折り畳みディスプレイのハイブリッドPCから電池不要のリモコンまで、「CES 2022」で見つけた注目の14製品
世界最大級の家電見本市「CES 2022」ではZoom形式の発表会を次々に観続け、何十ものライヴストリーミング形式の記者会見に出席し、さらに対面でのデモンストレーションにいくつか参加した。その結果、これから紹介する14の製品が「CES 2022」で目にしたなかで最も興味深い製品であると結論づけた。
「折り畳みディスプレイのハイブリッドPCから電池不要のリモコンまで、「CES 2022」で見つけた注目の14製品」の写真・リンク付きの記事はこちら以下ではラスヴェガスで、そしてヴァーチャルで展示された素晴らしく美しいガジェットのなかで、各カテゴリーで最も革新性とヴィジョンを感じた製品を紹介する。これらの製品は、画期的なインダストリアルデザインや革新的なエンジニアリングを用いており、ひたすら未来を見つめ続け、その未来をユーザーが触ったり、手にしたり、乗ったり、身につけたりできる製品として実現したものだ。
1. PC: ASUS「Zenbook 17 Fold OLED」
ディスプレイを折り畳めるノートPCは、まだその地位を十分に確立できてはいない。だが、この折り畳みディスプレイを搭載したノートPCとタブレット端末のハイブリッドマシンのデザインは、今年見たなかで最も有望な力作のひとつと言える。
本体を広げると17インチのディスプレイが現れるが、背面にはキックスタンドがあって独立させて使うことも可能だ。また、ノートPCのようにディスプレイを中央から折り曲げて、上半分をPCの画面、下半分を仮想キーボードとして分けて使うこともできる。
物理的なキーボードで入力したければ、専用の外付けキーボード「ErgoSense Bluetooth」を画面の下半分に重ねることで、通常のノートPCと比べてほとんど違和感のないものになる。近年あまり変化のなかったノートPC業界において、新風を吹き込む製品と言っていい。
この製品のコンセプトからは、折り畳み式ノートPCの未来がどのように“開かれる”ことになるのか非常に興味をそそられる。だが、実際どのように機能するのか、そして価格はどうなのかについては、今後の情報を待ちたい。
2. モバイル: グーグル「Fast Pair」による音声切り替え
アップルが築いたエコシステムの魅力は、iPadからMac、iPhone、AirPodsまで、すべてが相互にシームレスに連動するところだろう。同じようにグーグルも、こうした魅力をAndroidからWindows、Chromebookにまで広げようと試みている。そしてグーグルが数年前に発表した技術「Fast Pair」の一部によって実現した。
主にワイヤレスヘッドフォンとAndroid端末とを瞬時にペアリングする「Fast Pair」は広がりを見せている。「Google TV」やChromebookとヘッドフォンを瞬時にペアリングしたり、Androidスマートフォンを新しいChromebookにつないで素早くセットアップしたり、AndroidスマートフォンとWindowsノートPCを接続してテキストの同期やファイル共有をしたりできるようにもなったのだ。どれも非常に便利な機能である。
だが、最も期待しているのは、ヘッドフォンとペアリングされた複数のデヴァイス間を自動的に切り替えられるという、もうひとつの新機能だ。アップル製品でいえば、iPodとAirPodsの組み合わせで映画を観ていて電話の着信があったとき、AirPodsから聞こえる音が自動的にiPhoneからの音に切り替わるような機能である。
すべてのFast Pair対応デヴァイスが音声切り替え機能には対応してはおらず、メーカーにも大きく依存することになる。だが、イヤフォンをほかの機器に手動で接続し直す必要がなくなる日が待ち遠しい。本当に魔法のような機能だ。
3. ホームエンタテインメント:サムスン「Eco Remote」最新モデル
テレビの画面が毎年のように美しくなっていることは確かである。だが、今年のCESの発表をオンラインで見た限りでは、どのテレビの画面も特に驚くほどのものではなかった。それでも実物を前にして、その処理能力やディスプレイの明るさといった革新的なテクノロジーを目にしたら、もっとわくわくさせられることだろう。
しかし、新たに心を奪われたガジェットは、これまでのところホームエンターテインメント分野にあった。電池交換をまったく必要としないリモコンを、サムスンがつくり出したのである。
この「Eco Remote」という名のリモコンは、太陽光とWi-Fiルーターからの電波の両方から発電して“無限”に充電し続ける。電池の入れ替えにうんざりしている人たちにとって重宝するのみならず、地球にも優しい製品だ。サムスンは、同社製のテレビやその他のガジェットに同梱するリモコンから単4電池をなくすことで、7年間で9,900万個の電池を廃棄せずに済むようになると、2021年4月に発表している。
4. ヘッドフォン:HyperX「Cloud Alpha Wireless」
