度な耐障害性を実現しています。
Topazは太平洋を横断する海底ケーブルとしては初めてカナダの西海岸に接続されます。ただし、カナダのバンクーバーに敷設される最初の通信ケーブルというわけではなく、1960年代にはTeleglobeの前身であるCanadian Overseas Telecommunications Corporationが銅製の海底ケーブルを敷設し、高品質の国際電話接続をカナダ全土に提供することに成功しました。このカナダ初の海底ケーブルは、カナダのバンクーバーとアメリカのホノルル、オーストラリアのシドニー、ニュージーランドのオークランドを結ぶ英連邦太平洋ケーブルシステム(COMPAC)の一部です。COMPACはすでにサービスを終了していますが、COMPACが利用していた海底ケーブル陸揚げ局は、改修後にTopazで再利用される予定となっています。
Googleが海底ケーブルを敷設する理由および、海底ケーブルでどのような技術を採用しているのかについては、Google Cloudが公開している以下のムービーを見ればわかります。
Under the sea: Building Google's fiber optic internet - YouTube
Google Cloudの開発者サポートを行うステファニー・ウォン氏が登場。
「世界中の人々がGoogleの低遅延で素早い読み込みや操作が可能なサービスを頼りに生活を送っています」
「これを実現するには、データを超高速で世界中のあちこちに動かす必要があります。当然これは容易なことではありません」
「クラウドサービスでやり取りされるデータは以下の映像に映っているような光ファイバーケーブル上を移動しており、このケーブルは地球上に張り巡らされています」
「Googleは最先端の光ファイバーネットワークを世界中に持っているわけですが、その仕組みを理解するために、まずはデータセンターを見てみましょう」
「データセンターでは光ファイバーケーブルが個々のマシンをつないでいます。また、データセンター間も光ファイバーケーブルがつないでおり、これによりメッシュネットワークが構成されています」
「長距離の光ファイバーケーブルは時には山岳地帯などをまたいで遠く離れた地域と地域を結びます。さらに、大陸間をつなぐためにケーブルは海底にまで敷設されています」
「そんな海底に敷設された光ファイバーケーブルのひとつであり、Googleの敷設する海底ケーブルの中で最も新しいものがTopazです。Topazはカナダとアジアを直接結ぶ唯一のケーブルで、敷設計画は5年以上前からスタートしていました」
Topazの敷設に携わったエンジニアのひとりであるボビー・ニナン氏が登場。
「我々は今ビジネスに求められていることに目を向け、今後の需要を予測しています。例えば、今後5年の予測などです。クラウドの顧客は帯域幅の拡張を求めているだけでなく、ある程度の遅延の保障も求めています。当社は多種多様なケーブルにより提供できる帯域幅の信頼性を実質的に高めています」と語りました。
続けて、「高い帯域幅と低遅延を実現するには海底ケーブルに使用する光ファイバーの容量を増やせばいいのでは?」とウォン氏。
この疑問に答えてくれるのが、ネットワークエンジニアのマシュー・ニューランド氏。
「当然ながら、1万kmもある海底ケーブルを研究室で再現することは困難です。しかし、Googleには糸巻き状の光ファイバーケーブルが80km分もあるので、それらのケーブルを実際にデイジーチェーン接続してGoogle Cloudネットワークを再現しています」
「ここで利用されているファイバーは1本あたり20〜40テラビット毎秒(Tbps)の帯域幅を実現しています」
2020年にGoogleは海底ケーブルのGrace Hopperに16ペアのファイバーを搭載することに成功しました。普通は6〜8ペア程であるため、16ペアというのは非常に多いペア数であるとのこと。このケーブルを利用することで、Googleは海底ケーブルで340Tbpsのデータ転送速度を実現しています。
340Tbpsという速度はこの動画を4K解像度で同時に450万回配信できるほどの容量だそうです。
海底ケーブルの敷設ではケーブルの容量以外にも問題が生じるため、多数のパートナーとの緊密な連携が必要となります。Googleで国際ネットワーク計画を担当するXingYan Tang氏は、「現地パートナーの専門知識や洞察が頼りです。現地のインフラもケーブル敷設に役立ってくれます」とコメント。
Googleは海底ケーブルを敷設する場所において、漁業組合などの現地コミュニティへの影響を最小限に抑えたいと考えているそうです。
新しい海底ケーブルの敷設における最後のステップが、それを動かすための電子機器を最新のものにするということ。Topazでは電子機器を最新のものにすることで、壊れにくい動的なパスを実現する「波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)」を導入することに成功。WSSは4年以上前から構想されてきたもので、Topazだけでなく業界全体で採用されているとのこと。
WSSが一体何なのかを説明してくれるのは、Googleで海底ケーブル敷設のテクニカルプログラムマネージャーを務めるリサ・ビックフォード氏。
「ケーブル技術の黎明期、海底ケーブルは2つの地点をつなぐだけのものでした。しかし、WSSの登場により、最新の海底ケーブルでは帯域幅を効率的に分割することが可能になっています」
「これにより、トラフィックをその場でリダイレクトできるようになるので、帯域幅を別々の目的に使用することが可能になります。新しい顧客から容量の増化に関する要望があれば、PCからコマンドを実行するだけでトラフィックを素早く別の場所へ割り振ることが可能です」
Googleのネットワークデザイン・プランニング・アクイジション部門のリーダーであるブライアン・クイグリー氏は、「Topazのような海底ケーブルは、カナダと日本の間の通信の信頼性を増すだけでなく、ネットワーク全体の信頼性も向上させます」とコメント。
「Googleのネットワークはメッシュのように機能します。そして、Googleは人間同士をつなぐソリューションを作り出すことに注力しています。それがGoogleのネットワークの真の目的です。社会が頼りにできるようなネットワークの構築を最優先に考えています」
「海の向こうにケーブルを上陸させる記念すべき日に向け、世界中のチームが協力し、エンジニアリングの力を用いてネットワークの拡張に取り組んでいます」