Appleのティム・クックCEOが2016年に中国を訪問した際に、中国政府と2750億ドル(約31兆円)規模の5年契約を交わしたと、IT関連ニュースサイトのThe Informationが報じています。

Inside Tim Cook’s Secret $275 Billion Deal with Chinese Authorities - The Information

https://www.theinformation.com/articles/facing-hostile-chinese-authorities-apple-ceo-signed-275-billion-deal-with-them



Apple CEO Tim Cook 'Secretly' Signed $275 Billion Deal With China in 2016 - MacRumors

https://www.macrumors.com/2021/12/07/apple-ceo-tim-cook-secret-deal-with-china/

Report: Apple CEO Tim Cook engineered a secret $275 billion deal with China | Ars Technica

https://arstechnica.com/gadgets/2021/12/report-apple-ceo-tim-cook-engineered-a-secret-275-billion-deal-with-china/

2016年5月、クックCEOは中国の自動車送迎サービス「Didi Chuxing」に10億ドル(約1100億円)を出資しました。The Informationが入手した内部文書によれば、この出資の直後にクックCEOは、Appleのジェフ・ウィリアムズCOO(最高執行責任者)と政府問題担当責任者であるリサ・ジャクソン氏と共に、中国共産党の中央本部で政府高官と会談をしたとのこと。



かねてより、Apple幹部からは「Appleが中国政府からにらまれていること」を懸念する声が挙がっており、関係改善を模索していたそうです。クックCEOはApple Pay、iCloud、App Storeの規制解除について、中華人民共和国国家発展改革委員会とAppleの間で交わされた「覚書」を利用して合意を取り付けようとしたと、The Informationは報じています。

この契約の内容は、中国の製造業者が「最も先進的な製造技術」を開発したり人材を育成したりするのを支援すること、中国のサプライヤーからの部品をより多く使用すること、中国のソフトウェア企業との取引、中国の大学が行う研究への協力、中国のハイテク企業への投資、中国政府への協力など。この見返りとして、Appleは中国市場へアクセスが可能となり、さまざまな規制措置を免除されます。

The Informationは、Appleが新しい小売店や研究開発施設の開設や再生可能エネルギープロジェクトの展開などで、中国国内に5年間で2750億ドル以上を投資していると報じています。この契約の有効期間は2016年5月から2021年5月までの5年間ですが、Appleと中国政府の双方から異議申し立てがない場合、自動的に2022年5月まで延長されることになっているとのこと。



by Blowing Puffer Fish

なお、クックCEOは2021年4月に行われたニューヨーク・タイムズによるインタビューの中で、「10年以内には引退するだろう」と発言しています。The Informationは、Appleが各国政府と交渉する上でクックCEOの存在に大きく依存していることを示唆しており、クックCEO退任後のAppleが政府関係への対応が困難になる可能性があると推測しています。