ゲーム周辺機器メーカーのHyperXは、さまざまな新製品を発表した。なかでも目を引いたのが、バッテリー持続時間300時間を誇るゲーミングヘッドセットである。
「Cloud Alpha Wireless」は、これまでのHyperX製ヘッドセットで定評のある多くの特徴を継承している。耐久性に優れるアルミのフレーム、クッション性のあるレザーのイヤーパッド、取り外し可能なブームマイク、イヤーカップ上の操作しやすいオーディオコントロールなどがそうだ。
さらに、スリムで軽量化した50mmのドライヴァーを搭載したことで、バッテリーを大型化するスペースを確保している。この300時間というバッテリーの持続時間は、理想的な環境でのみ実現可能なのかもしれない。例えば低音量だったり、Bluetoothの代わりにアダプター経由で接続したりといった場合だ。
それでも300時間という謳い文句の75%でも達成できれば、競合する製品より何日分も優れている。Cloud Alpha Wirelessは、今年2月に200ドル(約23,000円)で発売予定だ。
5. ホームオーディオ: 「JBL 4305P Studio Monitor」
オンライン掲示板Redditのオーディオファンのコミュニティでは、このJBLの新しいスピーカーの写真が今後数年で数多く投稿されることになるはずだ。
このスピーカーには、プロのエンジニアリングに昔ながらのスタジオスピーカーのデザイン、そして現代的な接続方法が融合されている。2,200ドル(約25万4,000円)の価値は十分にあるだろう。
JBLのスピーカーは、レッド・ツェッペリンの時代から名だたるレコーディングスタジオで使われてきた。しかし、実際にJBL最高峰のスピーカーを使った経験のある者は、プロ以外にあまりいない。その理由の多くは、適切な信号を得るために強力なオーディオインターフェイスやスタジオ仕様のミキシング・コンソールが必要となるからだ。
しかし、この新しいスピーカーではさまざまな接続方法に対応しているので、心配はいらない。アップルの「AirPlay 2」にグーグルの「Chomecast」、Bluetooth、Ethernet、3.5mmのオーディオジャック、バランス入力(XLRまたはTRS)を利用できるのだ。
そこにスタジオのプロが好むほぼフラットなレスポンスが加わったことで、知る限りは現代のスピーカーのなかで初めて、ミキシング・コンソールと音響再生の二役をこなせるよう設計されたものになった。昔ながらのJBL製スピーカーと同じように、ウォルナットの板とクラシックなパープルのグリルカヴァーで仕上げられたモデルも用意されている。ゴージャスな製品だ。
6. 知育玩具:「Picoo」
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まったときに2歳と4歳だった子どもたちは、いまでは4歳と6歳になった。2020年の当時は、子どもたちにとって学校閉鎖やソーシャルディスタンスの確保、そして自主隔離が耐えうるものになるよう努めていたものである。
しかし、2022年を迎えるにあたり、この状況には心の底から辟易している。だが、今年のCESで発表された知育玩具のなかで、「Picoo」には唯一うんざりした気分にさせられなかった。
Picooは“屋外用ゲーム機”を謳っているが、その正体は4歳から10歳までの子どもを対象としたライト付きのハンドコントローラーのセットである。このセットには、もぐらたたき、ゾンビラン、算数マニアといったゲームカードが付いており、子どもたちはコントローラーでカードをスキャンすることでゲームを楽しめる。
遊ぶときのチームはPicooが決める仕組みで、子どもの習熟度や年齢、特別な配慮の有無によってゲームの難易度を調節してくれる。社会性を養いながら屋外で遊べる公平で安全なゲームだ。それがいま、子どもたちに望むことでもある。Picooは249ドル(約28,000円)から発売中。
7. スマートホーム:互換性のある新規格
わたしたちの家では、防犯カメラからサーモスタット、スマートスピーカー、スマートフォン、テレビ、電球、冷蔵庫など、さまざまな機器が相互に接続している。このうち2種類の異なる機器だけでも相互に通信させられたら、それは小さな奇跡と言っていいだろう。
こうした互換性の問題がスマートホームの進化を妨げてきたが、デヴァイスのメーカーが一丸となって問題を解決しようとしている。サムスンがCES 2022で、ゼネラル・エレクトリック(GE)やハイアール、エレクトロラックス・グループなどの大手家電メーカーを含むグループである「Home Connectivity Alliance」への参加を発表したのだ。このグループは今後、各社のプラットフォーム間で安全な通信を可能にするためのガイドラインの策定を進めることになる。
これとは別にCES 2022で好意的に受け止められた取り組みとして、今年末に本格始動するオープンソースの共通規格「Matter」が挙げられる。この規格には、グーグルやアップル、アマゾン、サムスンなど、スマートホーム技術の大手企業がすでに賛同している。
