【本庄・5歳児遺棄事件】埋められていた家では「あと2人消えている」…54歳女をめぐる異様な集団生活の全貌
柿本容疑者と歩夢くん。2021年1月以前は柿本容疑者が歩夢くんを虐待している様子はなかった
「妻は流されやすいタイプではあるんです。でも、こんなことをする人ではない……。3人は全員、人間失格です」
そう憤るのは、5歳の柿本歩夢(あゆむ)くんを失った実父のX氏だ。
3月5日、歩夢くんは埼玉県本庄市にある民家の床下で、遺体となって見つかった。同日、埼玉県警は母親である派遣社員の柿本知香容疑者(30)と無職の丹羽洋樹容疑者(34)、その内縁の妻で無職の石井陽子容疑者(54)を死体遺棄の疑いで逮捕した。
事件の発端は、ラーメン店で目撃された “虐待” だ。市内のラーメン店の店主が語る。
「2021年の夏ごろから、丹羽と石井、そして柿本親子が、4人で来店するようになりました。
そこで歩夢くんは正座をさせられたまま料理を食べさせてもらえず、2時間近く丹羽から執拗に説教されていました。歩夢くんは泣くでもなく、じっと耐えている様子でした。
歩夢くんの母は無表情で説教の様子をスマホで撮影し、石井はニコニコしていました。ほぼ毎月来店し、こうした異様な説教を繰り返すため、市に通報したんです」
しかし、市は柿本容疑者と面談をしたうえで、虐待の疑いがないと判断した。
そして1月中旬に、柿本容疑者は実家に転居すると言って本庄市内の保育園の退園手続きをした。しかし市が確認したところ、歩夢くんが転居先にいないことが発覚。市は警察に通報し、事件が発覚した。
そもそも、なぜ柿本親子は赤の他人である石井・丹羽両容疑者と同居していたのか。そして20歳も年が離れていながら「お揃いのサンダルを履いていた」(前出の店主)という石井・丹羽両容疑者とは、何者なのか。
関係者の証言から、“魔の家” で10年以上にわたり営まれてきた異様な集団生活が浮かび上がってきた。
ことの始まりは12年前、石井容疑者が本庄市にやってきて件の民家に住みついてからだ。この一軒家の大家が語る。
「もともとはA子さん、Bさん、Cさんという3人が住むという話で、石井さんは後からやって来たと思います。石井さんは、Cさんの苗字を名乗り、妻だと言っていました。
石井さんの父であるBさんは元競艇選手で、A子さんはCさんの母親で、資産家だということでした」
義理の片親同士が同居するという珍しい4人暮らしは、ほどなくして終わる。
「数年前、Cさんが救急車で運ばれ、亡くなりました。葬儀に伺おうとしたら、Bさんに『Cは酒の飲みすぎで死んだのに、俺が救急車を呼ぶのが遅かったということを理由に、警察に疑われているんだ。葬式には来ないでくれ』と言われました。ちょっと不思議ですよね」(近所の住民)
Cさんの “不思議な死” からしばらくして、石井容疑者の新たな内縁の夫・丹羽容疑者が住み着いた。
丹羽容疑者は、高校時代に都内でラグビー選手として鳴らし、全国大会にも出場していた。実父はこう語る。
「何もわからず、困っているんですよ。ここ最近は音信不通で、本庄市にいることも知りませんでした。ましてや内縁の妻がいるなんて……」
爽やかなラガーマンの印象とは裏腹に、近所の評判はあまりよくない。
「丹羽は、いつも愛想が悪い感じで、誰とも口をききませんでした。髪型や服装もボロボロ。一方、石井は小太りで愛想のいいおばちゃん。スーパーで世間話をしたこともありますよ。一時期、近くのコンビニで働いていたそうです」(前出・近所の住民)
Cさんの死後、この家と近所の間にある事件が起きた。
「A子さんが『殺される!』と夜に駆け込んできたんだ。誰に殺されるのかと尋ねたら『あの女にだよ』と答えた。その後、石井と丹羽が来たけど引き渡さなかったよ。警察を呼んで、あの家を見てもらうよう近所のみんなでお願いしたんだ」(別の近所の住民)
この事件をきっかけに近隣住民は “あの家” と関わることをやめた。そして2017年ごろ、A子さんの姿は消えた。
「A子さんは認知症の症状が出ているという噂で、デイケアにも通っていました。でもある日ぱったりと姿を消したから、心配でした。
しかもそれから1年もたたず、Bさんまで消えたんです。Bさんは、ゴミ出しや愛犬の散歩で毎日のように姿を見ていたのに、愛犬と一緒にいなくなりました」
“人が消える家” に柿本親子がやって来たのは2021年1月だ。きっかけは2020年7月に柿本容疑者が冒頭に登場した夫・X氏と喧嘩したことだった。
「妻は、両親の反対を押し切って、私と結婚するために大阪から本庄市に来てくれたんです。7月に口論をしていたら、警察を呼ばれ、妻は家を出ていきました。
一部報道では私がDVをしていたといわれていますが、けっしてそんなことはありません。
そして2カ月後、妻はママ友だというD子さんと一緒に離婚届を持ってきました。私が離婚を拒否したら『調停で会おう』と言われ、それきりです」(X氏)
近隣の住民が語る。
「知香さんは、近くの工場で派遣社員として真面目に働いてましたよ。友達は少なく、自分の意見は言わないタイプ。子供はすごくかわいがってました」
柿本容疑者に変化が訪れたのは、X氏と暮らしていた家を出ていってからだ。
「一時期、D子さんの家に居候していたそうです。その後も家を転々としていたみたいです」(同前)
そして柿本容疑者は、D子さんが暮らすアパートの向かいにある “魔の家” で暮らし始めた。
「あそこで暮らし始めてから、見た目がすっかり変わってしまい驚きました。以前までは化粧バッチリだったのに、すっぴんで髪はボサボサ、目はうつろ。毛玉だらけの服を着て、真冬なのにボロボロのサンダルを履いてました。私は “あの家” に支配されているのだと感じました」(同前)
石井容疑者を中心としたあまりに複雑な人間関係ーー。警察はA子さんとBさんという消えた2人の行方も追っている。
「現在もあの家の庭を掘り返すなど、徹底した捜査を続けています」(捜査関係者)
本庄市の桜の開花も近い。桜の樹の下にはーー何もないといいが……。