さらに今回のCESでは、Matterに準拠したデヴァイスを数十社が展示していた。これから数カ月で、この規格に対応した製品をさらに頻繁に目にすることになるだろう。これはいいニュースだ。そろそろ家庭でもスマートホーム製品がすっきり片付いていいころである。
8. モビリティ:「BMW iX Flow」
CESで忘れてはならないことは、発表される製品や技術の多くが“空想”にすぎないことである。確かにラスヴェガスで発表された製品の多くは実際に販売されるが、実験的なコンセプトや空想の産物、絵空事のようなデモンストレーションも多くある。
こうしたなかでの位置づけは明確ではないが、クルマの色が変わる技術を搭載した「BMW iX Flow」には大いに興味を引かれた。このクルマは従来の塗装を電子インク技術「E Ink」に置き換えたものである。
BMWはE Inkのパネルを加工してレーザーカットを施し、EVである「BMW iX」の全体を覆うことに成功した。プロトタイプに採用されたE Inkは、マイナスに帯電した白色顔料とプラスに帯電した黒色顔料をそれぞれ封入した髪の毛ほどの太さのマイクロカプセルを使用している。
これにより、ドライヴァーがボタンを押すだけで外装を鮮やかな白から深い黒まであらゆる色調に変化させたり、連続したアニメーションパターンを再生したりできる。BMWによるとデザイン上の大きな利点はもちろんのこと、色を変化させることでエアコンに必要なエネルギーを削減し、電力消費を抑えられるという。今回のiX Flowのプロトタイプの色はモノクロだが、フルカラー版も開発中という。
9. マイクロモビリティ:パナソニック&TOTEM「Zen Rider」
新型コロナウイルスのパンデミックと気候危機が重なったことで電動自転車ブームに拍車がかかり、2020年には約50万人の米国人が電動自転車を購入した。混雑によって感染のリスクが高まる公共交通機関を避け、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する目的である。
こうした流れは歓迎だ。しかし、電動自転車に乗り始めたばかりのライダーたちが自転車専用レーンの交通量にそぐわない危険な速度をスロットル全開で出したり、低品質の自転車やバッテリーを選んで発火騒ぎが起きたりすることに、いつも眉をひそめていた。
今年のCES 2022ではパナソニックと、ロードバイクで知られるTOTEMが電動アシスト自転車を発表した。この製品は製品安全規格の「UL認証」を取得している。
こうした認証の取得は、ボッシュが温室効果ガスの削減につながる製品やプロジェクトに与えられる「ゴールドスタンダード認証」を電子機器の安全に関して取得した取り組みを除けば、電動自転車の分野において初となる。業界で信頼の厚い非営利団体の認証を受けたことでTOTEMは、「Zen Rider」のバッテリーを充電する際に火花を放ったり発火したりしないと保証しているのだ。
また、最高速度を売りにする電動アシスト自転車が増加するなか、Zen Riderはそうした流れに逆らっている。時速15マイル(同約24km)までしかペダルアシストしない構造になっているのだ。これは密集した都市部ではちょうどいい速度である。同じようにTern(ターン)の商用カーゴバイクは、最高で時速12マイル(同約20km)までしか出せない。
さらにTOTEMの電動アシスト自転車は、気軽に使い倒しても壊れることがなさそうなステップスルーフレームを採用した。バッテリーはシートの下に配置されているので、安定感がある。
今後さらに電動自転車が普及するにつれ、Zen Riderのように安全性や耐久性、信頼性を備えて長く使えるような自転車が増えることに期待したい。それらは速さや格好よさよりもずっと大切なのだ(価格は未定)。
10. ゲーム:「Liteboxer VR」
わたしたちがコロナ禍でほとんどの時間を屋内で過ごしてきたことで、仮想現実(VR)が少し盛り返している。息切れをしながら(おそらく)換気の悪いジムに戻ることをためらっていて「Oculus Quest 2」をもっているなら、ぜひ「Liteboxer VR」を試してほしい。
Liteboxerは自宅でボクシングができる物理的なパッドを販売しているが、これはそのVR版である。VR版では目の前にある仮想パッドに向かってパンチを打つが、より高得点を挙げるには特定のポイントを適切な間隔で打つ必要がある。VRのワークアウトアプリ「FitXR」のようなゲームなら、楽しみながらトレーニングできそうだ。
さらに、フォームを維持するアドヴァイスをしてくれるトレーナーや、ペースを維持するモチヴェイションを高めてくれる有名アーティスト作のポップなBGMも用意されている。月額19ドル(約2,200円)と高価だが、7日間の無料トライアルがあり、実際にジムに通うよりはるかに安く済む。「Oculus Questストア」で3月3日に発売される。
11. カメラ:eufy「Security Video Doorbell Dual」
カメラ付きドアベルには、コンピューターヴィジョンによって家族や友人、ペット、見知らぬ人の大半を見分けられる能力が備わっている。だが、小包は検出できるだろうか?
eufyの「Security Video Doorbell Dual」には、高性能のカメラ付きドアベルが搭載するあらゆる機能がある。クリアに映る2K画質のカメラのほか、Wi-Fi中継器としても機能するハブといった機能だ。この製品は、さらに下向きの2つ目のカメラを追加したことで、玄関マットの上に置かれた荷物を正確に識別できる。
この機能はカメラ付きドアベルの分野では最近のトレンドで、RingやNestもドアフォンの一部製品に同じような機能を搭載している。だが、eufyの製品はレーダーや受動型赤外線検知によるモーションセンサーを搭載し、検知能力を高めて誤検知を減らし、訪れた人を見逃さない。
また、サブスクリプションプランに加入しなくても撮影した映像を保存できるほか、バッテリー駆動なので電源につなぐ必要もない。発売は2月8日で、価格は260ドル(約30,000円)だ。16GBのストレージを搭載したハブ「Homebase 2」がセットになっている。
12. サステイナビリティ:「Tide Infinity」
宇宙船内での洗濯は不可能に近い。国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士は、新しい衣服が補給機で届くまで何度も何度も同じ服を着なければならない。だが、そのうちに使い古されて着られない状態になってしまうので、大気圏に放り込んで燃やされることになる。
これこそ、P&Gの洗剤ブランド「Tide(タイド)」が解決しようと取り組んでいる問題でもある。P&Gは米航空宇宙局(NASA)と共同開発した「Tide Infinity」という洗濯洗剤の試作品を完成させ、宇宙へと運び込んだところだ。無香料で完全に分解可能な成分を使っているので、ISSのように水を循環させて使う完全閉鎖系のシステムでも安全に使える。
この洗剤に含まれる汚れや臭いを防ぐ主成分の効果については、これから数カ月かけて宇宙空間で検証される予定だ。さらに今後は、洗浄能力や補給方法、深宇宙ミッションにおける洗濯洗剤としての有用性などを検証することになる。
P&Gによると、この実験で得られた知見をTideブランドの製品に反映させ、地球上での洗濯プロセスをより持続可能なものにしていきたいという。ことによると、水が少ない地域でも洗濯できるようになったり、生活雑排水をより効率的に再利用できるようになる日が来るかもしれない。
あるいは、はるか彼方の太陽系外惑星に向かう途中で洗濯できる日も来るかもしれない。これらの研究はまだ初期段階だが、地上や宇宙において最も地道な作業をよりよいものにできる可能性にはわくわくさせられる。
13. ヘルステック:「Movano Ring」
指輪型の健康トラッカーといえば「Oura Ring」が人気だが、「Movano Ring」はOuraの地位を脅かすような製品だ。米食品医薬品局(FDA)の認可さえ下りれば、もうすぐ手に入ることになるだろう。
MovanoはWithingsと並んで、健康トラッカーを医療機器として扱うべくFDAに認可を求めている数少ない企業のひとつだ。この指輪型の健康トラッカーは、2022年後半の発売を予定している。Oura Ringよりも小型で、しかも手ごろな価格で幅広く使えるようになると見込まれている。
Movano Ringは血圧の変化も監視できる。米国で成人の約半数が高血圧であることを考えると、血圧をモニタリングできる医療機器の認証を受けたスマートリングがあれば、一般的なフィットネストラッカーよりはるかに利便性が高いはずだ。
14. ペットテック:「Bird Buddy」
世界は鳥のありがたみについて、まだ十分に理解していない。だからこそ、昨年からKickstarterでの「「Bird Buddy」のプロジェクトを見守ってきたが、ようやく正式発売になるとのことでわくわくしている。
このカメラ内蔵型の餌台(バードフィーダー)があれば、家の周りを飛び回るかわいい小鳥たちを鑑賞できる。しかも、鳥の種類や食べ物の好み、鳴き声などを専用アプリで確認でき、実際にその鳥について学習することも可能だ。
鳥について学んだあとは実際に森に足を踏み入れ、自分で鳥を探すような楽しみ方もできる。また、訪れた鳥たちを記録し、鳥たちが本当に欲しい餌について学んでもいい。開発元のBird Buddyによると、ユーザーから収集した鳥のデータを基に鳥の移動や個体数を世界中で追跡することで、自然保護活動に意味のある変化をもたらせると期待しているという。
どうせスマートフォン画面を見続けるなら、鳥のためになることをしたほうが有意義だろう(それに、これも「ペットテック」に分類される。鳥はみんなのペットなのだ)。 Bird Buddyは今春に出荷予定で、価格は235ドル(約27,000円)。
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